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 翌日、私は校門の前で先生に止められた。

 校門の所では抜き打ちで頭髪服装検査がされていた。

 「神山さん、私は昨日、何て言ったか覚えていますか?」

 「地毛を染めろと言われました」

 「なぜ言われたことができないんですか?」

 私は先生に証明書を見せた。

 勿論、無駄なことだって分かっている。

 「この証明書は地毛だから染めなくても良いと学校側が判断された物です。

 ちゃんと理事長先生や校長先生の認可は降りていますし、お二人のハンコも押されています。

 それでも染めろなんておかしいです。

 なら、この証明書は何の為にあるんですか?」

 私と一緒に登校してきた由利は「だから染めろって言ったのに」とぼそりと私の耳元で囁いて先に校門を潜って行った。

 「昨日と同じ問答を朝からさせないでくれる」

 「先生が私の持っている証明書を理解してくれないからこうなったんではいですか?」

 「生意気なことを言うんじゃないっ!」

 でも、事実だ。

 私は何も間違ったことを言ったわけではない。

 「何を騒いでいるんですか?」

 「校長先生」

 にこにこといつもの笑顔を常備しながら校長先生が私と先生の所に来た。

 「いえ、この生徒が髪を黒に戻してこなかったので」

 校長先生は私を一度見てから笑みを深め、視線を先生も戻した。

 「彼女は良いのですよ。証明書はしっかりと発行されています」

 「しかし」

 まだ言い募ろうとしていた先生の言葉を遮りながら校長先生は言う。

 「先程からあなたの横を通り過ぎている女子生徒のスカートですが、裾が太腿近くまで上がっていましたね。

 我が校の規則ではスカート丈はどれくらいでしたかね?」

 「・・・・膝下までです」

 「そうですね。制服はファッションではないので足を見せる必要はどこにもありません。

 では今通り過ぎた男子生徒の髪色はやけに明るかったですが、あれは地毛でしょうか?」

 「・・・・いいえ」

 「それはおかしいですね。

 神山さんは地毛で証明書も発行されています。

 それに彼女はきちんと制服を着ています。

 なのに、なぜ彼女は検査に引っかかったのでしょう。

 これは一体何の検査ですか?」

 「・・・・・頭髪服装検査です」

 「そうですね。では、彼女のどこに問題があったのでしょう?」

 「・・・・・どこにもありません」

 「では、もう良いですね」

 「・・・・はい」

 「神山さん、長い間拘束してすまなかったね。もう行っていいよ」

 「はい。校長先生、ありがとうございます」

 校長先生は終始笑顔だった。

 言葉にも荒さはどこにもなく、注意をしているのか疑ってしまうぐらい穏やかなものだった。

 「注意すべき生徒を見逃し、注意される必要のない生徒を叱るのは指導ではありません。

 それは虐待と一緒ですよ」と言って校長先生は校舎の中に戻って行った。

 先生は唇を噛み締めながら私を睨みつけたが、校長先生に注意された為、それ以上は何も言ってこなかった。

 私も何事もなかったかのように校舎の中へ入った。

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