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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命
340/365

335 きっと待っていると

『どういうことなの!』

 言葉通りの意味だ。


 ここに居たラーラは黒いマナで創られた偽物だった。


 だけど、だ。


 さっき、マナを介して繋がった時、青い髪の少女の姿が見えた。ラーラの魂が見えた。偽物のはずなのに、繋がり、魂が見えた。


 偽物を介して本物のラーラまで繋がった。


 ……もしかすると、本物のラーラはこの近くに居るのかもしれない。


『何処か、ラーラが居そうな場所を知りませんか?』

『え! 何処って、でも、もう……』

 真っ赤な猫は器用に頭を抱えて悩んでいる。


 ……。


「倒したのです!」

 こちらの会話が聞こえていない次の国が叫んだ。次の国はとても嬉しそうだ。倒すことが目的ではなかったはずなのに、偽物のラーラを倒したことで満足してしまったようだ。


「先ほどのラーラは偽物ですよ」

 だから、教える。

「な、なんとなのです! いや、知っていたのです。次も倒すのです」

 次の国は無駄に偉そうだ。そして、あまり役に立っていない。いや、この城に乗り込むのには役に立った……けれど、それは赤竜の力だ。


 とても微妙。


 ……。


 いや、それよりも、だ。


 真っ赤な猫のローラだ。


 この公国が故郷である真っ赤な猫、さらにラーラの姉だ。


 彼女なら……。

『何処か思い浮かぶ場所はありませんか?』

『もう思い浮かぶ場所なんて! だって、あの部屋には居なかったじゃない!』

 真っ赤な猫は頭を振って悩んでいる。


『ソラ、どうなった?』

 と、そんな会話の間にレームが復活したようだ。

『大丈夫ですか?』

 吹き飛ばされた場所から起き上がったレームが頭を振っている。

『ああ。がっつりやられたよ。体が重い。しばらく戦うのは無理そうだ』

 レームはふらついている。

「お、おい。無理をするなよ」

 レームにマナ結晶を与えていたサザが、そのレームの体を支える。

『助かる』

 本当に戦うのは難しそうだ。しばらくマナを貯めないと駄目だろう。


 黒い刃の一撃を受けただけでこれだ。その攻撃を何度も耐えた真っ赤な猫はどれだけ凄いのか、という話だ。


 ……。


 いや、多分、それは違うのだろう。


 あの黒い刃は反撃の刃だ。


 真っ赤な猫のローラがラーラに対して敵意を持っていなかったから、だから、耐えることが出来た。レームも、そこまで明確な敵意がなかったから、この程度で済んだ。


 もし、これが明確な敵意を持って反撃を受けていたら――レームはマナを食らい尽くされ消えていたかもしれない。


 やはり強敵だ。


『ラーラは強いね』

『ああ。予想外だ』

『当然ね!』

 先ほどまで悩んでいた真っ赤な猫が得意気に頷いている。もう少し真面目に考えて欲しい。


『何を言っているのじゃ。我とおぬしが本気を出せば、あの程度、どうとでもなるのじゃ』

 銀のイフリーダは呆れたように大きなため息を吐き出していた。


 ……確かにその通りだ。


 ラーラは強い。


 でも、だ。


 だけど、銀のイフリーダの力を借りれば何とかなるだろう。でも、それは最後の手段だ。どうしてもラーラを何とかしないと駄目になった時に取るべき手段だ。


 真っ赤な猫のこともある。


 それに、僕たちはラーラと戦いたい訳でも、倒さなければ駄目な訳でもない。


 だから、ラーラを倒すのは――消すのは、本当にどうしようもなくなった時だけだ。


『ラーラが何処に居るか分かりませんか? 何処か思い出の場所とか……』


 思い出の場所……。


 何故、ラーラが、ローラとラーラ、二人の思い出の場所に居ると思ったのだろう。


 城の何処か秘密の部屋に隠れている可能性だってあるのに――普通に考えれば、その可能性の方が高い。


 でも、多分、それは、ラーラが知っているからだと思う。姉が生きている。


 この公国に来て最初の時に、庭園の東屋で出会った偽物に、僕は姉が生きていると伝えた。

 多分、その情報が伝わっている。そんな気がする。


 だから、待っている。


 二人の思い出の場所で待っている。


 こちらを試している。


『どうでしょう?』

『ある! そう、思い出の場所なら、ある! 魔法学院!』

 真っ赤な猫が嬉しそうな声を上げた。

『それは何処ですか? ここから近い場所ですか?』

『ちょっと遠い。馬車で二日くらい』


 ……。


 違う。


 そこじゃない。

『多分、そこじゃないです。ラーラはこの城に居ます。すぐ近くのはずです』

『え! でも……』

 真っ赤な猫がしょんぼりと頭を下げる。真っ赤な猫が思いついた場所は遠すぎる。そこは二人の思い出の場所なのかもしれない。でも、そこじゃない。


『それなら、小さい頃の出来事で何かないかな?』

 レームの言葉。それを聞いた真っ赤な猫が、何かに気付いたように顔を上げる。


『もしかして!』

『あるんですね』

 真っ赤な猫が頷く。


『中庭。この城の中庭! そこに……、そこできっとラーラは待ってる!』

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