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オタクな俺がポンコツ美少女JKを助けたら、お互いの家を行き来するような仲になりました  作者: 木嶋隆太


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第33話


 バスに揺られて二十分ほどが経ち、目的のバス停についた。

 バス停に降りて、咲は地図を確認してから歩きだした。

 

「……そういえば、飛野。学校では生徒会長なんだよな?」

「そうですね。でも、そのさっきまで忘れていたみたいな反応はやめてくれませんか」

「普段の飛野を見ていると、とてもそうは思えなくてな……って悪い悪い、怒るなって」


 頬を膨らませた咲に苦笑しながら、治が続けるように口を開いた。


「学校でその……この前のショッピングモールに行ったこととか噂されていないか?」

「え? そうですね……私は聞いたことはありませんが。そう聞いてくるということは、島崎さん……もしかして学校のひとに何か言われてしまったのでしょうか?」

「……俺はその、クラスの連中がいたみたいでな。なんか、変に噂されてたんだよ」


 笑いながら治はそう言った。咲に迷惑が掛かってはいないようで、ほっと胸を撫でおろす。

 と、咲は頬を一瞬染めてから、頭を下げた。


「す、すみません」

「え?」

「……島崎さんにご迷惑をおかけしてしまったかもしれないと思いまして」

「い、いやいやそんなことはまったくないって」

「……そ、そうですか? それならよかったのですが、その噂は大丈夫ですか?」

「今は、そうだな。俺そんなに学校で話す友達いなくてな。特に話題にはなってないかな。俺はそんなだからいいけど、飛野はやっぱり学校でも人気者なのかと思ってな」


 「そんなに」、と多少の見栄を張っていったが、実際はゼロである。

 人気者、という言葉に咲は儚げに微笑んだ。


「別に人気者、というわけではありませんが……でも、確かに誰かに見られたら色々言われてしまうかもしれません。それで、島崎さんにご迷惑をおかけしてしまわないように気を付けますね」

「こっちは気にしなくていいからな? 別に飛野との関係についてとやかく言われても俺はむしろ嬉しいくらいだし」

「え?」


 治はぽろっと漏らしてしまった言葉に頬が引きつった。

 驚いた様子の咲が戸惑いの声をあげた後、頬を赤くしながら顔を覗きこんできた。

 治が視線をそらそうとしたが、服の裾を軽く引っ張られた。


「そ、それは一体どういう意味でしょうか?」

「……あー、その。俺は別にその……誤解されていても、悪い気はしないというか。ほ、ほら飛野は美人だしさ、は、ははは」


 話すだけボロが広がっていくのを自覚した治は、笑ってごまかした。

 咲は唇をぎゅっと噛んでから、頬を僅かに染める。それから咲は、こくりと小さく頷いた。


「わ、私も……その……別に誤解されるのは、気にしません……よ?」

「……え? そ、それはどういう意味で――」


 治が同じ調子で聞き返そうとしたところで、咲が顔をあげた。


「お、お店あそこです!」


 びしっと人差し指を向けた咲は、耳まで真っ赤にしていた。


「ひ、飛野……さっきの――」

「なんでもありませんから! 気の迷いですから!」


 咲はそれ以上質問は受け付けないといった様子で歩いていく。

 そして、目的の店へとついた。

 店内に入ると、人が多く待っていた。受付で名前を記入しようとしたが、咲が治の腕をつついた。


「予約しておきましたから、大丈夫ですよ」

「おお、そこまでしてくれていたんだな」

「もちろんです。誘ったのは私ですから、無駄な時間を過ごさせるわけにはいきません。混むのは分かっていましたので、このくらいは当然ですよ」

「……さすが、生徒会長だな」

「ふふん、少しは見直してくれましたか?」


 胸を張る咲が店員へと声をかけると、店員が怪訝げに眉間を寄せた。

 それから、苦笑とともに口を開いた。


「……すみません、飛野様は十三時からのご予約になっているのですが――」


 それはあと一時間後である。咲は目を見開き、それからスマホを取り出し、予約の画面を確認した。

 そして、こくこく、と魂が抜けたような顔になった。

 

「……わかりました。とりあえず、一時間どこかで時間でも潰そうか」


 治はこくりと壊れた人形のように頷いた。そんな咲を引っ張るようにして治は共に外へと出る。

 そこで、咲が息を吹き返した。

 

「……す、すみませんでした! 間違えていました!」

「いや、別に一時間なら全然いいって……明日とかじゃなくて良かったよ」

「……本当にすみませんでした!」

「気にするな。ほら、その辺で時間潰さないか?」


 近くの店を指さし、今にも泣きそうな咲はこくこくと頷いた。

 それから一時間後、改めて来店して食べ放題を楽しんだ。



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