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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
禁忌の森

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028 処理

 スコルに頼んで取ってきて貰った細長いツタを確認する。強く引っ張ってもちぎれない。見た目とは違いかなり丈夫なようだ。

「まずは、と」

 大蛇を輪切りにした肉から取り出した『骨』を使うことにする。


 骨と骨を組み合わせ上が短い十字を作る。交差させた部分をツタで結びつける。そして下の方が長くなるようにして自立するように縦向きに地面へと刺す。それをもう一つ作り、先ほどのものとは少しだけ距離を開けて地面に刺す。

『ふむ。それをどうするのじゃ』

「この上に、ね」

 地面に刺した骨と骨の上に新しい骨を横向きに乗せる。

『ふむ。まるで何かを干すための竿のようなのじゃ』

「うん。そうだよ」

 横向きの骨に切り分けたブロック肉をツタを使って結びつける。


「切り分けた肉のうち、何個かは、こうやって天日干しにしようかと思って」

 骨とツタで作った簡易物干し台だ。腐敗防止用の塩を使わず、ただ干しただけの肉がどれだけの日数が持つか分からないが、要は実験だ。


「ガル」

 作業を続けているとスコルが頭を寄せてきた。何かしていないと暇なのかもしれない。寝て貰っててもいいんだけど……もしかしたら、食べた分、運動したいのだろうか。

「さっき持ってきてくれたツタ、同じようなのを頼むよ」

「ガル」

 スコルが任せろ、という感じで頷く。

「うん、任せた」


 作業を続け、スコルが持ってきてくれた新しいツタも使って、同じようなものをさらに2つほど作る。これで使った骨は15個、完成した簡易物干し台は3個だ。それでも肉の塊は、まだたくさん残っている。


 次は違うものを作ることにする。


 骨を3個ほど組み合わせ三角錐を作る。

『ふむ。今度は違うのを作るのじゃな』

「うん。色々、試したいからね」

 そして、作った三角錐に剥いだ大蛇の皮を巻き付ける。

『ソラが作っていた家と同じように見えるのじゃ。新しい家を作っているのじゃな』

「うーん。ここで寝起きは生臭くて無理かなぁ。あっちは木と土と葉っぱで作っているからね」

 大蛇の皮が巻き付けられた三角錐の中に入り、その天井部分からぶら下げるように肉のブロックを結びつける。

 同じようなものをさらに4個、全部で5ほど作ったところで骨がなくなった。


「これで、と」

 骨と皮の三角錐の中に木の枝と落ち葉を入れ、火を点ける。

『ふむ。中で燃やしても、火と皮や肉の距離があるので燃えないと思うのじゃ』

「うん。これは煙で(いぶ)しているだけだからね。燻製を作ってみようと思ったんだよ。それに合わせて皮も乾燥するんじゃないかって思ったんだ」

 しっかりと(いぶ)られたら中の肉を取り替えて――燻製を何個か作ることにする。それでも肉の塊はまだまだ残りそうだ。


「後は、と。窯は……」

 石の窯の方を見る。

「匂いが残りそうだから、今回は使うのを止めよう」

 東の森から多めに木の枝と落ち葉を拾ってくる。そして、普段よりもかなり大きめの焚き火を作る。その中に切り分け、湖の水で洗っただけの肉の塊を投げ込む。

「とにかく焼こう」

 炙るのでもなく、ただ焼く。


 それでも肉の塊は残っている。あれだけ食料に困っていたのが嘘みたいな量だ。何か長期保存できるような、氷室のようなものでもあれば良かったのだが、このままでは残った肉を腐らせてしまうだけだ。


 ……。


 湖の方を見る。

「後で焼けば、何とかなるかな?」


 木の枝の先端にツタを巻き付け、釣り竿のようにする。そして、そのツタの先に肉の塊を結びつける。結びつけた肉の塊を大蛇の皮で包み込む。


 ちょっとだけスコルの方を見る。作業に飽きたのか寝転がっていた。

「この固い皮を噛みちぎれるようなヤツが居ないことを祈ろう」


 大蛇の皮に包まれた肉の塊が先端にくっついた釣り竿を湖の中へと入れる。肉の水中保存だ。これでどれだけの日数が持つか分からないし、場合によっては魚に食べられてしまうかもしれない。それでも、そのまま肉の塊を転がしているよりは日持ちするはずだ。

「水中の方が温度は低いはずだし、腐敗を進める存在が居ないはずだよね」


 これで全ての肉の処理が終わりそうだ。


 空を見れば、もう日が落ちようとしていた。

「もう、こんな時間なんだ」

『うむ。もう、こんな時間なのじゃ。ソラも疲れたと思うのじゃ。ゆっくりと休むのじゃ』

「そうだね」


 イフリーダの言葉に従い、今日は、もう寝ることにする。


 そしてシェルターの入り口に手をかけ、その周囲を見回す。


 肉のぶら下がった簡易物干し台が3個。中の煙が漏れ、うっすらと白くなっている大蛇の皮で作られた三角錐が5個。それと真っ赤に燃えている大きな焚き火が1つ。湖の縁には10個ほどの木の枝がぶら下がっている。


 やりきった。


 これだけの作業を一日でやりきった。


「イフリーダ、頼みがあるんだけど、いいかな?」

『ふむ。何なのじゃ?』

「もし、火が弱くなったら起こして貰ってもいい? 燻製の方も、焚き火の方も」

『うむ。分かったのじゃ』

「助かるよ。でも、これだけの作業をやったのに、雨が降ったら、全部、台無しになるんだよね……あー、そんなことを言っていると実際に雨が降りそうだ」

『ソラよ、不確かな未来を思って悩むのは不毛なのじゃ』

「そうだね。もう眠るね。一日徹夜して、仮眠しかしていなかったから、もう眠い……よ」


 シェルターの中に入り、膝を抱えてうずくまる。


 眠る。


 その後、一回だけイフリーダに起こされて火を足したが、本当に、その一回だけだった。


 これで大蛇が守っていた東の森の奥も探索が出来る。ツタに、まっすぐ伸びた若木、それに大蛇との戦いの時にちらっと見えた美味しそうな赤い実……。


 もっともっと生活は豊かになりそうだ。

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