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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
禁忌の森

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040 袋

 結局、筒状の土器は十二個作成した。途中から作る作業に慣れ、楽しくなって、ノリノリで作り続けてしまった。

 その筒状の土器たちを天日干しにし、窯では乾燥させていた四角い粘土を焼く。レンガはレンガでまだまだ必要になるからだ。


「さて、と。後は、昨日できなかった採取に向かうよ」

 石の斧、折れた剣を手に持ち、石の短剣を腰に差す。そして籠を背負う。採取の為の準備が完了だ。

「ガル」

 丸くなっていたスコルが、暇つぶしだからな、という様子で立ち上がる。スコルもついてきてくれるようだ。


 そこそこの警戒を行いながら東の森へと向かい採取を行う。


 石の斧で若木を切り倒し背中の籠に入れ、木に巻き付いていたツタを石の短剣で切って、これも背中の籠に入れ、折れた剣で木の皮を剥ぎ、やっぱりこれも背中の籠に入れる。


 籠がいっぱいになったところで拠点へと戻る。


 今回、採取したのは若木が十二本、長めのツタが三つ、木の皮が二枚だ。前回よりも少なめになっているのは少し太めの若木を選んだのと、木の皮がかさばってしまったからだ。

 採取したものを雨よけの下に並べておく。これを使っての作業はまた今度にしよう。


「あ、でも、木の皮の処理は行った方がいいね」

 木の皮をさらに手頃なサイズに切り取り、捻りながら束ね、編んで紐状にしていく。木の皮から丈夫な編み紐を三本ほど作成する。


 次は蛇皮の加工だ。


 大きな蛇皮を一枚と細長い紐状に切り取った蛇皮の紐を使う。横に細長い蛇皮を折れた剣で半分に切り取る。やはり、切り口はガタガタになってしまうが、細かいことは気にしない。こんな道具の揃ってない状況で完璧なものが作れるはずが無いからだ。


 切り取った蛇皮の左右に折れた剣を突き刺し、点線のように穴を開けていく。左右両側が終わったら、今度は上下も穴を開けていく。

 裏返した状態で端と端を重ね、穴に蛇皮の紐を通して縫っていく。もちろん紐は抜けないように球は作った状態で、だ。

 次に重なっている下側も蛇皮の紐を通して縫う。


 これを裏返せば大きな袋の完成だ。


 袋の口が締められるように、上側に開けておいた点線状の穴に木の皮で作った編み紐を差し込んでいく。この状態で木の皮の編み紐を引っ張れば口が締まるはずだ。

「む?」

 左右の紐を引っ張る。しかし、上手く締まらない。


「むむむ」

 蛇皮が固いからか、口を締めるのに結構な力が必要になり、思いっきり引っ張った状態でも完全に口が締まりきらない。

「不格好は不格好だけど、使えないわけじゃ無い」

 それに使い続けるうちに皮が慣れるはずだ。


 その大きな袋の中央に等間隔になるよう四カ所の穴を開け、そこにも編み紐を通す。上下の穴に一本の編み紐を通し結んで輪にする。それをもう一個。これで、この袋を背負うことが出来る。背負い籠の時の教訓から、肩に当たる場所には蛇皮を巻き付けておいた。柔らかい毛皮では無いが、それでも紐が肩に当たった時の痛みを軽減してくれるはずだ。


 これで完成だ。


 蛇皮の背負い袋が完成した頃には、空が紅く染まっていた。


「もう今日も終わりだね」

 その日の作業を終え、眠ることにする。


 いつものようにシェルターの中で膝を抱えて座り込み、目を閉じる。


 眠る。


 ……。


 ……。


 そして、差し込んできた朝日の明るさに目が覚める。


 今日は、あの不思議な夢は見なかったようだ。

「良かったよ」

 ほっとため息を吐く。あんな夢を毎日繰り返し見せられても気が滅入るだけだ。


 シェルターの外に出て大きく伸びをする。そのまま顔を洗い、朝食の準備を行うことにした。


「よし!」

 今日は湖に沈めた蛇肉を調理する。


 湖から蛇肉を引き上げる。包んでいた蛇皮をほどき、中を確認する。中の肉はひんやりと冷たく腐っている様子は無い。

「うん、形も大丈夫」

 蛇皮に包んでいたのが良かったのか、魚に囓られてはいないようだ。


 蛇肉を薄く切り分け、残った塊は、蛇皮に包んで湖に沈める。


 切り取った蛇肉に乾燥させた赤い実の粉を振りかけ、木の枝の串を通す。後は焚き火で炙るだけだ。


 その途中で、丸くなって眠っていたスコルが、何かに気付いたように跳ね起きた。そして、その起きた動作とは対照的な緩慢な動きで雨よけの下へと歩いて行く。

 雨よけの下まで辿り着くと、大きな欠伸を一つ、また丸くなった。


 ……。


「嫌な予感がする」


 空を見る。


 空は急速に曇り始めていた。


 慌てて周囲を確認する。


 作ったレンガも乾燥途中の四角い粘土や筒状の土器は雨よけの下だ。昨日、採取したものも雨よけの下に保管しているので、大丈夫なはずだ。


 焚き火の火で蛇肉を炙っている途中で、ポツポツと空からしずくが落ちてきた。

「嫌な予感が的中だよ。最近は雨が降っていなかったのに!」

 焚き火の火が消えるまで雨を無視して蛇肉を炙り続ける。しっかりと火が通ったと思ったところで蛇肉を取り、雨よけの下に退避した。


 雨の勢いは、強く、激しくなっていく。


「はぁ」

 雨足が強くなった中、囓った炙り蛇肉は雨の味がした。

「はぁ」

 ため息しか出てこない。


 簡単な食事を終え、雨よけの状態を確認する。葉っぱを何枚も重ねただけの屋根だが、しっかりと雨を防いでくれている。雨水が当たっている嫌な音は続いているが、雨水が漏れたり、滴ってきたりするような様子は無い。

 これなら台風などの強風が吹かない限りは大丈夫だろう。


「でも、だよ……」

 今日行おうと思っていた窯での焼きは諦めることにする。窯なので火を点けることは出来ると思うが、焼きで失敗しそうだからだ。

「はぁ、仕方ない。今日は、この雨よけの下で若木の加工を行おうかな」

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