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オタクな俺がポンコツ美少女JKを助けたら、お互いの家を行き来するような仲になりました  作者: 木嶋隆太


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第48話


「……そうですか。それでも、俺が憧れた先生方にはまだまだ遠く及びませんから」

『はは、そうか。まあ、調子に乗るよりはよっぽどいいよ。学校とかでは話題になっていないか? 中高校生辺りの購買層が多いようなんだが』

「……そう、ですね。たまにそんな話を聞きますね」

『そうかそうか。それなら自ら宣伝してやったらどうだ?』

「……そんなに友達いないのは知っているでしょう?」

『はは、だからこの機会にだよ。さりげなく本でも勧めてみたらいいじゃないか』

「それこそ、身バレしたときが嫌ですから。それに、まだまだ上を目指さないといけませんから。確か用件はその二つでしたよね?」

『ああ。それと、まだ確定ではないが書店でサイン会を開きたいという話もあがっている』

「……顔出しとかしなくて済むのなら別にいいですけど」

『そうか。それなら、そういう意味をこめて先方とは打ち合わせをするよ。まあ、どうなるかは分からないが、一応頭に入れておいてくれ』

「分かりました、ありがとうございます」

『それじゃあ、学校の方もおろそかにしないようにな。やはり、学生の本分は勉強だからな』

「はい」


 電話をそこで切ってから、治は口元を緩めた。

 それから本を読みながら昼食を食べ、教室へと戻ろうとしたとき、再びスマホが鳴った。

 治は首を傾げながらスマホを手に取った。そこに表示された名前は、島崎しまざき奈菜(なな)

 

 治の姉である。連絡をしていたとはいえ、まさかこの時間にかかってくるとは思っていなかった。


「もしもし、姉さん?」

『うぃーっす、もしもし治ー。メッセージにあったことなんだけど、今日とかどう?』

「あ、ああ。いいけど……いきなりで大丈夫なのか?」

『もちろん。それに可愛い弟の頼みだしね』

「……ありがとな」

『いいわよ、別に。それにしても、治があたしに髪を切ってほしいって頼むとはねぇ。実験台にされるのいつも嫌がっていたじゃん』


 くすくすと電話越しに笑い声が響く。

 奈菜は美容専門学校に通っている美容師見習いだ。月に一度程度、治の家に訪れては部屋の掃除と治の髪の手入れをしていた。

 

「……その、人に良く見られたいってメッセージにも送っただろ?」

『うん、そうだけど、何? 小説家のほうで顔出しとかする必要でも出たの?』

「そうじゃない」

『ははーん、それなら好きな人でもできた?』


 奈菜の発言に、ドキリと胸が締め付けられた。否定しようとしたが、黙り込んでしまい、奈菜が驚いたように続けた。


『あれ、もしかして当たり?』

「……好きな人、かはちょっと分からないけど、異性で……よく見られたいって思った人がいるんだ。だから、その……頼みたいと思って」

『ははーん、なるほどね。了解、あたしに任せなさい。あんたの髪型に関してはいくつか似合うかっこいい奴を用意してたから、ばっしり切ってあげる』

「……ありがとな」

『それじゃあ、今日の放課後に行くけど、何時くらいなら家にいるのよ?』

「……17時くらいだな」

『了解、そんじゃアパートに行くから、17時にちゃんといなさいよ』

「分かってる。姉さんじゃないから、時間は守るって」

『一言余計よ! うっし、そんじゃ、首を長くして待ってろよー』

「ああ、あんまり遅れないでくれよ」


 苦笑を返しながら、奈菜との電話を切った。

 治は軽く息を吐いてから、頬の熱を吐き出すように深呼吸する。

 姉である奈菜とはそれなりに親しく、今のように素直な気持ちを伝えられた。

 そして、そうはっきりと口にした言葉に、治は改めて恥ずかしさを覚えた。


(……俺は好きなのか?)


 咲の立ち居振る舞いを、その笑顔を思い返し、治は首をぶんぶんと振った。

 あれほどの美少女だ。治なんて釣り合うはずもない。

 高嶺の花という言葉が脳裏に思い浮かぶ。決して手を伸ばしても届かないような存在だ。


 ぽつぽつと浮かぶ考えを飲み込むように、治は菓子パンを一気に口に放り込んだ。

 それから意識は、小説へと向いていったが、それでも咲の笑顔が頭から離れなかった。


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