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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
竜の聖域

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092 武具完成

 職人蜥蜴人さんたちに頼んでいた武具が完成したらしい。


 葉っぱに乗って学ぶ赤さんとともに職人蜥蜴人さんたちの待つ作業場がある建物へと向かう。


「お待たせしたのです」

 そこでは、すでに職人蜥蜴人が武具を用意して待っていた。


「はい、頼んでいたものが完成したと聞いて来ました」

 頭に金属の輪っかを着けた職人蜥蜴人さんが頷く。

「まずは、頼まれていた大盾なのです」


 職人蜥蜴人の足元に置かれている、『それ』は、一枚の大きな板だった。学ぶ赤と食事のために、一緒に向かった院の建物の中で見た、水を防いでいるという扉にそっくりだ。


「全身を覆い隠すような鉄の大盾を作るのは無理だったのです。なので、最初からあるものを利用したのです」

 院にあった物か、それとも、何処か他の場所の扉なのか、どうやら、本当に、その扉を再利用したようだ。


 彼らの技術では大盾は作れなかったようだ。


 金属の板を確認する。大きな金属の板の裏には持ち手がついていた。何とか、金属の板を持ち上げ、その下に潜り込んで、持ち手を握る。


「重い……」

 重さに潰れてしまいそうだ。


 限界を感じ、潰れそうになりながらも、何とか、大盾の下から這い出す。


「これは堅い拳さんたちに運んで貰いましょう」

「分かったのです。頼んでおくのです」

 学ぶ赤が頷く。


 金属の板は重く丈夫だ。どんな形であれ、邪なる竜の王の吐き出すブレスが防げるようなら問題無い。これなら、戦いで役に立ってくれそうだ。


「次に弓なのです」

 職人蜥蜴人さんが用意してくれた弓は二種類あった。


 一つは簡素な作りの木製弓。


 手に取り、引いてみる。


 軽い……。


 これは、この地でよく使われている標準的な弓なのだろう。衛兵たちが持っていた弓とそっくりだ。ただ、作りが簡単な分、あまり威力は出そうにない。


 偉そうな蜥蜴人が使っていた鉄の弓が出てくると思っていたので意外だ。


 もう一つは、見覚えのある弓だった。

「これ、自分が持ってきた弓……ですか?」

「そうなのです」


 自分が作った弓に鉄の板が取り付けられ、強度が増している。さらに握りの部分も作り直され、持ちやすくなっている。

 手に持ち、引いてみる。


 重い。


 以前も引くのがいっぱいいっぱいだった弓が、鉄の板を使って補強されたことで、さらに重くなっている。

 これを素早く引いて使う、なんてことは出来そうにない。


 手数重視の蜥蜴人の里の弓か、それとも一撃を重視した自分の弓か。


 持っていくのは……。


「こちらの補強された弓を持っていきます」

 相手に攻撃が効かなければ意味がない。使うなら威力重視だ。


 補強された弓を受け取り、学ぶ赤さん手製の矢筒に鉄の矢を入れる。

「そう言えば、鉄の弓はないんですね」

「あれは、この里の宝の一つなのです。今では作ることが出来ない残されたものの一つなのです」

 鉄の弓は、特別な品だったようだ。


「次は槍なのです」

 用意された槍を見る。


 一メートルほどの長さの木の棒に、尖った鉄の板が結びつけられている。鉄の板の先端は突けるように鋭く、左右は斬ることも出来るように刃が作られていた。

 持ってみると、思ったよりも軽かった。


 使っている木材が、先ほどの弓と同じ材質のようだ。軽く、すぐに折れそうだ。自分が拠点に使っている場所の木と比べるとずいぶんと脆そうに感じる。


 振り回してみる。


「軽いですね」

 びゅんびゅんと木がしなる。乱暴に使うのは……止めよう。

「この地にある物だと、どうしても、そうなってしまうのです。材料があれば、作り直すことも出来るのです」

 拠点の木か、大蛇の骨か、どちらかがあれば、もっと良い槍が作れたかもしれない。しかし、今更、拠点に戻ることも出来ない。


 今回はこれで我慢するしかない。


「剣なのです」

 次は渡していた折れた剣だ。


 握りや、研いだ刃の部分は、そのままだ。その研いだ元からある刃の反対側から、補強するように鉄の刃が伸びている。元々あった金属の部分で斬ることも、新しく補強された鉄の部分で斬ることも出来るようになっている。さらに尖った先端が作られたことで突くことも出来るようだ。

「ありがとうございます」

「鞘がなかったので、鞘も作ったのです」

 動物の皮を加工して作られた鞘だ。皮は柔軟性があり、ぐにゃぐにゃとしている。


 皮製の鞘を腰紐に結びつけ、そこに鉄の剣を入れる。剣が落ちないように、鞘に結びつけられていた紐を、その剣の握りに結ぶ。

「助かります」

 これで剣も持ち運びがしやすくなった。ただ、自分の背が低いため、油断すると剣を鞘ごと引き摺りそうだ。


「最後はこれなのです」

 最後に彼らが持ってきたのは、服と鉄の胸当てだった。

「これは? 頼んだ品にはなかったと思います」

「聞いたのです。戦士の王が、ボロボロの服を着ていては駄目なのです」

 あの時の採寸は、武器の大きさを調整するためではなく、このためだったようだ。


「ありがとうございます」

「そこの影で着替えると良いのです」

 建物の壁の影に隠れて着替える。


 この地に来てからよく見かける法衣のような服だ。袖は長い。


 サイズは……ぴったりだ。


 服の生地は他の蜥蜴人さんたちが着ているものと同じようだ。多分、あの草――狼食い草の繊維を使ったものなのだろう。

 法衣の上から鉄の胸当てを身につける。肩紐で鉄の板を引っかけるだけの簡単な胸当てだ。


 服だけではなく、靴も用意されていた。動物の皮を使った簡単な靴。鞘と同じ材質らしく、ぐにゃぐにゃとしている。


 履き心地は……いまいちだ。


 それでも今の自分にはありがたい。


「旅の途中で着替えられるように予備も用意したのです」

 職人蜥蜴人さんの声が聞こえる。


 本当にありがたい。


『うむ。今までのボロよりは良くなったのじゃ』

『イフリーダ、覗かないでよ』


 これで邪なる竜の王と戦う為の準備は整った。

手製の弓 → 補強された木の弓

木の矢 → 鉄の矢

骨の槍 → 鉄の槍(低品質)

折れた剣 → 鉄の剣

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