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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
竜の聖域

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070 弓の力

 周囲に何かが蠢く気配が生まれる。生まれた気配が次々と増えていく。


 気配に気付き、すぐに伏せて森の茂みへと紛れ込む。例の小動物たちだろう。相変わらずうじゃうじゃと沸いてくるようだ。


『自分は森、自分は森』

 気配を殺し、森に紛れ込んだままゆっくりと奥を目指して進んでいく。

『ふむ。ソラは森だったのじゃ』

 銀のイフリーダが周囲の状況などお構いなしな様子でニシシと笑いながら話しかけてくる。

『数が多いからね。全てを相手にするのは面倒すぎるよ』

『ふむ。弓の練習は終わったようなのじゃ』

 銀のイフリーダは笑っている。


『終わっていないけど、ちょっとだけ、今から使うのは難しいかなって思っただけだよ』

 そのまま隠れて森の奥へと向かう。


 木の上や、茂み中などから複数の何かが蠢いている気配は消えない。気付かれないようにゆっくりと隠れて進み、森の奥に――周囲の景色が変わったところで、やっと蠢いていた気配が消えた。


 東の森の奥でイカダを補強する為に使う若木を探す。


 キョロキョロと周囲を見回しながら探していると、すぐに手頃な形の若木が見つかった。

『木の数が多いから、いくら採取しても大丈夫だと思っていたけど、もしかすると、この若木たちも採取した側から恐ろしい勢いで成長して増えているのかな』

 いくら倒しても減らない小動物もそうだが、この森は不思議なことばかり起こっている。そして、この森を抜けたところにある廃墟となった石の都。石の城はまだまだ探索の途中だ。城内を探せば、ここでの生活に使える物が見つかるかもしれない。

 学ぶ赤の件が片付いたら、もう一度、探索に向かおう。


 若木に石の斧を叩きつける。何度も、何度も、叩きつけ、若木を折る。


 と、そこで何かの気配を感じた。


 すぐに近くの茂みに隠れ、気配を探る。

『ふむ。あれのようじゃ』

 銀のイフリーダが指さした方を見ると、そちらに蜥蜴がいた。以前、出くわしたオオトカゲよりも一回り小さいサイズだ。もしかすると子どもなのかもしれない。


 小さなオオトカゲが、匂いを嗅ぐような動作を行いながら頭を動かし、周囲を見回している。もしかすると、こちらの存在に気付き、自分を探しているのかもしれない。


『ふむ。幼体なのじゃ』

 銀のイフリーダの言葉に頷く。

『危険はあると思う?』

『見つかれば喰われて終わりなのじゃ』

 銀のイフリーダの言葉にため息が出る。

『魔獣は人に恨みを持っているのかな。出くわしたら戦うしかないの?』

『ある程度の知能を持つ例外以外は、全て、そうなのじゃ』

 もしかするとスコルのような存在は例外中の例外なのかもしれない。


 小ぶりのオオトカゲが何かに気付いたように、こちらを向く。そして、ゆっくりと、這うように動き出した。

 弓を持つ手に力を入れる。


 そして、感覚を思い出す。


 イフリーダが弓を使った時はどうだった?


 素早く構え、構えた時には、矢を放っていたはずだ。


 イメージする。


 その時の体の動きをなぞるように、同じように、同じ結果を目指し、イメージする。


 矢筒に手を伸ばし、木の矢を掴む。

『今だ』

 そのままイメージ通りに動く。


 一瞬にして木の矢を引き抜き、弓に番え、引き絞り、放つ。


 木の矢が飛び、そして、オオトカゲに当たる。


 そのまま木の矢が跳ね飛ばされ、折れて、くるくると宙を舞う。


 こちらの攻撃に気付いたオオトカゲが這う速度を上げ、迫る。


 次だっ!


 慌てず、次の矢に手を伸ばす。そして、イメージする。


 放つ。


 一瞬にして木の矢が放たれ、オオトカゲに刺さった。オオトカゲが跳ね、転がる。

『やった!』

『ソラ、まだじゃ』

 転がっていたオオトカゲが起き上がり、先ほどと変わらない勢いで這ってくる。


 木の弓を地面に置き、骨の槍を構える。


 オオトカゲが這いながら口を開け、その大口から水球を飛ばしてくる。


 飛んできた水球を骨の槍で貫き、破裂させる。そして、そのままオオトカゲの元へと駆け、骨の槍で貫く。


 骨の槍の鋭い一撃によって頭から顎まで貫通したオオトカゲはピクピクと痙攣し、絶命した。

『うーん、しっかりとイフリーダの真似が出来たと思ったんだけどなぁ』

 自分としてはイフリーダの神技と同じことが出来たと思った。しかし、木の矢は貫通せず、刺さっただけだった。

『そんな簡単に出来るようになるはずがないのじゃ。型は似ていても習熟が足りないのじゃ』

『惜しいってことだね』


 仕留めたオオトカゲからマナ結晶を取り出そうとして、刃物を持っていないことに気付いた。石の短剣も折れた剣も拠点に置いてきている。

『はぁ、確か、このオオトカゲって食べられないんだよね。でも、拠点に持って帰るしかないか』

 肉は食べることが出来ず、必要なのは中のマナ結晶だけ。それなのに、拠点に持って帰らないとマナ結晶を取り出すことが出来ない。

 幸いなのが持って帰れないほどのサイズではないということだけだ。

『でも、荷物になるよね』


 その後も若木を集め、背負い籠が膨らんだところで帰ることにした。


 オオトカゲの死体に骨の槍で穴を開け、ツタを通し、引っ張っていく。


 帰る途中で、小動物の群れに襲われたが、戦ってられないと一目散に逃げた。

『まったく面倒な奴らだよ』


 拠点に戻り、背負い籠を降ろすと、その籠に無数の棘が刺さっていた。

『はは、体に当たって無くて良かったよ』

『当たりそうな軌跡は全て我が逸らしたのじゃ』

 銀のイフリーダが何を言っているという表情をこちらに向ける。

『あー、そうだったんだ』

『うむ。今の我は、それくらいなら行えるほどのマナを蓄えているから問題ないのじゃ』

『うん、ありがとう』


 何とかなったと思ったら、結局、イフリーダに助けられていた。まだまだ力が足りないようだ。

小さなオオトカゲという謎の言葉。

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