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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命

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288 原初之灯

 しばらく歩くと坂が見えてきた。以前は、この先に強大なマナを持った『王』が待っていた。


 ……。


 周囲を見回す。


『どうしたのじゃ?』

『いや、居ないな、と思って』

『ふむ?』


 もしかしたら魔獣と化した鬼が待っているかと思ったが、居なかったようだ。あの時に戦った黒い鎧の鬼は生身だったはずだ。恨みを持って死に、魔獣と化していてもおかしくない――はずだが、考えてみれば居ないのも当然だ。

 あの時、黒い鎧の鬼をどうやって倒したか。


 銀のイフリーダの力を借りてマナを吸収して倒した。そう、今の銀のイフリーダは覚えていないようだが、あの時、黒い鎧の鬼のマナを喰らっている。マナが無くなった生き物が甦ることは無い。喰らい残しがあれば、分からないけれど、銀のイフリーダがそんなヘマをするとは思えない。

 少しでもマナが残っていれば、それがその場に焼き付いたかのように魔獣として甦ることもあるだろう。だが、そのマナが存在しなければ――存在しないものは無理だ。


 ……。


 ん?


 黒い鎧の鬼のことを考えたことで少し思い出したことがある。


 あの爛れ人がこちらを見て祈るような反応をしたことだ。もしかしてマナ生命体に反応して行動しているのでは無いだろうか。今の僕はマナ生命体になっている。だから、そういう反応を返してきた?


 そして、そこから導き出されることがある。


 黒い鎧の鬼が爛れ人たちの主のように振る舞っていたから、勘違いしていたことだ。


 僕が戦った強大なマナを持った四つの王。骨の姿をして石の城で待っていた古き礎に縛られた王、巨大な竜の姿でリュウシュを支配していた邪なる竜の王、スコルと共に戦った氷の城の獣たちの女王、この毒の谷で祈っていた聖者の毒と腐敗に蠢く王。


 戦い、銀のイフリーダがマナを喰らった四つの王。だが、そのうちの一つ、獣たちの女王だけが異質だ。

 他の三つの王の時は夢を見た。以前の体が憶えていたアイロの記憶。『古き礎に縛られた王』と『邪なる竜の王』、それに『毒と腐敗に蠢く王』、この三つの王はアイロと同じ時代を生きたものたちだろう。だけど氷の女王だけは夢を見なかった。アイロの記憶になかった。


 この谷の毒は獣の侵略を防ぐためのものだったはずだ。


 獣の主である氷の女王と爛れ人、この谷はアイロの記憶の時代と違う。もっと古いものだ。


 マナが濁れば魔獣と化す。だが、ここは獣たちから守られ、マナを浄化する。


 そう浄化だ。


 マナ生命体である神の目的は何だ?


 マナを集めることだ。喰らうことだ。


 だが、濁ったマナはあまり好みでは無いようだった。以前、銀のイフリーダが食あたりをしそうだと言っていた。喰らった時も不味そうにしていた。


 ここはマナを浄化している。


 綺麗にしている。


 そして、爛れ人は僕では無く、マナ生命体に反応したのだとしたら……?


 そう、勘違いしていた。


 四つの王は全て同じ時代を生きていたと思い込んでいた。王という同じくくりで見ていた。


 そして、僕は、無の女神を神と同じマナ生命体というくくりで見ていた。だけど、無の女神は裏切りの女神だ。神の敵対者だ。


 銀のイフリーダの目的は何だった? 四つの強大なマナを手に入れて迷宮を攻略すること。

 この地は封じられていた。


 何に?


 僕は見ていないが氷の壁に覆われていたらしい。その壁を作っていたのは氷の城の城主である『獣たちの女王』のはずだ。


 敵対。


 守っていた?


 浄化。


 強大なマナ。


 マナを集める。


 目的。


 喰らう。


 マナを得る。


 何かが見えそうで、何かが繋がりそうだ。


 だけど、まだ情報が足りない。繋がりそうで繋がらない。


 ……。


 頭を振る。


 考えすぎた。考えすぎだ。


 今は考える時じゃない。いつもこうだ。先に進む必要がある時ほど考えてしまう。


 坂の下を見る。毒の谷の底の底。そこには青い呪いの海が広がっているはずだ。


 いや、だった、だ。


 だが、そこにあったのは巨大な一本の木だった。そう、呪いの海はなく、一本の巨木だけが存在している。


 この巨木は、この谷に降りる時から見えていた。気付いていた。


 天を貫くほどの巨大な木。呪いの海を埋め尽くすほど手足を伸ばしている。


 何故、こんな木が生まれているのか。僕が死んで、迷宮を彷徨っている間、地上ではどれだけの月日が経っていたのだろうか。これだけの大きさに育つのはどれだけの時間が必要なのだろうか。


 これが、これを生み出すことが聖者の呪いだったのだろうか。


 そして、その大樹の根元には真っ赤な毛皮を持った羽の生えた巨大な猫が丸くなって眠っていた。


 魔獣だ。


 大樹を守る魔獣だ。


 だが、僕はその魔獣が持っているマナの色に見覚えがあった。

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