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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命
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333 三つの力で考えよう

「食らうのです」

 ラーラの言葉に衝撃を受けて動きが止まっている真っ赤な猫の隙を突いて、次の国が矢を放つ。


 次の国が放った矢がラーラに迫る。


 そして動く。


 黒い刃が迫る矢にまるで吸い込まれたかのように動き、矢を防ぐ。黒い刃に触れた矢は一瞬にして消滅する。


「なんと、なのです!」

 次の国が驚きの表情で叫ぶ。


 吸い込まれた? いや、違う。もっとおかしな動きをしていた。


 ……目の錯覚だろうか?


 黒い刃が動いた先に矢が飛んだかのような、そんな錯覚を覚えた。


 どういうことだろう?


 僕も弓を構える。

『ローラ、どいて』

 矢を番える。

『え? ええ!』

 真っ赤な猫が慌てて飛び退く。


 矢にマナを纏わせ、放つ。


 矢が飛ぶ。


 そして矢は黒い刃に当たり、跳ね返されていた。次の国が放った矢のように消滅はしなかった。だけど、何かがおかしい。


 ……どういうことだろう?


 もう一度、矢を番え、マナを纏わせ、放つ。


 先ほどよりも素早く――狙いを定めるよりも早く放つ。


 ただただ、ラーラを狙い、放つ。


 マナを纏った矢が飛び、そして、黒い刃に当たり、跳ね返されていた。


 ……。


 早さを重視し狙いを定めず放ったはずなのに、その矢は黒い刃に当たり跳ね返されている。黒い刃を狙った訳ではない。


 見えたか? 見えた。見えなかった。


 何が起こった?


 黒い刃を動かして防いだのとも違う。いや、黒い刃自体は動いている――矢を防いだ形に動いている。


 でも、おかしい。


 確かにラーラを狙って矢を放った。だが、その矢の軌道はでたらめなものだ。その場から動いていないはずのラーラが黒い刃で防ぐ? どうやって?


 まるで放った矢が黒い刃に防がれた結果だけが残ったかのような違和感だ。


 ……?


 結果?


 黒いマナは創造の力だと言っていた。


 まさか結果を創ったのだろうか?


 飛んできた矢を防ぐという結果を創ったのだろうか?


 そんなことが可能なら、もう何でもありじゃないか。


 もう一度、矢を放つ。


『ちょっと! こんな場所で!』

 真っ赤な猫がさらに飛び退く。


 今度は見当違いの方向に矢が刺さる。

「何処を狙っているのでしょう」

 ラーラは笑っている。だが、その反応は矢が刺さってからだ。飛んでいる矢に反応できた訳じゃない。


 もう一度、弓に矢を番える。

「無駄ですよ」

『もう! 何を考えているの!』

『……多分、大丈夫ですよ』

 矢にマナを纏わせ、今度はラーラを狙う。


 矢を放つ。


 矢が黒い刃によって防がれる。


 矢を放つ。

 矢を放つ。

 矢を放つ。


 カン、カン、カンと小気味よい音を立てて矢が弾かれていく。黒い刃に弾かれる。


 ……。


 矢を放つ。


 矢が背後の玉座に刺さる。


 ラーラを狙った矢だけが黒い刃に弾かれる。


『何が、何処が大丈夫なのじゃ!』

 銀のイフリーダの呆れたような声が聞こえる。


 ……。


 これが熟練の戦士なら、矢の軌道を見極め、自分に当たりそうな矢だけを最小限の動きで対処している――と、その技量に驚いていたことだろう。

 だけど、これは違う。


 この黒いマナを纏ったラーラは、自分を狙った矢以外は刺さってから反応している。反応が遅すぎる。見えていない。


 あの黒い刃は自分を狙った攻撃にだけ自動で反応するのだろう。


 それが、分かった。


 それは、分かった。


 でも、だ。


 それが分かったところでどうすれば良いのだろう。


 こちらの攻撃は全て自動的に反応して防ぐ――防がれる。そして、離れたところからの攻撃だから反撃を受けていないが……。


 レームが吹き飛ばされた辺りを見る。


 近ければ反撃されるのだろう。


 全てを防ぎ、反撃する。


 確かに言うだけのことはある。


 強敵だ。

 難敵だ。


『聞いてください』

『どうしたの?』

 真っ赤な猫がこちらを見る。

『うむ。どうしたのじゃ』

『あの黒い刃は、こちらの攻撃を防ぎます』

『そうね。見てた! さっきから防がれてるもの』

 真っ赤な猫が呆れたような顔でこちらを見ている。多分、意味が分かっていないのだろう。


『攻撃しても防いだという結果が創られるだけです』

 だから、真っ赤な猫にも説明する。

『何を言っているか、意味が分からない』

 しかし、真っ赤な猫には伝わらなかったようだ。


『近寄れば全て防がれて反撃されます』

『それで?』

『危険です』

 真っ赤な猫が大きなため息を吐き出す。


『あなたも、そこに転がっているのも、難しく考えすぎ。私が! あの子を止めればそれで全て解決じゃない』

 真っ赤な猫がラーラの方を見る。


 黒いマナを纏ったラーラは黒い刃を持ち微笑んでいる。


『いや、それが出来れば苦労は……』

 こちらが言葉を言い終えるよりも早く真っ赤な猫が動く。

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