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1 彼女と変態

また貴方ですか、な方もどうも初めまして、な方もここまでたどり着いていただきありがとうございます!さぁ!来たからには一読を!そんなに長くない中編小説になる予定デス´∀⊂






俺の彼女は、ツンデレです。






一秒でも早くアパートへ帰るために、今日も俺は定時で仕事を終わらせた。


彼女に、会いたくて仕方ない。


早々に鞄に物を詰める俺に気づいて、デスクが隣の同僚、横川が声をかけてきた。


向坂(こうさか)、おまえ今日もすぐ帰んの?」


「ああ」


「ちょっとくらい付き合えや」


「無理。仕事が残るのはおまえ自身の責任だろ。俺が手伝ういわれはない」


簡潔に言い放つ。


「ったく、相変わらずドライだなー。なんでこんな奴がモテるんだ?世の中間違ってるよ」


余計なお世話だ。


「分かってないですねぇ、横川センパイ。向坂センパイは、そこがセールスポイントなんですよ〜」


分からなくていいし、セールスポイントにしたつもりもないんだがな?東海林。


俺はめんどくさいな、早く帰してくれと思いながら、向かいのデスクからいきなり会話に入ってきた二つ下の後輩に視線をやった。


「やん、向坂センパイに見つめられちゃった。今日一緒に飲みに行きません?」


見つめてないし行くわけがない。


無言で流すと、帰宅を告げるべく上司のもとへ向かう。


まとわりつく視線など無視だ、無視。


「くぅ〜、あのクールさたまんないわっ。めっちゃ冷たい目で見られちゃった」


「女子って理解できねーよ…」


東海林のアホな声と、憔悴したような横川の声が背後から聞こえる。


横川。女心なんて一生理解できないと思うぞ。


ていうかしようと思うだけ無駄だ。


「終わりました。上がってよろしいでしょうか」


書類とにらめっこしていた上司に一言かけて、俺はそう許可を取った。


「…おー、いいぞ。どうせおまえに言うことはない。明日には私が部下になっているんじゃないか、って毎晩心配してるくらいだからな」


「大袈裟です」


「だといいがな。ご苦労さん」


「お疲れさまでした」


一通りの会話を終えて、俺は一礼したあと出入口に向かう。


出口にたどり着くまでに5人の女性に声をかけられたが全てスルー。いつものことだし、それに今はそれどころじゃない。


俺は、とにかく早くアパートに帰りたい。だって、待ってくれてる人がいるんだから―――。


ようやく家に着いて、俺はガチャガチャと鍵を開ける。


きっと彼女はいつものように、鍵の音を聞きつけてすぐそこで待っているだろう。


はやる気持ちを押さえて、ドアノブを回す。


押して開けた、その瞬間。


「花さーん!!!!」


「にゃー」


―――俺が勢いよく抱きしめたのは、俺の彼女。体長約二十センチ、雑種のメス。名前は花さん。


―――紛うことなき、猫だ。そして、彼女だ!


あぁ、つるつるでさらさらの毛並みと、長くうねる尻尾が今日も愛らしい…。


喉を撫でてやろうと手を伸ばすと、花さんは抱き上げた俺の手からいとも簡単にするりと抜け出し、フローリングの床にすたっと降り立つ。


くっ…今日も撫でさせてもらえなかった。この、ツンデレにゃんこめ。


猫ってどうしてこう自由奔放なんだ?


あー、可愛さ余って憎さ百倍。


くそう、と思いながらも俺は履きっぱなしだった靴を脱いで揃えて、続いて部屋着に着替える。


その後すぐに台所に向かって、作るものは晩ご飯だ。


自慢じゃないが、俺は三食自炊だった。


弁当だって持参する。


光熱費やらなにやらかかる中、悠長に外食とか惣菜とか食ってられるわけがないのだ。


料理していると、花さんが遠くからすました顔して立っていて、俺を蔑むような目で見ている。(俺の勝手な解釈)


猫特有のあのすらりとした立ち姿って、妙に目につくのは俺だけか?


野菜炒めと焼き魚というヘルシーなメニューを作り終えて、俺は食卓についた。


花さんはこれを見計らって、家具の下をそろりそろりとかいくぐり足元に近づいてくるのが定石だ。


本人は真剣に気づかれていないつもりらしいので、俺は気づかないふりをしてあげるという優しさを発揮している。


床に落としたふりをして、焼き魚をあげた。脂がのった、なにげに一番おいしいところだ。


ボトッと音がした瞬間、花さんの本領は発揮され―――コンマ0.1秒で繰り出される猫パンチは、それとともに爪も駆使して目の前の獲物を、綺麗に確実にかっさらっていった。


「うーん、花さん今日も見事」


ひとりパチパチと称賛の拍手を送る。


しばらくしてご飯を食べ終え、食器を流しに持っていった俺は、ウズウズしながら後ろを振り返る。


レッツスキンシップターイム!!


部屋のど真ん中、というなんともふてぶてしい定位置に座っていらっしゃる花さんに向かって、ダイブ。


「花さぁ〜ん」


猫なで声を猫に向かって出す俺って相当な猫マニ…いや、花さんマニアだな!


「シャーッ!!」


…威嚇。間髪入れず威嚇。威嚇の嵐だ。


―――そう。花さんは、同棲し始めてもう一ヶ月は経とうかというのに、俺から近づくと必ずこうして威嚇をする。


悲しすぎると思う。


俺の帰りを玄関で待ってくれているのは、全部自分のため、ひいては餌のためだっていうのは分かってる。


だがしかし―――分かっていても、俺は彼女の魅力に勝てないのだ。


だって可愛いんだもん!高級な缶詰めやキャットフードの貢ぎものをやめる気なんて、さらさら起きない。


すべては愛ゆえだ…。


「花さんっ」


「シャーッ」


「ははは、照れるなよぉ。そーれ」


俺は花さんと目線が同じになるように床に寝転ぶと、瞬時に抱き上げて天に向かって高い高いをする。


「嫌そうな顔だなぁ。でも俺は知ってるんだぞー?おまえはな」


一旦言葉を区切って起き上がると、俺はあぐらをかいてその中心、足の真ん中に彼女を置いた。


そして、喉を撫でる。


「これに弱いだろ!大好きなんだろ!喉ゴロゴロさして、ツンからデレに変わってますよ!今さら気付いて『しまったほだされた』みたいな顔するのも可愛ぞッ」


エンジン全開、花さんの魅力を語りだしたら止まらない!


聞く相手もいないのに、お構いなしに俺はまだまだ話を続ける。


しかしそれは唐突に、そして。


「まぁた一人で喋ってるよこの人。変人。きもい。いい加減花さん離れ、したらどーなの?」


…いつも通りに遮られた。

背後からかかるのは聞きなれた声。


俺の至福の一時を邪魔しておいて、挙句の果てには変人、きもい呼ばわりする女。


振り返って勝手にドアを開けて侵入してきた人物を見やれば、案の定それは幼なじみにして同じ会社の受付嬢、叶空(かのうそら)だった。


「空。そんなこと言ってるけどな、おまえだって花さんに夢中なくせに」


「そうだけどね。だって、花さんは可愛いよ?ただ、海が変人だって言ってんの」


「……………」


「あーあー、皆びっくりだよなぁ。営業部のクールガイ、顔よし頭よし性格よしの向坂海が、まさか自宅では猫ヲタクの独り言野郎だなんて。抱かれたい男ナンバーワンの座からも一気に転落だね」


…あ?


「ちょっと待て。なんだ今の。聞き捨てならん単語があったよな?」


「ん?社内ランキングのこと?聞きたいならまだまだ他にもあるけど。付き合いたい男ナンバーワンデショ、それからワインが似合う男ナンバーワン、あと…縛られてもいい男ナンバーワン」


さ、最後のなんだ?…怖くて聞けねぇ。


「でも、本当の海を知ったら皆どん引き間違いなし!これは確定事項だね?」


笑って言いながら、空は靴を脱いで部屋にあがった。


「…ハイハイそうだな」


すぐ背後に空が腰を下ろす。これもいつものこと。


「花さん、おいで。そーそー、良い子」


…そして。悠々と俺の横を通り過ぎて、空んところへ行ってしまうのもいつものことだ。


…負けない。


しんみりしていると、携帯が鳴った。


「げっ…この着信、実家だ」


「…あはは、でなよ。またあの話でしょ」


空の声がワントーン下がる。


それに気付きながらも、俺はとりあえず電話を取るのだった。


ありがとうございます\(^O^)/木曜週一更新になりますので木曜日にまたどうぞ〜´、>`

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