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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命

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277 斬魔将

「改めて名乗るのだ。魔王の四魔将が一人、斬魔将クリムゾンカノンなのだ」

 カノンさんが名乗り、動く。


 蜘蛛の足を深く沈め飛び上がる。


 飛び上がったところで、カノンさんに翼があるわけじゃ無い。飛び上がった後は落ちるだけだ。


 僕はその後を狙えば良い。


 ……。


 だが、その飛び上がったカノンさんが落ちない。いつまでも空に浮かんでいる。

「教えるのだ。メロウは空飛ぶものを捕まえ、捕食する種族――すでに籠の中なのだ!」


 ……蜘蛛糸。


 ああ、確かに最初の一撃は空からだった。


 周囲を見回す。目ではなく、マナを感じて追いかけてみれば空の至る所に蜘蛛の糸が伸びている。すでに罠は作り終えているということなのだろう。


 だけど、それは僕も同じだ。空に飛び上がった時に僕は蜘蛛の糸に引っかからなかった。飛び上がった時点で引っかかってもおかしくないはずだ。カノンさんは、そのことに気付いているだろうか。


 僕が気付かず、たまたま引っかからなかっただけだと思ってくれているだろうか。


 その油断を狙い、ただ、射るだけだ。蜘蛛糸に気付かないふりをして世界樹の弓に矢を番える。


 カノンさんが蜘蛛糸を伝い、こちらへと迫る。

「見えているのは分かっていたのだ。見えないふりをしているのも分かっているのだ」


 ……。


 周囲の蜘蛛糸はまるで、この空間に追い込むことが目的だったかのように隙間が出来ている。そして、今、自分がいるのはその中だ。


 ……まさか!?


 飛び上がり、逃げることを予測して、わざと隙間を作っていた?


「そして、閉じるのだ」


 周囲の蜘蛛糸が動く。こちらを絡め取るように隙間が狭くなっていく。


 だけど!


 世界樹の弓から世界樹の木剣に持ち替える。そして、その木剣にマナを纏わせ、こちらを絡め取るように迫る蜘蛛糸を切る。蜘蛛糸はあっさりと切り分けることが出来た。


 だけど!


 その斬り別れた蜘蛛糸が動く。


 まるで意思を持っているかのように蜘蛛糸が動き、重なっていく。


 斬る。


 斬る。


 斬った蜘蛛糸が重なり、連なり、こちらを絡め取るように、包み込むように動いていく。


 切断は出来るのに、それが意味を成さない!


「私の糸は生きているのだ。無駄なのだ」

 カノンさんが、ゆっくりとこちらに迫る。


『不味いのじゃ! このままでは絡め取られるのじゃ!』

 銀のイフリーダが慌てている。確かに、これは不味い。対処法が浮かばない。


 カノンさんのその優れた技量は見せて貰っていた。その力には注意していた。だが、メロウという種族の力を軽く見ていた。


 その両方を使って襲いかかってくるなんて!


 蜘蛛糸が体に絡みつく。まるで繭を作るように、次々と蜘蛛糸が絡みついていく。身動きが取れない。

 蜘蛛糸に包まれる。


 何も見えない。


「終わりなのだ」


 そして、カノンさんの一撃によって繭が切断される。


 一閃。


 一撃だ。


 繭が、こちらを包んでいた蜘蛛糸が開き、その中から僕の体がこぼれ落ちる。


 僕の体は真っ二つになり、そのまま地上へと落下する。


 ぐちゃり。地面へと叩きつけられる。


 ……。


 普通なら即死だ。


 ああ、酷いものだ。


 油断していた訳じゃない。それどころか、カノンさんの力を知っているからこそ、強敵だと思っていたからこそ、全てを出し切るつもりで戦っていたのに。


 それでも、こうなってしまうのか。


 本当に強い人だ。


 強敵だ。


 でも……。


 でも、だ。


 僕の体は、人のそれではない。あくまで人に似せているだけだ。銀のイフリーダと同じマナ生命体だ。

 だから、真っ二つになったところで、蓄えたマナが消えない限りは、いくらでも再生が出来る。体を作り直すことが出来る。


 ぐちゃぐちゃになった体を作り直し、世界樹の弓を握る。世界樹の弓は手放していない。さすがにこの状況で矢を矢筒から取り出すのは難しいが、矢がなくても、マナを放つことは出来る。


 マナの矢を放つ。


 空に、蜘蛛糸の上にあるカノンさんへとマナの矢を放つ。


 こちらが死んだと思い油断していたはずのカノンさんだが、すぐに、その接近に気付き、飛んできたマナの矢を細身の剣で受ける。


 ……当たらないか。


 だが、無理して受けたからか、その一撃で細身の剣が折れ、砕けた。


「意外なのだ!」

 カノンさんが驚きの表情でこちらを見る。


「ご、ごめんなさい」

 謝る。


 謝らないと駄目だ。


「まだ、まだ、あまく、み、みていた」

 カノンさんの力を低く見ていた。


 強敵だが、それでも勝てると思っていた。


 今のままで勝てると思っていた。


 それは武の魂を持ったカノンさんに対して失礼なことだ。


 だから、ここからは全力だ。


 本当の全力だ。


 人であろうと、人の姿にこだわっていた。それが先ほどの敗因。


 だから、越える。


 人としての姿を越える。


 もっと早く動けるように獣の足を。


 蜘蛛の糸に絡め取られないように刃の体に。


 形にこだわる必要は無い。


 もっともっと強く、戦える姿に!


「その姿は、なんなのだ!」

 カノンさんが叫ぶ。


「たたかうための……ちから」

 カノンさんの力に応えるために全力を出す!

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