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オタクな俺がポンコツ美少女JKを助けたら、お互いの家を行き来するような仲になりました  作者: 木嶋隆太


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第30話


「違うってそれじゃあどうしてなの?」


 真由美の質問に、咲は一度考えてから口を開いた。


「……島崎さんはその、色々と忙しい方なんです」

「色々と? バイトとかしてるんだっけ?」


 小説家であることまでは話していないため、咲はそこで頷いた。


「そう、ですね。バイトに近いものを、していますね。……まあ、普通のバイトとはまるで違うんですけど……とにかく、それで忙しいかもしれないんです」

「それなら、そこから島崎くんに聞いてみたらいいじゃない?」

「で、でもこちらを気遣って島崎さんは予定を言わないかもしれませんよ? あ、あまり迷惑をかけたくないと思いまして」

「気遣って言っているのなら、脈ありってことじゃないの?」

「え? そ、そうなのですか?」


 驚いた咲がそう問いかけると、真由美は笑い出した。


「咲っち、ビビりすぎだよー。だって、どうでもいい相手なら、そもそも時間の都合を合わせてまで会わないでしょ? 仮に、忙しくてもそれでも時間を作って会える日を教えてくれるのなら、それはそれだけの価値があるってことなんじゃないの?」

「……そ、そういうもの、ですかね?」

「少なくとも、私はそうかなー?」


 真由美の言葉を聞き、咲は自分のことに置き換えて考え始めていた。

 どうでもいい相手を想像し、その人と会いたいかどうかについてしばらく考えたが、咲は何かしらの理由をつけて断るという結論に至ったのだ。


「……それなら、多少は私に会いたいと思ってくれているんですかね?」

「だと思うけどね。いや、他に何か理由があるのなら別だけどね」

「ほかに……理由」


 真由美のその一言で、咲はがっくりと落ちこんだ。


「え!? 何か心当たりがあるの!?」

「……そ、その……島崎くんは仕事の関係で、女性と関わる経験をしたいと話していたんですね。だから、もしかしたら私に積極的に会うのもその仕事の一環なのかもしれません」

「それってもしかして……島崎くん、誰か別に好きな人がいるとか?」

「あっ、そういうのではありません」

「え、ええ……そこは自信たっぷりに否定するんだね」

「はい」


 小説家、という部分を隠しているがゆえの行き違いだった。

 しばらく咲が治のことを考えていると、真由美が口元を緩めた。


「……やっぱり、好きなんだね?」

「……う、うぅ……そ、そうはっきりと言わないでください」

「でも、私が言わないと全然認めようとしないじゃん」

 

 真由美がそういってから、咲は首を横に振った。


「……私と島崎さんは違うんです」

「違う? そりゃあ確かに性別は違うよね」

「そういうことが言いたいのではありません! 住む……世界が違うんです……」

「え、つまり咲っちは自分とは釣り合わないって言いたいの!?」

「だ、誰がそんな自己愛の塊のようなことを言ったのですか!」

「いやだってねぇ……女の私から見ても、相手の男性が咲っちに気後れすることはあっても、その逆は普通ないからね……」

「……そういう、話ではないんです。……島崎さんは、立派なんです。……すでに一人で生きていけるだけの仕事をしていて、それで立派に夢を持っているんです。……私とは、住む世界が、見ている世界が……違うんですよ」


 咲はまっすぐな目で夢を目標を語っていた治を思い出していた。

 治のそのときの顔を思い出すたび、心が温かくなると同時に、胸が締め付けられるように痛くなる。

 温度は嬉しさ、締め付けは虚しさ。嬉しく思いながらも、何もしていない自分への虚しさがこみあげてくる。


「……そうなんだ。だから、惹かれたんだね」

「……かも、しれません」


 真由美の言葉に恥ずかしさを覚えながらも咲は小さく頷いた。認めると、鼓動はさらに速く、体を震わせる。

 真由美はそんな咲の肩を軽くたたいた。


「次元が違うって決めるのは自分自身なんだから、次元が同じだって思うのも自分なんじゃないの?」

「……それは、なんとも暴論ですね」

「暴論でもなんでも。それを理由に情けないことを言うよりはずっとましじゃない? 当たって砕けろの精神でいけばいいじゃない」

「……初恋は実らないからですか?」


 ぶすーっと、以前言われた言葉を返す。


「そんな後ろ向きなこと言ってたらダメだぞ?」

「言ったのは真由美です。……でも、ありがとうございます」


 咲は真由美に笑顔でいった。


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