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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
禁忌の森

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039 先

 石畳の道を進む。


 滅びを感じさせる、まばらに残った石の壁。


 森の中に石の残骸が続いていく。


 そして、その石の残骸の影から骨の犬が姿を現す。

「また!」

 骨の槍を構える。

「でも! 良い練習相手だよ!」

 先ほどと同じだ。


 現れた骨の犬が頭を下げる。飛びかかってくる動作の予兆だ。その動きを捉え、動きの先を予測し、骨の槍を突き出す。

 空気を切り裂くような音ともに放たれた鋭い突きは、飛びかかってきた骨の犬の中にある赤い塊をしっかりと捉え、貫いた。

 骨の犬がバラバラになる。

『うむ。その調子なのじゃ』

「うん。このスケルトンドッグって、動きが単調だから、予測がしやすいよね。それで助かっているよ」

 考えるための頭が無く、骨だけなので、機械的に動いているのかもしれない。

「ただ、マナ結晶を持っていないのは残念だよね。残ったものが脆い骨だけでは、何かに活用することも出来ないよ」

『ふむ。このスケルトンドッグもわずかながらマナは持っているのじゃ。ただ、結晶化したものを落とさぬだけで、そのマナはソラに吸収されているのじゃ』

「え? そうなんだ」

『うむ。しかし、生き物に取り込まれたマナは神殿でなければ取り出すことが出来ないのじゃ。そのうち吸収され馴染んでしまったマナは奉納することも難しくなるのじゃ』

「神殿かぁ。神様を祭っているところだよね」

『うむ』


 骨の犬を倒し、探索を再開する。


 しかし、その後、特に目立つような成果は無かった。人々の生活跡から、何か役に立つ道具でも見つからないかと思ったが、あるのは石の壁、その残骸だけだった。

「何でだろう? ここで人が生活していたのは間違いないはずなのに」

 腕を組み考える。

「もしかして、そういった道具が土に帰るくらいの年数が経っている?」

 どれだけ考えても分からない。首を横に振り、思考を中断する。


「帰ろう。これ以上、先に進むと今日中に拠点に戻るのが難しくなるからね。真っ暗な闇の中、明かりも無しに森の中を移動するなんて考えたくないよ」

『うむ。了解なのじゃ』

「でも、生き返って襲ってきたのが犬だけで良かったよ。これで人も居たら……あまり考えたくないよね」

『ふむ』

 二本足で立ち上がっている猫姿のイフリーダは腕を組み、難しい表情でこちらを見ていた。

「どうしたの?」

『いや、うむ。ソラよ、戻るのじゃ』

「そうだね」

「ガル」

 スコルはやっと戻るのか、という感じで小さく欠伸をしていた。周囲に危険が無いと確信しているのか、かなりくつろいだ姿だ。


 草木に隠され分かり難くなっている石畳の道を、それでもそれを頼りに、来た道を戻る。


 途中、一度だけ振り返り、石の道を、その先に続くであろう石の都を見る。

「この先に進むのは、もっと……うん、しっかりと準備をしてからだね。野宿することになるだろうから、食べ物と水が必要だ。後は……寝袋かな。快適に眠るために、だよね。でも、それは拠点でも作れていないんだから、高望みし過ぎかな」


 石畳の道が終わり、大蛇と戦った森まで戻ってくる。薄暗い森の中に差し込んでいる陽射しはかなり弱くなっている。急いだ方が良さそうだ。

「はぁ、帰りに採取を行うつもりだったのに背負い籠は邪魔になっただけだったね」


 拠点へと戻った頃には完全に日が落ちていた。

「ギリギリだったね」

 暗闇の中、記憶を頼りに、手探りで焚き火の残骸を探し、火を点ける。


 その日は、夜食代わりに天日干しの蛇肉を焼いて食べ、眠ることにする。


 シェルターの中に入り、膝を抱え、その中に頭を沈める。


 目を閉じる。


 眠りに落ちていく。


 そして、夢を見る。


 ……。


 何処か、ここではない場所。


 石の都、見知らぬ見覚えのある場所。


 そこに居るのは青年と少女。


 青年が叫び、少女が嘆く。


 繰り返される出来事。


 そこで目が覚めた。


「同じ夢? 何で?」

 昨日とまったく同じ夢だ。やはり青年と少女の姿はもやに包まれ分からない。

「思い出せない自分の記憶に、そこに何か答えがある? ……でも」

 そこで頭を振り、深く思考の海へと落ちそうになっていた自分を覚醒させる。


 まずは生きるためのことが優先だ。生きることが出来て初めて考えることが出来る。


 シェルターの外に出て、大きく体を伸ばし、息を吸い、吐き出す。

「今日も頑張ろう」

『ふむ。今日はどうするのじゃ』

 いつものように、いつの間にか足元に猫姿のイフリーダが立っていた。


「今日はね、と、その前に、食事にしよう」

 お昼は真っ黒になるまで焼いた蛇肉を削って土鍋の中に入れ、赤い実と一緒に煮込んだだけのスープだ。

「美味しいとは言えないけど、癖にはなるよね」


 食事の後は、いつもの日課を行う。


 そして、次に行ったのは土器作りだ。


 作るのは先が細い壺のような形状の土器だ。


 粘土を紐状に伸ばし、それをぐるぐると巻き、上に重ねていく。徐々に先の方を細くしていくのだが、どうしても、その途中で形が崩れてしまう。

「むむむ。やっぱりろくろが無いと無理なのかな」

 作る形状を変え、細長い筒状にする。手のひらよりも少し大きいくらいの長さの筒だ。その上部分を閉じ、小さな口を開ける。

「これで我慢するしかないか」

 あまり納得のいく形にはならなかったが、妥協することにした。


 同じようなものを何個も作る。

『ふむ。沢山作るのじゃな』

「うん。焼いている途中で何個か壊れてもおかしくないからね。それと、使用用途を考えると沢山欲しいんだ」

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