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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命
348/365

343 ここは全て謎ばかりだ

 この黒いマナの池は必ず何とかする。でも、今は魔王とスコルだ。いや、待っているのは魔王とスコルと無の女神の三人か。まずは、そちらを何とかしないと……。


 螺旋階段を見る。


 上の階へと続いている。


 黒いマナの影響なのか、この宮殿の中ではあまり遠くまでマナを見通すことが出来ない。この上で待っているのが何か分からない。


 だけど……。


『もう大丈夫です。行きましょう』

「早く行くのです」

 螺旋階段の前には、次の国が待っていた。まるで、こちらのマナの声が聞こえているかのようなタイミングだ。それだけ早く魔王を倒したいのだろう。


 レーム、真っ赤な猫と頷きあい、螺旋階段を上る。


 二階――そこには何も無かった。何も無いがらんとした空白の階層。この階に用はない。


 そのまま三階へと上がる。


 そして三階層。そこには錬金小瓶や良く分からない器具が並べられていた。何かの実験を行っていた階層なのかもしれない。当然だが、二階層よりも狭くなっている。外から見て分かっていたことだが、上に行けば行くほど狭くなる。


 四階層に上がる。部屋はさらに狭くなる。ここには何か良く分からない管が――配管が上の階層へと伸びていた。


 ……。


 ここまで誰にも出くわさない。


 魔獣が出ないのはもちろんだが、スコルにも、無の女神にも、そして配下になった人にも出くわさない。

 魔王やスコル、無の女神が居るのはもっと上の階層なのだろう。だが、他の人たちはどうなのだろうか?


 この宮殿に入るのは大変だ。あの黒いマナで創られた透明な壁が宮殿と外の世界を別けている。まるで全てを拒絶する壁だ。


 ……魔王はあまり人を信用していないのかもしれない。


 にしても、だ。


 魔王はここで何をしていたのだろうか?


 魔獣を作る実験をしていた? それは何か違う気がする。それに、あの黒いマナの池だ。あれが外の透明な壁を作る材料になっていた? それだけではない気がする。あれは、とても邪悪で危険なものだ。


 分からない。


 五階層に上がる。ここも先ほどの階層と同じく上に伸びる配管しか存在していない。上から何かが、この配管を伝って落ちている? それとも何かを上に送っているのだろうか?


 ……何か?


 考えられるのは、あの池のようになっていた黒いマナしか考えられない。


 ……。


 でも、二階層には何も無かった。配管も無かった。そこで途切れてしまっている。


 分からない。分からないことばかりだ。


 全ては魔王に会えば分かるのだろうか。いや、素直に答えるとは限らない。


 それに、だ。


 分からなくても――全てに答えが出なくても関係ない。僕がやることは魔王を倒すこと、それだけだ。


 六階層。ここも配管の部屋だ。もうかなり上まで登っている。頂上までは、後、二、三階層くらいだろうか。これだけの巨大な建築物を魔王はどうやって作ったのだろうか。

 今まで見た巨大な建築物の殆どが、昔から――古代からあったものを使っていた。新しい建物は石や木材、煉瓦で作られたものが殆どだった。当然、あまり巨大なものは作れない。


 でも、この階層、この建物は新しく作られた部分だ。どうやって?


 床や壁は良く分からない素材で作られている。とても硬く丈夫だ。()の手では壊せそうに無い。それだけの素材で無ければ、これだけの高層の建物は作れないということなのだろう。


 この素材は何処から?

 そして、誰が作った?

 どうやって?


 謎ばかりだ。


 もしかすると黒いマナを使って創ったのかもしれないが……。


 ラーラが黒いマナの技術を魔王に伝えたのがいつかは分からない。でも、どんなに早く伝えていたとしても、それを使って創った可能性は低い気がする。


 分からないことばかりだ。


 そして、七階層。


 ここでやっと変化が起こった。


 螺旋階段が終わっている。直通で上がれるのは、この階層までのようだ。


 配管は部屋の隅に追いやられていた。そして、先ほどの階よりも半分くらいの広さになった部屋の奥に扉が見える。扉の向こうでは魔王が待っているのだろうか?


 だが、その扉の前に四角い金属の塊が集まった、良く分からないものが置かれていた。これが邪魔して扉を開けることが出来ない。


『ちょっと、何これ!』

『これを壊さないことには先に進めないようだな』

『魔王の嫌がらせかな?』

『ふむ。よからぬマナの流れを感じるのじゃ』


 マナの流れ?


 銀のイフリーダの言葉に気付く。

『壊すぞ』

 レームが剣を構えている。


『ちょっと、待ってください!』

 僕の制止よりも早くレームが剣を振るう。


 ……。


 その剣が金属の塊に受け止められる。そう、受け止められた。


 金属が開いていく。


 まるで四角い金属の塊で人の形を模したかのような異形。それがレームの剣を掴んでいる。


『これは……』

『マナを使ったゴーレムなのじゃ。何故、このようなものがここにあるのじゃ』

 銀のイフリーダは、これが何なのかを知っているようだ。


『くっ』

 レームが素早く掴まれた剣を手放し、もう一本の剣を引き抜く。


 金属の人が、掴んでいた剣をゆっくりとした動作で眺め、そのまま投げ捨てる。


 ……。


 敵、だ。


 これが何なのかは分からない。


 でも、だ。


 これを倒さないと先に進めない。


 要は倒せば良い。


 それだけだ。

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