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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
禁忌の森

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041 台

 若木を削り無駄な枝を落としていく。何度も行っているので、この作業も慣れたものだ。以前、持ち帰った物よりも太さがある分、長さが無い。長いものでも1メートルくらいの長さだ。


 十二本の木の棒を作成し、そのうちの六本を半分に折る。半分に折った木の棒の四つの真ん中部分を少しだけ削る。そこに半分のサイズの木の棒と元々のサイズの木の棒を結びつける。縦棒と横棒の三つを組み合わせ、横側の先にさらに半分のサイズの木を縦向きに結びつける。その縦棒と元のサイズの木を横向きに結びつける。さらに、その先に半分のサイズにした木の棒を縦向きに結びつけ、その縦棒に半分のサイズの木の棒を横向きに結びつける。


 そうやって四隅に縦向きに結びつけた半分の木の棒と、その半分くらいの高さに、長方形の四角い枠が結びついたものを作る。


 四角い枠は四隅の縦向きの木の棒だけでしっかりと自立している。揺らしてみたり、体重をかけてみたりするが、ずれたり、壊れたりする様子は無い。

「うん、結び目も(ほど)けそうにないし、重いものも支えてくれそうだ」

『ふむ。ソラが、また何か作っているのじゃ』

 いつの間にか猫姿のイフリーダが足元に立っていた。二本足で立ち、腕を組んでうんうんと唸っている。


「そうだね。雨で予定の行動が出来ないから、以前から作ろうと思っていたものを、ね」


 四角い木枠の上に元々のサイズの木の棒をのせていく。乗せて、これも結びつける。


 乗せた木の棒に体重をかけて押さえ込んでみる。こちらも歪んだり、折れたりする様子は無い。

「本当は木の板が欲しいんだけどね。木の板が加工できたら良かったのにね」

 周囲が森に囲まれているだけあって、木は沢山ある。だけど、大きな木を切り倒すための道具も無ければ、切り倒した木を運ぶ道具も無い。そして一番大切な、木の板に加工するための道具が無い。


 無い、無い、無い。


 木の板に加工出来れば、今、自分が作っているようなものの殆どが――環境が改善する。

「素材はあるのに、ね……」


 雨は降り続けている。


『して、ソラよ。結局、これは何を作っていたのじゃ』

「ベッドだね。うーん、正確にはベッドにしようと思ったもの、かな。試してみた感じ、自分が上に乗っても大丈夫だと思うんだ」

『ふむ。ならば大丈夫だと思うのじゃ』

 首を横に振る。

「このままだと背中が痛くて眠ることが出来ないよ。今のままだと、物を乗せる台でしかないね」

 ベッドの完成は何かふかふかの毛皮でも手に入れてから考えよう。と、そこで丸くなっているスコルを見る。

「天然物はゴワゴワだね」

 丸くなっているスコルは薄目を開け、ちらっとこちらを見て、すぐに目を閉じる。今、作成した雨よけの半分近くを埋めているベッドが邪魔そうだ。

 さすがにスコルが乗ったら壊れそうなので、少し窮屈なのは我慢して欲しい。


 ベッドもどき――ベッドの土台だけとも言う、を作り終えたが雨は止みそうにない。他に何か出来そうな作業も無いので、その日は、もう眠ることにした。早めの休息も必要だ。


 雨の中、シェルターまで駆け、すぐに中へと入り、膝を抱えて丸くなる。さすがに、いくら雨よけが雨を防ぐことが出来ると言っても吹きさらしになっている場所で眠る気にはなれなかった。足元が石でゴツゴツしていて痛いしね。


 眠る。


 ……。


 ……。


 そして、目が覚める。


 シェルターの中から顔を覗かせ、周囲を確認する。


 日が昇っていないからか、周囲は、まだ薄暗い。

「でも」

 雨は止んでいるようだった。夜の間に去ってくれたようだ。


 まだいつもの時間には少し早いが、このまま起きることにする。シェルターの外に出て大きく伸びをする。


 ぬかるんだ地面に気をつけながら湖まで歩き、顔を洗う。そのまま湖に沈めていた蛇肉を回収し、昨日と同じように調理する。

 蛇肉を薄く切り、それに乾燥させた小さな赤い実を砕いてまぶす。後は、木の枝の串を通して焚き火で炙るだけだ。


 しかし、その肝心の焚き火になかなか火が点かない。

「雨で濡れてしまっているので仕方ない、か。どうしよう」

『ソラよ、そこで神法ファイアトーチなのじゃ』

 いつの間にか足元に来ていたイフリーダの言葉。しかし、考える。


「うん。そうだね。それが出来れば……どうしても上手くいかないんだ」

 神法ファイアトーチは何度か試しているが、上手く使えない。何も無いところから火を生み出すというイメージを自分が上手く想像出来ないのが原因かもしれない。

『ソラよ。ならば我が見本を見せるのじゃ』

 さっそく神法を使おうとしたイフリーダに待ったをかける。

「うーん、ちょっとマナ結晶がもったいないから、今度にしようかな」

 自分のわがままだとは思うが、出来ればイフリーダの力はいざという時のために取っておきたい。


 窯の方まで歩き、窯の中に小さな火を点ける。その火を濡れた木の枝の先に、乾かしながら移し、焚き火まで持って行く。そこから大きな火にしていく。濡れていた枯れ枝や落ち葉が燃えて沢山の水蒸気が生まれている。そこに蛇肉の串を刺し、炙る。


「さあ、昨日はしっかりと味わえなかった蛇串だ」

 しっかりと炙ってから食べた蛇肉は、ピリッと辛く、そこそこ刺激的だった。

「うん。湖に浸けていた蛇肉の方も問題無く食べられる」

 味は――うん、とても刺激的だった。


 食事を終え、考える。

「さあ、今日はどうしようか」


 雨で地面がぐちゃぐちゃになっているため、土器やブロックを作ることは出来ない。粘土状の土を掘り出していた穴は雨水がたまって池みたいになっている。当分の間、粘土を掘り出すことは出来ないだろう。


「はぁ」

 一つ、大きなため息を吐き出す。


「まずは窯で筒状の土器を焼こう」

 幸い、窯に火は点く。それに雨よけの下には乾燥だけを行った土器や四角い粘土がある。焼く物には困らない。


「湖があって、飲み水には困らないから、雨は害しかないね」

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