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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
禁忌の森

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004 火

 空が紅く燃え始める。


「もう夕方か……」

 赤々と燃えている焚き火に湿気った木の枝を入れる。普通は燃えないはずの湿気った木の枝ですら飲み込み、燃料として焚き火の火力を上げる。これだけ強く燃やしていたら、明日の朝までもつかな?


 そして日が落ちる。

「ふぁ……」

 暗闇の中、焚き火の明かりだけが周囲を照らす。そんな中、気が緩んだからか、欠伸が漏れる。

『我が用心しよう。ソラは安心して眠るのじゃ』

「ふぁう、ありがとう、助かるよ」

 銀の少女の言葉に甘える。


 銀の少女の言葉を信じる。


 座った姿勢のまま、頭を下げ、目を閉じる。焚き火の熱を感じ、ぬくもりながら深く深く意識を手放していく。疑いを持つことなく、銀の少女を信じて眠りにつく。


 ゆっくりと眠る。


 深く眠る。


「はっ!」


 そして、朝日のまぶしさと震えを覚えるほどの寒さに目が覚める。


「ここは?」

 周囲を見回す。


 そこには代わり映えのしない森と湖があった。


 ああ、そうだ。気がついたら見知らぬ森に居たんだった。


 見れば焚き火の火が消え、燃えかすだけが残っていた。

「なるほど寒いと思ったよ」


 あれ?


 違和感を覚え周囲を見回す。


 そこに銀の少女の姿がなかった。


 寒さで動きが重くなった体に力を入れ立ち上がる。座った格好で眠っていたからか、体の節々が痛い。


 やはり銀の少女の姿は見えない。

「どこ?」

 銀の少女の名前は何だったろうか?


 確か……、

「イフリーダさん、どこ!?」

 もう一度、周囲を見回す。銀の少女――彼女の存在は、極限状態の自分が見た夢か幻だったのだろうか? 不安に思いながらも腕に確かな感触を覚え、そして自分の腕を見る。腕には銀の腕輪があった。これがあるということは夢ではない。


 まさか、森の方へ?


『ここじゃ、ここじゃ』

 と、そこで頭の中に銀の少女の声が響いた。

「え?」

『ソラの足元じゃ』

 思わず見た、その足元には銀色に輝く美しい毛並みを持った猫が居た。つやつやと輝いている。

『我じゃ』

 銀の猫がこちらを見る。

「まさか、この猫がイフリーダさん?」

『イフリーダでよい。よいよい、我とソラの仲なのじゃ』

 銀の猫が片目を閉じニヤリと笑う。

「えーっと、イフリーダさん、なんで猫に?」

『ソラよ、イフリーダで良いのじゃ。して、我のこの姿じゃな。省エネモードなのじゃ』

「省エネモード?」

『消費エネルギーを抑えた体に優しい体型なのじゃ!』

「いや、まぁ、うん、言おうとしていることは分かるよ。そういうことじゃなくて……」

『ソラは考えすぎなのじゃ』

 銀の猫が片手を上げて楽しそうにしている。

「いや、うん。君がいるなら、それでいいよ」

『そうなのじゃ。ちょっと力を使いすぎたのでエネルギーを蓄える期間に入ったのじゃ。少しの間、力が使えないと思って欲しいのじゃ』

「あの火を起こすような、そんな力は無理ってことだよね?」

『そうなのじゃ』

 猫の姿をした銀の少女は前足で顔を洗っている。

『さて、ソラ。今日はどうするのじゃ?』


 猫の姿をした銀の少女の言葉を聞き、今日の予定を考える。

「まずは食事と眠る場所の作成かな」

 食事は大事だよね。


 そして重要なことを思い出す。焚き火の火が完全に消えている。


 火が消えてしまっていたのは残念だ。何か、すぐに火が点けられるような装置や仕組みを作るか、それとも火が消えないようにするための仕組みを考えるべきか。

「何にしても火かな」

 朝は寒い。毎回、こんな状況で寝起きをしていれば、次は目が覚めない眠りについてしまうかもしれない。

『ふ、ふむ。火、か』

 猫の姿をした銀の少女は少しだけ気まずそうに横を向いていた。

「昨日の力は使えないんだよね?」

『うむ。少し待って欲しいのじゃ』

「うん、大丈夫だよ。もとから自分の力で何とかしないと駄目だったことだから」

 火が消えてしまったことについて銀の少女を責めるつもりはない。どのみち、雨が降っていたら消えていたような火だ。それに、もともと彼女が作ってくれた火だしね。

「火だねを作らないと食事の用意も出来ないか」

 それに昨日、長めの木の枝をそのまま使ってしまったのも悔やまれる。あれほど都合の良い長さの木の枝が、そう何度も手に入るとは思えないからだ。短めの木の枝に刺し替えて火に炙るべきだった。疲れていたからか、焦っていたからか、手間を惜しんだ故の失敗だ。


「まずは木の枝を集めよう」

 森に入り、ある程度乾いた木の枝を集めていく。やはり、ちょうど良い長めの木の枝は落ちていないようだ。最悪、生えている木から切り落とすしかない。でも、この辺の木から伸びている枝は曲がっているからなぁ。尖らせて木の槍にするには難しいかもしれない。森を探索して細長い木が生えていないか探すべきだろうか?


 両手で抱えるくらいの木の枝を持ち、湖の側へと戻る。


 そして、10本ほどの木の枝の先端を尖らせる。その際に出た木くずを集める。木の枝の一つを取り、その中央を削る。そして、少し切れ込みを入れる。そこに尖った木の枝をあてる。確か、摩擦熱で火が起きたはずだ。

『何をしておるのじゃ』

「ちょっと火をおこそうと思ってね」

 両手で尖った木の枝を挟み、回す。必死に回す。何度も繰り返すと尖った木の枝が地面に置いた方の木の枝を貫通した。火は……起きない。

「何か間違っていたのかな」

 困った。非常に困った。もっと簡単に火が起きると思っていた。自分の知識では、これで火がおこるはずだった。

「仕方ない」

 他の方法を考えよう。


 ふと折れた剣を見る。これで火打ちが出来ないだろうか? いや、何の金属を使っているか分からない、この折れた剣で出来るとは思えない。


 ん?


 そうだ、金属の鎧があった。あちらならどうだろうか。


 バラバラに散らばっていた金属の鎧だったものを見る。そこには一緒に中身だった骨も転がっていた。最初の時は凄く怖かったのに――見るだけで不安をかき立てられていたのに、今は何も感じない。近くに銀の少女がいるからだろうか。まぁ、今は猫の姿になっているんだけどね。


 飛び散っている金属片の一つを取る。なんとなく、何とかなりそうな気がする。


 木の枝の削りかすを集め山を作る。その下で金属片を持ち、落ちていた固めの石を叩く。勢いをつけて叩くとカチッと火花が飛ぶ。

「うん、何とかなりそうだ」


 何度も、何度も、金属片で石を叩く。


 すると木くずから小さな煙が上がり始めた。

「やった火だ」

 空気を入れ、火種が消えないように気をつけながら火を大きくしていく。火が大きくなったところで木の枝や落ち葉を入れ、焚き火を作る。


「暖かい」

 朝の寒さで冷え切ってしまった体が暖まりほぐれていく。


『ふむ。人には火が必要なのじゃな!』

 足元の銀の猫がそんなことを言っていた。

「そうだね。後は食事かな」


 次は食べる物だ。

火起こしスキル LV1

ずっとこんな感じです。

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