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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
竜の聖域

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073 準備完了

 夜の闇の中、焚き火の明かりを頼りに晩ご飯の準備を行う。


 今日も肉だ。毎日、お肉だ。


 スコル、学ぶ赤とともに食事を行う。


「学ぶ赤さん、湖を渡るためのイカダが完成しました」

「おお!」

 学ぶ赤が喜びの声を上げる。


「出発の予定は明後日です。明日は出発のための準備を行います」

「任せるのです」

 学ぶ赤が勢いよく胸を叩き――むせていた。嬉しくなって強く叩きすぎたのかもしれない。


 ……。


 学ぶ赤さんに何を任せたら良いのか分からないが、とりあえず、その勢いと熱意に任せてみよう。


「丸太を組み合わせただけのイカダなので、湖の移動は学ぶ赤さんの力が頼りになります」

「任せるのです」

 学ぶ赤が頷く。こちらは本当に学ぶ赤の力が頼りだ。その力をアテにして、櫂などの水を漕ぐものを作っていない。

 湖を渡っている最中に、学ぶ赤に何かあった場合は――そう、湖には学ぶ赤の船を沈めた相手がいる。その時は、逃げ場のない湖の上だ、出来ることは限られる。


「学ぶ赤さん、湖には学ぶ赤さんの船を沈めたものが何処かに潜んでいるはずです」

 学ぶ赤が頷く。焚き火の明かりに照らされた、その表情は硬い。

「全力で船を操って逃げ切ってみせるのです」

 学ぶ赤の言葉に不安を覚える。船ではなく、イカダなのだが、大丈夫なのだろうか。


「一応、自分の方でも骨の槍を持っていきます。それを使って迎撃するつもりです」

「槍で湖の中の相手を何とか……どうするのです?」

 学ぶ赤が疑問符を浮かべている。

「突きます」

「ま、任せたのです」

 学ぶ赤の顔が理解出来ないものを見たかのように引きつっていた。突く以外に何かあったのだろうか。


「イカダの真下から攻撃された時は対処できないので、そうならないようにだけはお願いします」

「何とかしてみせるのです」

 学ぶ赤が強く頷く。そして、顔を上げる。


「それでもどうにか出来なかった時は、ソラだけでも逃げるのです」

 学ぶ赤の決意を秘めた表情を見て――首を横に振る。

「湖の上に逃げ場所はありません。最悪、泳いで逃げるつもりですが、その段階まで来た時点でこちらの敗北です」


『ふむ。その時は我に任せるのじゃ』

 いつの間にか自分の横で片肘を突いて寛いでいた銀のイフリーダの言葉が頭に響く。

『うん、その時は、お願い』

『任せるのじゃ』

 銀のイフリーダの存在は大きい。完全に頼り切ってしまうことは出来ないが、何かの時の保険として、心に余裕を持つことが出来る。心に余裕が出来れば、それだけでも大きな利点になる。


 次にスコルの方を見る。

「スコルはお留守番だね」

「ガル」

 食事を終え、丸くなろうとしていたスコルが、驚いた様子でこちらを見た。その顔には、何故だ、と書かれているようだった。

「作ったイカダに余裕がないからね」

「ガル」

 スコルがイカダがあるであろう方向を見る。


「多分、スコルの重さだとイカダが沈む」

「ガル」

 スコルが、えっ、という表情でこちらを見る。

「イカダは船とは違うから……」

 そこで学ぶ赤が声を上げた。

「なるほど、なのです。向こうに着いた後は、船で迎えに来るのです」

 学ぶ赤が、その言葉とともに、スコルに笑いかけていた。

「ガル」

 スコルが仕方ないなぁ、という表情で頷いている。


 いつの間にかずいぶんと仲が良くなったようだ。その光景を見て、以前と同じように、繰り返し、思う。最初の頃、スコルの存在に怯えていたのが嘘のようだ、と。やはり、一緒の場所で眠っているのが大きいのかもしれない。


 翌朝、出発のための準備を始めた。


 天候は悪くない。これなら、明日の出発も問題ないだろう。


 まずは持っていく物だ。


 まずは武器としての骨の槍が十四本。これは、例の触手に襲われた時の迎撃に使うつもりだ。


 いつもの折れた剣。


 腰に差した石の短剣。


 そして木の弓と木の矢。木の矢の本数を数えたら二十九本あった。これも貴重な武器だ。矢筒に入らない木の矢は、学ぶ赤の作った壺に入れて持って行くことにした。


 例の紫の実の汁は、学ぶ赤が作った壺の中でも、一番小さな物の中に入れて蓋をした。これも持って行く予定だ。


 ここまでが戦うための道具だ。石の斧を持っていくかは悩んだが、向こうで使うことはないだろうと持って行くことを諦めた。持っていく物は、最悪、使い捨てる覚悟で必要最小限にすべきだ。


 次に食料。


 乾燥させた蛇肉と小動物の肉。調味料としての小さな赤い実。これは二日分を蛇皮の背負い袋の中に入れた。


 そして重要な水。


 湖の上ということもあり、まわりは水だらけなのだが、生水を飲んでお腹を壊したら洒落にならない。

 こちらは学ぶ赤に作って貰った四本の水筒に入れて持って行く。


 学ぶ赤が二つ、自分が二つだ。


 向こう岸に着いて、すぐに食べ物や水が手に入るかは分からない。そのため、食料や水はある程度、余裕を持たせた数にした。


 学ぶ赤の話では向こう岸に着けば、何とかなるようだが、最悪の場合を考えて準備は行うべきだ。


 最後はマナ結晶だ。小動物から集めた大量のマナ結晶を学ぶ赤の壺に入れて蓋をした。現地で通貨になるということなので、これも重要な品だ。


 ただ、学ぶ赤を向こうに送るだけではなく、現地で色々な品物を手に入れるつもりだからだ。

 服に靴、それとしっかりとした水筒、金属製の道具。欲しいものはいっぱいある。今のマナ結晶の数で、どれだけ交換できるか分からないが、出来る限り手に入れておきたい。


 ……。


 と、もう一つだけ持っていく物を増やした。


 骨の王が頭の上にのせていた石の冠だ。何故か、必要になりそうな予感を覚え、こっそりと背負い袋の中に入れておいた。


 これで全てだ。


 明日は、ついに出発だ。


 全ての準備を終え、眠りにつく。


 ……。


 そして、夢を見た。

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