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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
竜の聖域

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055 力量

 東の森の奥へと向かう。


 一度襲撃を受けたことで、かなり警戒しながらゆっくりと奥へと向かったのだが、その後、小動物に襲われることはなかった。


 東の森の奥に入ったところで足を止める。

「ここでお昼ご飯にしましょう」

 小動物と戦ったからか、警戒しながらゆっくりと歩きすぎたのか、普段よりもかなり時間がかかってしまっている。


 薄暗い森の中で他に引火しないように気をつけながら焚き火を作る。持ってきた乾燥肉を炙り、水筒の水で喉を潤す。先ほど狩った小動物の肉を食べることも考えたが捌いている時間がもったいないので乾燥肉を食べることにした。

「はい。学ぶ赤さんもどうぞ」

 学ぶ赤にも乾燥肉と水を渡す。


「助かるのです。とても喉が渇いていたのです」

 学ぶ赤は嬉しそうに水筒の水を飲んでいた。


 食事を行っている横では、銀のイフリーダが何かに気付いたのか猫耳をピクピクと動かし周囲を見回していた。

『どうしたの?』

『うむ。魔獣の気配が濃いのじゃ』

『もしかして、さっきの襲撃もそうだけど均衡が崩れたから?』

『ふむ。そうかもしれないのじゃ』

 と、そこで銀のイフリーダが首を横に振る。

『いや、以前に倒した魔獣の代わりが生まれようとしているのかもしれないのじゃ』

『以前って、あの大蛇の? でも、最近までは安全だったのに……』

『うむ。強いものが倒れ、その後を継ぐものがいなければ、他から補充されるのが道理なのじゃ』

『それ、道理なんだ』

『うむ。ソラよ、魔獣の襲撃に注意するのじゃ』

『了解だよ』

 食事を終え、焚き火の火を消す。この森が燃えたら大変なことになるからね。


 周囲を警戒しながら森を探索する。お目当ては持って帰れる程度の手頃なサイズの木だ。


 木を探しているその途中で小さな赤い実を見つける。とりあえず、これも採取し背負い籠の中に入れる。小動物の肉と混ざってしまうが入れ物が一つしか無いので仕方ない。

『これ、持って帰って種を取り出したら栽培出来ないかな』

『ふむ?』

 銀のイフリーダは、栽培にはあまり詳しくないのか首を傾げている。

『あ、ごめん。独り言だよ。今は学ぶ赤さんがいるからね。あまり口に出すのはどうかと思って……』

『うむ。良いのじゃ』

 銀のイフリーダは笑って頷いている。


 そして、探していたサイズよりも微妙に大きいが使い道の多そうな木を発見する。太さは両手で抱えるほど、高さは自分の背丈の倍くらいだ。普段採取しているものよりも、太く背が高い。

 自分の後ろを歩いていたスコルを見る。スコルに協力して貰えば、持って帰ることが出来るかもしれない。そして、少し距離を取って歩いている学ぶ赤も見る。学ぶ赤に協力して貰うのは――いや、学ぶ赤に協力して貰ってもあまり変わらないかも。

「ガル?」

 スコルは首を傾げている。

「スコル、この木を持って帰るのに協力して貰ってもいいかな?」

「ガル」

 スコルは、その程度なら任せろ、という感じで頷く。


「学ぶ赤さん、危ないので少し後ろに下がってください」

 木を切り倒すために石の斧を振りかぶる。一撃、二撃。切り込みが入ったら、場所をずらし、また石の斧を叩きつけていく。半円を描くように木の周りを回って切り込みを深くしていく。


『ソラ、後ろに飛んで回避なのじゃ!』

 と、そこで銀のイフリーダの言葉が飛ぶ。木にめり込んでいた石の斧を手放し、すぐに後方へと飛び退く。


 何かが飛んでくる。


 見れば先ほどまで自分が居た場所の地面が深くえぐれていた。とっさに折れた剣を構える。


 何かが何かを飛ばしてきた?


「ガルルルゥ」

 スコルが威嚇するように吼える。


 そして、現れたのは大きなギョロッとした目を持った、人と同じくらいのサイズの蜥蜴だった。大きい。しかも、それが三匹だ。


「ガル」

 スコルが駆け出す。


 三匹のオオトカゲのうち、二匹がスコルの方へと向かう。残り一匹がこちらへとにじり寄ってきた。

 背後の学ぶ赤を見る。

「む。ヒトシュのソラ、まさか私をあれと比較して――竜と蜥蜴を一緒にするのは侮辱なのです」

「いえ、そ……」

『ソラ、前じゃ!』

 学ぶ赤に違うと弁解しようとしたところで銀のイフリーダの言葉が頭に響いた。


 折れた剣を構え、前を見る。何かが飛んできている。


 とっさに折れた剣で受ける。


 それは水の固まりだった。折れた剣で受け止め――受け止めたまま吹き飛ばされる。折れた剣を構えたまま跳ね飛ばされ、森の中を転がる。

 視界が回る。


「なんて、勢い……」

 目が回った、頭がふらふらする状態で無理矢理起き上がり、折れた剣を構える。急がないと次が来る。


「ヒトシュのソラ! 逃げるのです!」

 そして、そんな自分の前には、こちらを庇うように立っている学ぶ赤の姿があった。


 学ぶ赤の背中に水弾が突き刺さる。

「ぐっ」

 水弾が当たるたびに学ぶ赤の体が大きく揺れる。それでも、こちらを庇うように、守るように立っている。自分を吹き飛ばすほどの威力の水弾だ。何発も耐えられるはずがない。


「早く逃げるのです!」

 学ぶ赤はこちらを庇ったまま動かない。


 スコルは二匹の相手で動けそうにない。早く、何とかしないと……。


『イフリーダ、お願い』

『うむ。任されたのじゃ』

 銀のイフリーダが背中から腕を回す。


 そして、体が勝手に動いた。


 背を低くし野生の獣のように駆ける。一瞬にして学ぶ赤の前へと周り込む。

「ヒトシュのソラ、あなたの手に負える魔獣ではないのです」


 オオトカゲの口から水弾が飛んでくる。


 それを折れた剣で打ち払う。


 オオトカゲの口から次々と水弾が飛んでくる。まるで散弾銃だ。


 次々と飛んでくる水弾を折れた剣で打ち落としていく。先ほどは跳ね飛ばされたのに、その威力がまるで無くなったかのように切り払い、打ち落とす。

 そして駆ける。


 目の前のオオトカゲを目指し駆ける。飛んできた水弾は打ち落とす。背後には学ぶ赤がいる、回避は出来ない。

 オオトカゲの目の前、そこで折れた剣を下げ、まるで鞘に収めたかのように剣先を後ろに下げ構える。

『神技アルファクラスター』

 銀のイフリーダの言葉とともに、折れた剣が抜き放たれる。


 無数の刃が放たれ、目の前のオオトカゲを細切れの肉塊へと変えていく。


 振り返り、驚いた顔でこちらを見ている学ぶ赤の元へと駆け寄る。

『火の神法リヴァイヴ』

 円を描くように腕が動く。


 学ぶ赤は一瞬にして激しい炎に包まれ、そして火が消えた時には、水弾による傷が消えていた。

「ヒトシュのソラ、これは? 私の傷が消えたのです」

 学ぶ赤の顔は驚きすぎたのか少し引きつっている。


『うむ。マナに余裕があって良かったのじゃ』

 銀のイフリーダが背中に回していた腕をほどき、そこからぴょんと飛び降りる。


 スコルは、まだ二匹を相手に戦っているようだが、自分のように苦戦はしていない。このまま任せても普通に倒しきるだろう。

『イフリーダの力を借りないと僕はスコル以下なんだね』

『ふむ。それは仕方ないのじゃ。ソラはまだまだ成長の途中なのじゃ』

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