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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
竜の聖域

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084 飛竜

「整列するのです!」

 その言葉とともに闘技場の入り口から弓を持った衛兵の一団と豪華な胸当てさんが現れる。


「構えるのです!」

 豪華な胸当てさんの指示に従い、衛兵の一団が一列に並び、持っていた弓を構える。


『へ?』

 豪華な胸当てさんたちの動きは早い。まるで、こうなることを事前に知っていたかのような準備の良さだ。

『そう言えば、連行されている時に豪華な胸当てさん、一緒に来なかったよね。この準備だったのかな?』

『ふむ。それか、常に、危険に晒されているか、なのじゃ』

『あー、そっちもあるね。こういうことは良くあることなのかもしれないね』


「遅いのです」

 偉そうな蜥蜴人は現れた衛兵たちを見て、そう呟きながらも、ほっとしたような様子を見せていた。


「放つのです!」

 豪華な胸当てさんの言葉とともに、衛兵の一団から矢が一斉に放たれる。


 放たれた矢の殆どが飛竜の堅い外皮に跳ね返されている。しかし、運が良かったのか、腕が良かったのか、放たれた矢の中には、堅い外皮を貫いて刺さっているものもあった。

『おー、凄いね』


 恐ろしい瞳でこちらを見ていた飛竜の視線が衛兵の一団へと向けられる。飛竜の狙いがこちらから外れたようだ。


「二射、構えなのです!」

 整列した衛兵の一団が次の矢を取り出し、構える。


『このまま、ここにいると邪魔になりそうだね』

 流れ矢に当たって怪我をするのも馬鹿らしい。動くなら、今だ。急いで、ここから離れるべきだ。


 そして、飛竜が動いた。


 それは一瞬の出来事だった。


 飛竜の巨体がふわりと浮いたかと思ったら、衛兵の一団が、長く伸びた尻尾によって薙ぎ払われていた。

 宙を舞う衛兵たち。


『一撃で壊滅……?』

 一瞬の出来事に声が出ない。いや、呆けている場合じゃない。


『ごめん。イフリーダ、今回も頼めるかな』

『ふふ。任せるのじゃ』

 銀のイフリーダが自分の背後から首へと手を回し、ぶら下がる。それは端から見れば間抜けな格好だろう。しかし、銀のイフリーダの姿は他の人には見えないはずだ。だから、問題無い。


 飛竜は吹き飛ばした衛兵へと大きな口を開けて迫る。この飛竜たちは蜥蜴人を喰らって生きているのかもしれない。


 体が勝手に動き、右足が持ち上がる。

『これが神技――タウントオーラなのじゃ!』

 そのまま地面へと右足を叩きつける。地面が砕け、大きな音とともに破片が飛び散る。


 衛兵の一団に狙いを定めていた飛竜がこちらへと振り返る。


 銀のイフリーダは、それを見て、嘲るように笑った。


 飛竜が怒りの咆哮を放つ。飛竜には銀のイフリーダの姿が見えていないはずなのに、怒り狂っている。


 体が動き、木の弓に木の矢を番える――と同時に矢が放たれていた。

『神技ラピッドアロー、放たれた矢は相手に刺さる、なのじゃ』

 放たれた矢は怒りに染まっていた飛竜の目に刺さっていた。残された最後の瞳を潰され、飛竜がその場で苦しみ暴れる。近くにいるであろう衛兵さんたちが無事か気になるくらいの暴れ方だ。


『ふむ』

 体が勝手に動き、驚いた表情で飛竜を見ていた偉そうな蜥蜴人の元へと歩いて行く。

『過ぎたおもちゃなのじゃ』

 そして、蜥蜴人が持っていた金属製の弓と矢を蹴り上げた。


「な、何をするのです!」

 叫ぶ偉そうな蜥蜴人を無視して、蹴り上げられた弓と矢を手にする。

「そ、それは、それを返すのです!」

 偉そうな蜥蜴人が弓と矢を取り返そうと動く。銀のイフリーダが顔だけ動かし、睨み付ける。その威圧を感じたのか、偉そうな蜥蜴人は大人しくなった。


『ソラよ、扱うものが違えば、おもちゃも武器になるのじゃ』

 弓と矢を取り上げられ、しょんぼりとしている蜥蜴人を少しだけ可哀想に思いながら、弓を構える。


 体が勝手に動き、金属製の弓に矢を番える。そして、片膝を折り、低い姿勢で弓を引き絞っていく。

 普通では引くことすら出来なさそうな、金属で作られた弓が、ギチギチと小気味よい音を立てながら、背を逸らしていく。

『力で引くのではない、技で引くのじゃ』

 銀のイフリーダはよく分からないことを言っている。


 矢を捻るように持ち、狙う。


 暴れている飛竜へと狙いが定まっていく。


『これが、神技チャージアローなのじゃ!』

 そして、限界を超えて引き絞られた弓から矢が放たれる。


 金属製の矢は空気の渦を身に纏い飛ぶ。


 そして、飛竜の頭に突き刺さり――それを爆散させた。


 周囲に先ほどまでは飛竜の頭だった肉片が飛び散る。


『一撃!?』

 衛兵の一団で斉射しても、殆どの矢を跳ね返していた飛竜が、銀のイフリーダの一撃によって倒された。

『うむ。所詮は飛ぶことを覚えた蜥蜴なのじゃ』


 銀のイフリーダは、歪んでいた木の弓と矢でも飛竜の目に命中させていた。そして、武器が変われば一撃で倒してしまう。

『遠いね』

『近すぎても困るのじゃ』


「な、な、な、な、その力は何なのです!」

 偉そうにしていた蜥蜴人が大きく口を開けて驚いている。


 空を見る。


 まだ上空には飛竜の一団が残っている。最初の一匹目を倒したに過ぎない。

『イフリーダ、まだいけそう?』

『ふむ。我を誰だと思っているのじゃ』

『イフリーダだよね』

 銀のイフリーダが、肩先から覗かせていた顔をこちらに向け、笑う。


 空に集まっている飛竜たちは、このまま続けて攻撃するか迷うように旋回を繰り返していた。

『このまま逃げてくれると良いね』

『ふむ。なかなか美味しい獲物だと思うのじゃ』

 銀のイフリーダからすると、マナ結晶を得るための獲物でしかないようだ。


 そして、迷うように旋回を続けていた飛竜たちは、こちらへの攻撃を諦め、何処かへと飛んでいった。

『逃げたようだね』

『ふむ。仲間がやられて我との力の差を理解したのじゃ』

『そうだね』


 尻尾の一撃で吹き飛ばされた衛兵さんたちは大丈夫だろうか。


 そちらを見ると、無事だった衛兵たちが片膝をついて、こちらに頭を下げている。


 そして無事だった豪華な胸当てさんが手に持っていた弓を掲げていた。

「新たな戦士の王の誕生なのです!」

 豪華な胸当てさんが何かを言っている。


 えーっと、これは?

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