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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
竜の聖域

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093 旅路

 職人蜥蜴さんから武具を受け取り、自分たちの準備は終わった。しかし、堅い拳さんや学ぶ赤さんの方で、まだ準備が残っているということで、出発は翌日となった。


 牢屋があった洞窟の方へと戻り、休む。


 その日も夢を――いつもの夢を見た。


 幼い竜と旅をする夢。


 そして、目が覚める。


『また、夢だ』

 今日は出発の日だ。気分を入れ替えていこう。


 全ての準備が終わり、いよいよ邪なる竜の王の討伐へと出発だ。


 その為の作戦も堅い拳さんと一緒に考案済みだ。


 作戦は、とても簡単なものだ。


 邪なる竜の王はここから三日ほどの距離にある渓谷の奥、そこに作られた洞窟に住んでいる。その渓谷は飛竜が住む危険な場所となっているが、何故か、生け贄を運んでいる時だけは、その飛竜が襲ってこないらしい。


 生け贄を運んでいる振りをして、邪なる竜の王のもとへと向かい、そのまま討伐してしまう。


 これが、その作戦だ。


 ただし、問題もある。


 あまり人数が多いと攻めてきたと思われて、攻撃されてしまうようだ。そのため、どうしても少ない人数で向かうことになってしまう。


 もう一つは、渓谷の飛竜は襲ってこなくなるが、そこに向かうまでの道中は、普通に、それ以外の魔獣に襲われるということだ。どうしても、魔獣と戦える人員が必要になってくる。


 と言っても、これはあまり心配していない。今までも蜥蜴人さんたちは自分たちだけで生け贄を捧げていたはずだから、魔獣と戦いながら進むことに問題はないはずだ。


 それに最悪、自分一人の力でも……何とかなるはず。


 後は、自分が邪なる王に勝てるかどうか、だけ――問題はこれだけだ。


『なんとか……なるよね』

『うむ。なんとかするのじゃ』

 銀のイフリーダが腕を組み、ニヤリと笑う。


『うん、それじゃあ、行こうか』


 まずは闘技場へと向かう。その途中、どうしても、水の路を通ることになるのだが、新しい靴は水を弾いていた。

『これは便利だね』

 と言っても、足が浸かるくらいの水の深さなので、靴の中に水が入り込むし、新しい服の裾は水浸しになっていた。

 水の路を抜けたところで、靴を脱ぎ、裏返して、中の水を捨てる。水を弾くだけあって、中の水は綺麗に落ちた。残った水滴で、ちょっと湿っているくらいだ。


『これ、足が悪くなりそうだよ、蜥蜴人さんたちは大丈夫なのかな』

『ふむ。これも種の違いというヤツなのじゃ』

『はぁ、そうだね』


 闘技場に入ると、すでに、学ぶ赤さんと堅い拳さん、それに一緒に行ってくれる二人の戦士さんが待っていた。


「待っていたのです」

 生け贄役の学ぶ赤さんは、とても張り切っている。


 そう、偽りの生け贄を演じるのは学ぶ赤さんだ。


 生け贄役になるための準備があると、途中で別れたが、特に何かを行った様子はない。本当に何だったんだろう。


「こちらの準備は出来ているのです」

 堅い拳さんは金属の扉をくり抜いた大盾を背負い腕を組んでいる。

「それ、重くないですか?」

 堅い拳さんは背負っていた大盾を軽々と持ち上げる。

「これくらいは軽いのです」

 とても力強い。


「戦士の長は、力だけは、この里一番なのです」

 戦士さんの一人が教えてくれた。

「ち、力だけではないのです!」

 堅い拳さんが慌てて否定していた。


 種族が違うのでよく分からないが、もしかすると、堅い拳さんはムキムキな感じの人なのかもしれない。ただ、頭の中まで筋肉って感じではなさそうなのが救いだ。


 堅い拳さんは大盾と木製の弓を持っている。学ぶ赤さんは手ぶらだ。そして、二人の戦士さんは大きな荷物を背負っていた。一応、戦士さんたちも木製の弓を持っているが、あくまで一応という感じだった。

「この中に食料などが入っているのです。戦うのは戦士の長と戦士の王に任せるのです」

 二人は護衛というよりも荷物運びとして着いてきてくれるようだ。


「普段もこんな感じなんですか?」

「普段はもっともっと多いのです」

 堅い拳さんが首を横に振る。


「あれ? でも人数が多いと飛竜を刺激するって……」

「そうなのです。なので、部隊を分け、交代で護衛しながら進むのです」

 交代で?

「渓谷までの距離は三日程度と近い距離なのです。人員を分けても、すぐに合流出来る距離なのです」

「でも、それって大変じゃないですか?」

「そうなのです。大変なことなのです。本当は、今回もそうしたかったのです。ただ、何処かの誰かが、無駄に戦士を使った為、余力がなくなってしまったのです」

 多分、キラキラ帽子のことだろう。学ぶ赤さんを生け贄として運んだ時に、戦士を使い潰したのだろう。それが、ここで響いてくるなんて、本当に碌でもないヤツだ。


「だから、私が自ら動くのです」

 堅い拳さんが堅く拳を握りしめている。

「戦士の長に任せれば大丈夫なのです」

 同行してくれる戦士さんたちからの信頼も厚いようだ。


「では、出発なのです」

 学ぶ赤さんが腕を振り回す。生け贄役の学ぶ赤さんが一番張り切っていた。


 学ぶ赤さん、堅い拳さん、二人の衛兵さんとともに闘技場の奥へと進む。


 闘技場の奥には――普通に道が続いていた。


「この道を進めば渓谷に辿り着くのです」


 かつては道だった石畳の残骸が残った寂れた平原だ。木々はまばらにしか生えていない。


 遠くに見える山が目的の渓谷なのだろう。ここからでも飛び交っている飛竜の姿が見える。


『まだ、はじめの一歩だね』


 三日の距離だけあって、先は長そうだ。

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