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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
竜の聖域

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068 作った

「えーっと、それで見せたかったものは、その壺ですか?」

 学ぶ赤が頷く。

「えーっと……」

 その反応を見て、これは何かを言うべきかと迷い口ごもる。


 そして学ぶ赤が笑った。

「もちろん、一番に見せたかったのはこれなのです」

 そう言って学ぶ赤は名残惜しそうに、その凝った壺を窯の横に置く。と、そこを見れば他にもいくつもの壺が並んでいた。いろいろ作った中で一番出来が良かったものを見せてくれたようだ。


「えーっと、とても良い出来映えだと思いました。正直、こんな道具も揃っていない場所で作ったとは思えない代物です」

 そうなんだよね。ここには何も道具がない。その状態で、装飾の施された壺を作ってしまったんだから、そこは褒めるべきところだろう。

 窯の横に並んでいる壺たちを見る。これだけの数を作るくらいだから、他の人から、それを認められて悪い気はしないと思うしね。


「ふふ、ありがとうなのです。そして、ソラにはこれなのです」

 学ぶ赤が何かを持ってくる。


 それは小動物の毛皮が巻き付いた細長い筒のようなものだった。


 学ぶ赤から受け取り、確認する。


 いくつかの木片を使って円筒を作り、それを小動物の皮が補強している。底は塞がれているが、口は開いたままになっているので水筒ではない。それよりも少し長く大きい。円筒に近い筒だ。持ち運びの為なのか、それとも肩から下げる用になのか、長い革紐も結ばれている。


「これは?」

「矢筒なのです。あの動物の皮が処理もされず余っていたようなので、作ってみたのです」


 ……矢筒?


 矢筒を作ったの?


「これを学ぶ赤さんが作ったのですか?」

「そうなのです」

 学ぶ赤は胸を張っている。


「ソラは弓を使うようなので作ってみたのです」

 えーっと、学ぶ赤さんに弓の練習を見られたのって……昨日の今日で、こんなものを作ったの?

 ちょっとだけ学ぶ赤の物作りの才能が恐ろしくなる。なんとなく、頼んだら何でも作ってくれそうな怖さがある。

「皮の加工も……」

「ソラは皮を必要としていなかったようなので、捨てるくらいならと私が加工していたのです」

 いや、必要としていなかった訳ではなく、加工の仕方が思いつかないから、とりあえず保管していただけです。


「勝手に使ったのは悪かったのです」

「い、いえ。大丈夫です。これからも何かを思いついたら、使ってください」

 学ぶ赤が嬉しそうに頷く。


「それではソラ、身につけて欲しいのです」

 受け取った矢筒を肩から下げてみる。自分の体の大きさだと少しサイズが大きいようだ。これだと矢を取るのが大変そうだ。それに、走ったり、激しく動いたりするとずり落ちそうだ。

 そして一番の問題は籠を背負う時の邪魔になりそうなことである。


「これは背中ではなく、腰の方が良いかもしれないのです」

 そう言って学ぶ赤が自分の方へと近寄ってくる。

「ソラ、少し、任せるのです」

 学ぶ赤が肩から下げた矢筒を取り、何か色々と革紐を結び直すなどの加工を行っている。そして、こちらの背後へと回る。


「ソラは腰紐を巻いているようなので、そこに結びつけれるように再加工したのです」

 背中の腰の部分へと横向きになった矢筒が結びつけられた。確かにこれなら矢を取り出すのが簡単だ。


「でも横幅が広くなるのです」

 矢筒を横にした分、横幅が広がってしまう。

「そうですね。この感覚と間隔に慣れないとぶつけて壊してしまいそうですね」

「狭い場所を通る時は左側、底の方を押さえて縦向きにして通るのです」

「なるほど。横向きに完全固定じゃないんですね」


 矢筒の感触を確かめるため、実際に矢を入れてみる。


 木の矢は十四本ほど入った。この数が多いのか少ないのか分からない。無理をすれば、もう少し入りそうだが、木で作った簡単な矢は、それだけで折れそうなので無理矢理入れるのは止めた。


「ちょっと使ってみます」


 東の森の近くまで歩き、木の一つを的代わりにする。


 矢筒から木の矢を引き抜き、番え、放つ。


 勢いよく飛んだ木の矢は的代わりの木に刺さった。

「お見事なのです」


 次の矢を引き抜き、番え、放つ。


 こちらも的代わりの木に命中。


 次々と矢筒から木の矢を抜き、番え、放っていく。

「これは便利ですね」


 そして、放った木の矢の全てが狙っていた的代わりの木に刺さっていた。刺さっている場所は、もちろん全て同じ場所に――なんて、上手くいく訳がなく、ある程度ばらけてしまっている。それでも的代わりの木には当たっている。


「まだまだ当てるのが精一杯です」

 それを学ぶ赤が驚いた顔で見ていた。

「いきなりで全て当てるトカ、ソラはおかしいのです」


 そうかな。


「ただ当てるだけなら簡単ですよ」

 目指しているのは、この木の矢で木を貫通させることだからね。そこから考えれば当てるだけなら簡単だ。


「矢筒、ありがとうございました。これは使えると思います」

 驚きから帰ってきた学ぶ赤が、うんうんと頷いている。


 そして、もう一つの品物を取り出した。


 こちらは蓋がされている小さな筒だ。これも周りが小動物の毛皮で覆われている。

「これは?」

「水筒なのです。この器は水を入れて持ち運ぶために作ったと聞いたのですが、ソラが持ち運んでいる様子がなかったので、もしかして割れることを危惧したのではと思ったのです。勝手ながら、割れにくくなるように毛皮で包んだのです」


 それは水筒だった。


 確かによく見れば、頼んだ水筒の形をしている。小動物の毛皮で保護されたことで割れにくくなっているようだ。


 これも自分が出かけている間に作ったのだろうか。


 ちょっと学ぶ赤の物作りの才能が怖い。


『ここまで作って貰うと壺作りを止めてくださいって言えなくなるね』

『なんじゃ、止めて欲しかったのじゃな』

『そりゃね。必要の無い作業は無駄だと思っていたから。でも、それが学ぶ赤さんのやる気に繋がるなら止める必要もないかな、って』


「ありがとうございます」

 銀のイフリーダとの会話を切り上げ、学ぶ赤にお礼を言う。


 こっちは頑張ってイカダを作ろう。

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