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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
禁忌の森

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042 出発

 ぐちゃぐちゃの地面を歩き、火が消えた窯の中に筒状の土器を入れる。

「数があるから、二回に分けて行うかな」

 窯で土器を焼く。


「ガルル」

 と、そこでスコルの声が聞こえた。


 見れば、スコルが、異臭を発し、さらに雨に濡れて見るも無惨な姿になっている蛇肉を食べようとしているところだった。

「待った、待った! スコル、待って」

 見るからにヤバそうな感じしかない蛇肉に噛みつこうとしていたスコルの動きが止まる。

「スコル、それ、食べて大丈夫なの?」

「ガル」

 スコルは少しだけ首を傾げ、不安そうな表情で小さく吼えていた。

「スコル、それは焼いても、もう無理かな」


 スコルが食べようとしていた大蛇の残りを全て湖に沈めた。スコルが少しだけ悲しそうな表情をする。

「腐った物を食べるとお腹を壊すよ」

「ガルゥ」

 スコルはしぶしぶという感じで小さく頷いていた。


 湖に沈めた蛇肉を取り出し、それを塊のまま焼く。


 表面が焼けたところで蛇肉を取り出す。

「スコル、これを食べなよ」

「ガル」

 スコルは小さく頷き、そのまま焼けた蛇肉の前でしゃがみ込む。肉が冷めるのを待つようだ。どうもスコルは極度の猫舌らしい。


 スコルの食事を作り終え、その後は骨の槍を使って突きの練習を行うことにした。

 森の方を見る。雨で地面がぬかるんだ中を進み、採取に向かうのは止めておくべきだと思ったからだ。

「それに必要になりそうだからね」


『うむ。体を作っておくことは大事なのじゃ』

 いつものように、いつの間にか足元にいたイフリーダも腕を組み、うんうんと頷いている。

「そうだね」

『うむ。マナに頼らない力を持つのは必須なのじゃ』

「そうだね。イフリーダに頼り切っていたら駄目だもんね」

 そこでイフリーダは少しだけ不思議そうな表情で首を傾げ、すぐに顔を戻し、ニシシと笑っていた。


 訓練の後、焼いた土器の確認をする。


 一回目は全てひび割れて失敗。乾燥させる時間が足りなかったのか、雨が悪かったのか、原因は分からなかった。


 二回目、残った六個全てを焼く。


 こちらは殆どが綺麗な状態で焼けていた。

「うん。見た目は全て成功だね」


 一個目は軽く叩くとヒビが入った。

 二個目は水を入れると水が漏れた。

 三個目も同じように水が漏れた。

 四個目で問題無く水がたまった。

 五個目も問題なし。

 六個目は水を入れるとひび割れて砕けた。


「十二個作って、成功したのが二個か。意外と成功した方なのかな」

 でも、と考える。


 不思議なことに、後の方が成功率が高い気がした。

「焼き方に慣れたから?」

 他に理由が思いつかない為、そう思い込み、とりあえず納得することにした。


 完成した筒状の土器に何度も水を入れ、捨てるを繰り返す。捨てた水の色が変わったり、土が混じったりするようなことはない。

「うん、これなら使えそうだ」


 余った木の棒を折れた剣で削り、栓を作る。そして、小さくなっている筒状の土器の口にはめ込む。

「これで完成だよ」

『ソラよ、それは水入れなのじゃな!』

「うっ、うーん」

 イフリーダの言葉に、少しだけ自分の言葉が詰まってしまう。

「確かに水を入れる物だけど、これは水筒代わりだよ。こうして、っと」

 腰紐に結びつける。

「これで、水を入れて持ち運べるよね。もちろん、土製だから、激しい運動をしたり、転がったりしたら割れてしまう可能性はあるけど、他に水を運ぶための手段が思い浮かばなかったからね」


 これで水を持ち運べる。


 遠出するための準備が完了だ。


「さて、と。明日は少し早く起きるから、今日はもう眠るね」

 まだ、これから夕方というような時間だが、眠ることにする。


 シェルターの中に入り、膝を抱えてうずくまる。


 ――明日は、いよいよ、だ。


 目を閉じ、暗闇に落ちていく。


 ……。


 ……。


 夢。


 また、あの夢だ。


 石の都。


 同じ場所、同じ光景。


 もう、これが夢だと気付いている。


 青年が叫び、少女が嘆く。


 同じだ。


 しかし、今までと少しだけ違うところがあった。


 青年は、こちらを指さして叫んでいる。それは怒りと悲しみの叫びだ。


 青年の手には剣があった。


 その剣を知っている。


 何処かで、何処かで……。


「何処かで!」

 と、そこで目が覚めた。


 シェルターから顔を出し、外を確認する。

「薄暗い……」

 まだ日が昇り始める前のようだ。少しだけ肌寒い。


 焚き火に火を点け、湖から蛇肉を引き上げる。


 薄く切った串焼きと蛇肉の塊を丸々焼いたものを作る。塊を丸々焼いた物はスコルのご飯だ。


「ガル」

 焚き火の火がまぶしかったのか、丸くなって眠っていたスコルも起きたようだ。

「スコル、ご飯だよ。冷めてから食べてね」

「ガルル」

 簡単な食事を終え、出発のための準備を行う。


 手には折れた剣と骨の槍を持ち、蛇皮の袋を背負う。その袋の中には金属製の兜と乾燥させた赤い実、燻製肉、火起こし用の金属片と石を入れている。

 腰には石の短剣、煮沸した水を入れた水筒を差している。水筒は一つだけ持っていくことにした。もう一つは、これが壊れた時のための予備として拠点で保管することにした。


「これで準備完了だ」


 自分の予想としては、これで三日は過ごせるはずだ。


「探索範囲は広げる。でも、無理はせずに戻ってくる」


 さあ、石の道の奥へ出発だ。

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