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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
竜の聖域

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058 日常

 目が覚める。


 シェルターから顔を出して外を見る。まだ朝日は昇っていないようだ。


 水瓶に入れておいた作り置きの水を飲み、焚き火を作る。昨日、食べ残した小動物の肉を炙り直し、食べる。


 ご飯を食べ、一息ついた後、今日の予定を考える。


 持って帰った木の処理と新しい水筒の作成。いくらあっても困らないレンガ作り、それに新しい骨の槍の作成も必要だ。

「やることは多いね」

『うむ。魔獣が活性化している今がマナ結晶の稼ぎ時なのじゃ』

 いつの間にか隣に来ていた銀のイフリーダがニヤリと笑う。

『そうだね。それも必要だよね……ところで二人は?』

『ほれ、あそこなのじゃ』

 銀のイフリーダが指さしている雨よけの下に二人の姿見えた。まだ朝が早いからかスコルも学ぶ赤も眠っているようだ。


『学ぶ赤さん、あんなにスコルのことを怖がっていたのに、寄り添うように寝ているよ』

 スコルは天然の毛皮を持っているので匂いと肌触りに目を閉じれば暖かくて気持ちよいのかもしれない。

『学ぶ赤さんがスコルを怖がらなくなったというよりも、スコルが学ぶ赤さんを相手にしていないことに気付いた、というのが正解かもしれないね』

『ふむ。どちらでも同じなのじゃ』

『うん、確かにそうだね』


 日が昇るまでの間、新しい骨の槍を作成することにした。石の短剣を叩きつけるように使って硬い骨の先端を削っていく。

 朝日が昇り、真上近くまで動いたところで雨よけの下で眠っていた二人が動き始めた。この時間まで起きないなんて、もしかすると昨日は夜遅くまで起きていたのかもしれない。


 削っていた骨を地面に置く。

「二人も起きたみたいだし、お昼ご飯にしようか」

 湖に沈めていた蛇肉を取り出し、そのまま表面を炙るように焼く。これはスコル用のご飯だ。

 自分と学ぶ赤の分は、朝に食べたのと同じ、昨日の食べ残しの小動物の肉だ。自分の分にだけは炙り直す時に乾燥させた赤い実の粉をまぶす。同じ味ばかりでは飽きてしまうからね。


 寝起きで、まだふらふらとしている学ぶ赤の前に炙り直した小動物の肉を持って行く。

「ああ、ソラ。申し訳ないのです。何か手伝うことは?」

 学ぶ赤の言葉に考える。

「えーっと、お昼ご飯を食べ終わったら、少し手伝って貰っても良いですか?」

「もちろんなのです」


 お昼ご飯を食べながら学ぶ赤と会話をする。

「ところで学ぶ赤さんは、これから――今後、どうするんですか?」

 これは聞こうと思って、結局、後回しにしていたことだ。


「とりあえずはソラを手伝うのです」

 学ぶ赤は少しだけ困ったような顔をしていた。

「えーっと、当初の予定だった、強大なマナを打ち破った存在のことは、もう良いんですか?」

 学ぶ赤が小さくため息を吐く。


「良くないのです。ただ、その存在に出会っても、情報を手に入れても、どちらにしても帰る手段が無ければ何も出来ないのです。何か良い方法が浮かぶまではソラを手伝うのです」

「帰る手段、ですか」

「そうなのです」

 学ぶ赤は困った顔のまま頷いている。


「歩いて帰るのは難しいんですよね?」

「湖を渡る以外の方法は考えられないのです」

「分かりました。僕も、方法を考えます」

 自分の言葉に学ぶ赤は大きく口を開けて驚いていた。


「学ぶ赤さんの里に行ってみたいですからね」

 そう言って学ぶ赤に笑いかける。学ぶ赤のお礼も楽しみだからね。

「助かるのです」

 学ぶ赤は真剣な表情で頭を下げていた。


 食事を終え、作業を再開する。

「学ぶ赤さんには粘土を使った土器やレンガ作りを手伝って欲しいです」

「任せるのです」


 まずは学ぶ赤に見本を見せる。


 粘土層から土を掘り起こし、湖の水と混ぜて粘土を作る。その粘土を棒状にこねて、丸め、積み重ねていく。新しい水筒の作成だ。

 用意していた四角い木枠に粘土を練り込み、表面を平らになるように削る。これを乾燥させれば四角いブロックになる。

「なるほど。土から作っているとは意外なのです」

 学ぶ赤は感心したように、こちらの作業を見ていた。


「これが水筒とレンガです。数が必要になるので沢山お願いします」

 学ぶ赤が頷く。


 日が昇っている間に昨日捌いた小動物の毛皮も干しておく。切り裂かれボロボロになっているものが殆どだが、それでも使い道があるかもしれない。


 最後に持ち帰った木の処理だ。


 石の斧を使い、無理矢理、枝を折っていく。折った枝は乾燥させて焚き火の燃料にする予定だ。

 枝を削り、ある程度、綺麗な形になったら折れた剣を使って木の皮を剥ぐ。これは片面だけ行う。全ての面の木の皮を剥ぐとなると、その作業を考えただけで嫌になる。上側部分だけが削れていれば充分だ。全て行う必要はないだろう。


 これで丸太の完成だ。


 木の処理を行っている途中で学ぶ赤を見る。そちらでは自分よりも綺麗な形の水筒が何個も作られていた。

「どれだけ綺麗な形に出来るか楽しくなってきたのです」

 学ぶ赤は何故か表面に綺麗な装飾を施し始めていた。意外と芸術家気質なのかもしれない。


「さてと、こちらの作業を続けるかな」

 次は丸太を切る作業だ。


 丸太を三等分にするため、三分割した位置に石の斧を叩きつけて目印をつける。目印の場所から広げるように、丸太を回転させながら石の斧を叩きつけ削っていく。時間のかかる地道な作業だ。

 丸太を三つに分け終えた頃には、空が赤く染まっていた。


「そろそろ夕ご飯の時間ですね」

 今日も一日が終わろうとしていた。

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