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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
禁忌の森

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034 肉と骨

 朝、目覚めた後、ご飯にしようと思い、残っていた蛇肉を確認すると腐敗臭が立ちこめていた。

「これを食べるのは勇気がいるよね」


 残っていた肉の塊は諦め、天日干しにしていた蛇肉を食べることにする。こちらは表面が乾燥して固くなり始めているが、腐ったような臭いはしていない。


 と、そこでおかしなことに気付き、首を傾げる。


 天日干しにしていた肉の塊も、残っていた肉の塊も、どちらも外に置いていたのは同じだ。天日干しにした肉の方にだけ、例えば、塩コショウを振るなどの、そんな何か特殊な作業を行ってはいない。


「何で、それで違いが出るんだろう」


 片方は腐り始め、片方は乾燥して固くなっている。

「置いた場所?」

 どちらも似たような場所だ。置いた場所が関係するとは思えない。(いぶ)したり、天日で干したり、と保存の方法を分けたのは、どちらかが成功すれば、と思ってだ。肉の量は多い、どちらかが失敗しても問題無いはずだった。


「一応、両方、成功?」

 でも、その成功した理由が分からない。特に天日干しは失敗する確率が高いと思っていたからだ。


 考える。


 しかし、分からない。


「たくさんの保存食が出来たと喜ぼう。これだけあれば一月くらいは余裕で暮らせるはずだものね」

 天日干しにした肉を石の短剣で切り分け、焚き火で炙って食べる。肉はとても固く、簡単には噛みちぎれない。唾液を絡めながら、何度も噛みしめて、ゆっくりと食べた。

「歯が丈夫になりそうだよ」


 スコルは異臭のする肉を気にせずガツガツと食べている。

「明日は焼いてあげるよ。それ、もう完全に腐っているからね」


 食事を終える。次だ。


 次に行ったのは、石窯を使った『焼き』だ。


 石窯の中へ昨日から一日使って乾燥させた土器を入れ、火を点ける。

『ふむ。取っ手のついたものと深皿なのじゃ。同じような形のものが沢山あるのじゃ』

「うん。肉の保存用に、ね。ただ、失敗も多いからね。このうちの一個でも成功すればいいかなと思って数を用意したんだよ」


 土器を焼いている間に、蛇皮の加工を行う。


 ぐにゃぐにゃの蛇皮を平らな石の上に広げ、石の短剣を使って切ってみる。


 ……。


 石の短剣の刃が通らない。


 毎日、研いで、切れ味は増しているはずだが、それでも刃が通らない。仕方ないので折れた剣を使うことにする。

 こちらは固い蛇の皮にすっと刃が入った。


 折れた剣を使って、一枚の蛇皮を細長い紐状に切り分けていく。上手く切り分けできず、サイズはバラバラになったが気にしない。

 もう一枚、ぐにゃぐにゃの蛇皮を取り出す。その蛇皮の中央部分に石の短剣を置き、サイズを見る。さらに石の短剣を裏返し横にずらす。これで大体のサイズは確認出来た。

 確認した形に蛇皮を切り抜いていく。折れた剣を使って無理矢理切っている為、予定よりも歪な形になるが、仕方ないと諦める。


 これで石の短剣のサイズに合わせた一枚が切り抜けた。


 その一枚に切り抜いた蛇皮の上に、石の短剣を乗せる。中央部分から折り、サイズを確認する。しっかりと蛇皮に包まれている。

「石の短剣のパイ包みって感じだね」

 包まれた石の短剣の膨らみに沿うように折れた剣を差し込み、点線状の切り込みを入れる。

「刃が通って良かったよ」


 点線状の切り込みに、最初に作った紐状の蛇皮を差し込み、結び、閉じる。

『ソラよ、鞘じゃな』

「鞘というか、持ち運び用の入れ物だね」

 石の短剣が抜けないように握り部分を抑える紐をつける。さらに木の皮を編んで作った紐を輪っか状にして通す。

「完成だね。これですぐには取り出せないけど、手に持たなくても持ち運べるね」

 木の皮で作った編み紐を斜めがけし、状態を確認する。

「うーん、ちょっと石の短剣を取り出しにくいかも」

 編み紐の斜めがけを止め、腰に巻く。そこに蛇皮の鞘を結びつける。

「うん、これなら邪魔にならない。落ちないように結んでいるから、中から取り出したり、入れたりは、ちょっと手間だけど、武器として使うわけじゃ無いから、これでいいかな」


 これで石の短剣を常に持ち歩くことが出来るようになった。


「次はこれかな」

 蛇皮を貼り付けていた骨の三角錐を全て分解する。これで骨が15本。


 加工できないかと思って折れた剣で切ってみる。折れた剣が跳ね返される。固い。輪切りにした時、この骨が切断出来たのは、あれが技だったからかもしれない。


 石の短剣を使うことにする。


 折れた剣よりも切れ味が落ちる石の短剣では、もちろん刃が通らない。気にせず、何度も叩きつけると、パラパラと粉が落ちた。骨が少しだけ削れたようだ。


 何度も、何度も同じ作業を繰り返し、骨の先端を尖らせていく。

『次は何を作っているのじゃ』

「骨の槍だね。この大蛇の骨は木よりも堅いからね。丈夫な槍になるよ」

 15本の骨を見る。

「ただ、全部を槍にするのは無理かなぁ。一本を削るだけでも日が暮れそうだからね」


 骨を削り、先端を尖らせ、さらに握りの部分に、滑り止め代わりとして蛇皮を巻き付ける。

「完成だよ」

 一本の骨の槍が完成した頃には空が紅く染まっていた。

「ああ、もう、こんな時間! 窯の方も見ないと……」

 慌てて窯の様子を確認する。


 すでに窯の火は消えていた。

「はぁ、大丈夫かな」

 中の土器を引っ張り出す。


 その殆どがひび割れたり、砕けたりしていた。特に取っ手付きの土器は、その取っ手部分がひび割れているものが殆どだった。もう少し取っ手部分を厚めに作るべきだったのかもしれない。

 それでも一個だけ壊れずに焼けているものがあった。

「一個でも成功しただけ良しとするかな」


 深皿の方は全てがひび割れていた。こちらはこのまま使うことにする。

「食料保存用だし、壊れたら壊れたで困らないからね」

 早速、天日干しにしていた蛇肉を入れておく。

「うん、問題無い」


 その後は、昨日と同じように木枠を使って四角い粘土を作り続けた。

『沢山作るのじゃな』

「沢山、必要だからね」


 今日乾燥させたものから、明日は焼くことにしよう。

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