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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命
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293 ろくなこと

『レームの方はどう?』

 猫と顔を見合わせ驚いている骨に話しかける。猫と骨? いや、ローラとレームだ。


 レームが真っ赤な猫から顔を逸らし、こちらを見る。

『あ、ああ。特に問題ない。時々、追っ手がやって来たが問題無く追い払っているからな』

 追っ手? もしかするとリュウシュの中から誰かが追いかけてきていたのだろうか。

『それで、ソラ、どうするんだい?』

 レームの問い。


 さあ、どうしよう。


『ちょっと、ちょっと、骨が喋っていることは無視なの?』

 やっと地上に降りることが出来た真っ赤な猫は大きく体を伸ばしながら、そんなことを言っている。

『えーっと、その骨がレームです』

『骨扱いは酷くないか? 確かに骨のような姿だが』

 レームは骸骨頭の頬を掻いている。

『それで、ソラ、その赤い毛並みの猫の魔獣は?』

『ちょっと、魔獣扱いは酷くない? この骨が本当に、あのレーム様なの?』

 真っ赤な猫は骨のようなレームの姿を胡散臭そうにジト目で見つめている。

『あのが、何かは分からないが、自分がレームだ』


 ……。


 収拾がつかない。


『えーっと、とりあえず自己紹介をしましょう』

 だから、呼びかける。


『えーっと、僕はソラです。こんな姿になってもソラです』

 とりあえず自分から。


『知ってるから。それって何の自己紹介にもなってないじゃない』

『ああ、ソラはソラだな』

『うむ。こやつに関しては、もうそれで充分なのじゃ』

 三人とも好き勝手に言っている。


 次は呆れたのような顔でこちらを見ている銀のイフリーダだ。

『この銀の髪の少女がイフリーダです』

 それを聞いた銀のイフリーダが大きなため息を吐き出している。

『何の説明にもなっていないのじゃ』

『えーっと、それでは、僕の右腕を覆っている銀色がイフリーダと言えば良いのかな?』

 銀のイフリーダがもう一度、ため息を吐き出す。

『それはそれでどうなのじゃ。仕方ない、我が! 自らが! 話すのじゃ。我こそが無の女神なのじゃ!』

 銀のイフリーダが胸を張っている。正確には無の女神の分体――端末だったマナ生命体と言うべきなのだろうか。


『自分で女神とか言うの! それに、その銀色の右腕って、もう何なの!』

『ああ、そういうことだったのだな』

 頭を抱えている真っ赤な猫と妙なところで納得しているレーム。


 次はそのレームだ。

『えーっと、レームです』

『ああ、自分はただのレームだ。魔王との戦いに敗れ、死んでいたが、幸か不幸か、このような姿で甦ることが出来た』

 骨の姿のレームが肩を竦めている。

『ちょっと、甦ったって。普通、そんな簡単に生き返るなんて出来ないから! それに魔王って何!? 私が死んでいた間に何があったの!』

 真っ赤な猫が驚いている。この真っ赤な猫はずっとあの場所に居たのだろう。情報が入ってこないのも当然だ。


『えーっと、次は猫です』

『ちょっと、それだけ! それにさっきの話も途中で止めるし、もうどうなっているの!』

『なるほど。この者は猫だったのか』

 骨姿のレームが納得したようにうんうんと頷いている。

『うむ、猫なのじゃ』

 銀のイフリーダも頷いている。


『違うから! 私はローラ、ローラ・マウよ。天才魔法使い……だったものよ!』

 過去形なのが少し悲しい。


『えーっと、そういうわけで、皆、一度死んで、生き返ったものたちです。こうしてみると一度死んだくらいなら何とかなるんですね』

『普通はならないな』

 レームが顎の骨をカタカタと鳴らして笑っている。

『こんな姿になって、何とかなってるって思えるのは本当に凄いと思うわ』

 真っ赤な猫は呆れたような顔でため息を吐いている。

『我は死んでおらぬのじゃ』

 そういえば、銀のイフリーダは死んでいなかった。だけど、マナ生命体なのだから、似たようなものだろう。


『つまり、自分たちは、皆、同じ境遇だということだな。魔獣に落ちながら人としての矜持を忘れていない』

『はいはい、そうね』

『だから、我は死んではおらぬのじゃ。人ではなく神なのじゃ』


 これで自己紹介は終わりだ。


 お互いのことが分かって、仲良くなれるはずだ。


『それで、ソラ、目的は?』

 レームが聞いてくる。

『とりあえずの目的は達しました』

 レームに手に入れた大樹の枝を見せる。

『それがソラの目的だったのか』

 頷く。

『次はどうするんだ?』

『そうよ、どうするつもりなの? 私は何をすれば良いの?』

 レームが腕を組み、真っ赤な猫が首を傾げている。


『僕の最終的な目的は迷宮の攻略と人の神からの解放です。だけど、その前にやることがあります』

 それが……。

『魔王の討伐です』

『そういうことね』

 真っ赤な猫が納得したように頷いている。

『ああ。それは自分の目的でもあるな。復讐だ』

 レームの骸骨の眼窩の奥が真っ赤な炎で燃えている。


『それで、なのですが』

 僕の話は続く。

『何処かの国に力を借りに行こうと思っています』

 国の力を借りる。


 廃墟となった王宮跡で見た、あの透明な壁を越えるために、あいつをおびき出す必要がある。

 それには目に見える大きな力が必要だろう。


 一番、簡単なのは軍勢だ。人が多く集まれば、それは誰でも分かる、目に見える大きな力となる。


『なるほど。ソラ、ならば彼らは?』

 レームが拠点の方を見る。リュウシュの皆のことだろう。

『駄目です。彼らは巻き込めない』

 これ以上、リュウシュの皆を巻き込むことは出来ない。それに、だ。今のこの姿の僕に力を貸してくれるか分からない。

 追っ手をかけてくるくらいだしね。

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