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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命

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273 異様な

 こちらに気付いたリュウシュの二人が手に持っていた槍を構える。見覚えのないリュウシュだ。いや、リュウシュの皆さんの顔は、今でも、そこまで区別がつかないけれど、それでも見覚えのない二人だと思う。


『ソラ、どうする?』

 レームが馬上から話しかけてくる。

『とりあえず話しかけてみるよ』

『ふむ。我は無駄だと思うのじゃ』

 銀のイフリーダは肩を竦めている。

『やってみないと分からないからね』

『ああ。自分もそう思うな』

 銀のイフリーダが呆れたような表情で自分とレームを見る。

『おぬしら二人で結託して感じが悪いのじゃ』


 ……。


 とりあえずリュウシュの戦士の二人を待たせては申し訳ない。


 話しかけよう。


「武装した爛れ人とスケルトンナイトが襲ってきたのです」

「はやく隊長を呼びに行くのです」

 だが、話しかけるよりも早くリュウシュの戦士の二人が動き出した。一人が壁のように立ち塞がり、もう一人が森の奥へと駆けていく。


『不味いことになったようだな』

『だから、言ったのじゃ』

 うん、不味いことになったようだ。


 まぁ、でも諦めずに話しかけてみよう。誤解が解けるかもしれない。


「こ、こんにちは」

 左手を挙げ、悪意がないことを伝える。


「爛れ人が何かをするつもりなのです」

 しかし、通じなかったようだ。しかも、何故か、こちらを爛れ人だと勘違いしている。


「ただれびとではない。こんにちは」

 もう一度、敵意がないことを伝えよう。


「近づくんじゃあないのです」

 一人残ったリュウシュの戦士がこちらに槍を突きつける。


 にしても、槍、か。


 リュウシュは弓を扱うのが得意な種族だったはずだ。それを主として戦っていたはずなのに、何故、槍なんだろう?


 確かにかつての拠点では戦士の二人に槍を使って貰っていたけれど、それは矢の生産が難しいからという理由があったはずだ。後は、まぁ、銀のイフリーダの個人的な好みもあったけれど……。


『うむ。槍こそが至高の武器なのじゃ』

 そうそう、こういう感じだよね。

『剣の応用力の高さも捨てがたいと思うな』

 金のレームと銀のイフリーダが自分の好みの武器に関して話し合っている。


 そんな場合じゃないと思うんだけどな。


「こんにちは」

 とりあえず、もう一度、挨拶をしてみよう。

「な、なんなのです!」

「あ、あいさつ?」

 首を傾げてみる。


「ひ、ひぃい、恐ろしい力を感じるのです」

 残ったリュウシュの戦士は槍を放り投げ、森の奥へと駆けていった。いや、逃げていったと言うべきだろうか。


『どういうことだろう?』

『ソラの力を恐れたのではないだろうか?』

『うむ。こやつ、マナの保有量だけは化け物じみておるから、考えられるのじゃ』

 二人は好き放題に勝手なことを言っている。


『何にせよ、これで森に進めるようになったよね』


 森に入ろう。


 この森を抜ければ拠点があった場所にたどり着ける。そこまでは何日もかからないはずだ。


 森に入る。先ほど逃げていったリュウシュの戦士の姿は見えない。そんなにもすぐに見失うだろうか?

 もしかすると道から外れて森の深い方へと駆けていったのかも知れない。


 何にせよ、これで問題無く進める。


 森を進む。森の道を進む。


 最初に逃げたリュウシュの戦士の姿も見えない。それほど先行しているとは思えないが、何処にも姿が見えない。マナの気配も感じない。


 おかしい。


 どうなっているのだろうか?


 森に新しく作られた道を進む。魔獣の姿は見えない。ここに生息していた小動物も狩り尽くしたのだろうか。それとも環境が変わって居なくなった? いや、小動物が生息していたのはもう少し先だっただろうか。


 道を進む。


 おかしい。


 この森の入り口には見張りをしていたリュウシュの戦士の姿があったのに、森に入ってからはリュウシュの姿を見かけない。森の中は守っていない?


 いや、よく考えれば、リュウシュの戦士があっさりと逃げ出したのもおかしくないだろうか? 僕の知っているリュウシュの戦士たちはもっと勇敢だったはずだ。


 例え、僕たちが強い魔獣のように見えていたとしても、あんな風に情けなく逃げるだろうか?


 もしかして、これは罠か?


 そして陽が落ち、森に夜の闇が訪れる。僕たちには夜も関係ない。夜陰に紛れての襲撃を警戒しながら森の中を進む。


 しかし、何も起こらない。


『レーム、少しおかしいと思わない?』

『ああ。あっさりしすぎている。見張りの二人の姿を見たが、それ以降、何者とも出会わないのは異常だな』


 のんきに構えている場合じゃない。少し警戒した方が良さそうだ。


『それで、どうするのじゃ?』

『決まっているだろう。なぁ、ソラ?』

 頷く。


『警戒しつつ、このまま進む。もし何か罠があるというのなら、その罠ごと食い破るよ』

 馬上のレームが頷きを返す。


 警戒はする。


 だが、出来ることは限られる。


 考えすぎて歩みを止めるよりは前に進むべきだ。


『呆れた二人なのじゃ』

 銀のイフリーダは肩を竦めている。銀のイフリーダには言われたくない。


 にしても、だ。異様な雰囲気を感じる。この先に待っているのは……。


 ……。


 そして、森を抜ける。

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