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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命

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262 地上

 壁を登る。


 這い、登る。


 地上を目指し、登る。


 暗闇の中を登る。朝も昼も夜も無い。ただ、ただ登る。


 登る。


 登る。


 空腹を覚えることもない。蓄えたマナも充分。いつまでも、何処までも登り続ける。落ちた距離をそのままに登り続ける。


 登る。


 登る。


 いつまでも闇が終わらない。


 こんなにも闇の層は長かっただろうか?


 こんなにも光が届かない場所だっただろうか?


 暗い。


 それでも上り続ける。


 闇が終わらない。


 張り付いていた壁の感触が変わる。迷宮の階層が変わったようだ。


 登っていた壁の質が変わっても闇が晴れない。何処までも闇が続く。


 どうなっている?


 光が届く場所まで来たけど、たまたま夜だった?


 明りを掲げ周囲を見回す。


 闇……だ。


 登る。


 いつまでも闇が終わらない。それでも登る。


 さらに階層を越え、登り続ける。


 登り続ける。


 登る。


 登り続ける。


 そして、闇が薄らいできた。まだまだ暗闇に包まれているが、それでも目を凝らせば先が見通せるほどの暗さに変わった。薄暗い。


 空を見る。


 よく見れば空が暗闇のように真っ黒な雲に覆われている。暗闇の雲? あれが光を遮っている? だから、何処までも暗闇に包まれている?


 昼も夜もなく暗闇に包まれている?


 何が起きているんだ?


 あれから何が起こったんだ?


 壁を登る。


 空が、雲が見えたということは――地上はもうすぐのはずだ。


『ふむ。あの暗闇の雲にはマナの力を感じるのじゃ』

 眠ることにしたはずの銀のイフリーダが話しかけてくる。何というか、好き勝手というか自由だ。いや、銀のイフリーダらしいと思うべきか。

『この穴を中心として暗闇の雲が広がっているみたいだね。ここを封じていた力と関係があるのかな』

『それはないと思うのじゃ。あれは、あれは……また別の何かなのじゃ』

 分からない。


 何故、こんなことになっているのだろうか。だが、あれは何か良くないもののような気がする。


 空を、黒雲を見ながら壁を登る。


 そして伸ばした手が空を切った。


 ……。


 頂上。


 地上に辿り着いたようだ。ついに地上だ。


 暗闇に惑わされ長く延々と登り続けていたような気分になっていたが、地上までの距離が変わるとは思えない――自分が錯覚していただけだったのだろう。


 手を崖の縁にかけ上りきる。


 ついに辿り着いた。


 地上に帰ってきた。


 地上だ。


 ……。


 しかし、その地上は薄暗い。何処までも暗闇が広がっている。


 暗闇の雲によって太陽の光が届かない闇の地上。


 ……。


 ここは迷宮の入り口近くのはずだ。僕が飛び降りた場所。


 明りを掲げ周囲を照らす。闇の中に崖が照らし出される。


 ……。


 ここは変わっていないように見える。


 だが、少し離れた場所にある、以前は王宮があった場所の様子が変わっていた。王宮が何か透明な壁のようなものに覆われている。そして、その王宮自体も棘のように伸びた巨大な建物が繋がり、まるで天へと伸びる剣のような姿に変わっていた。


 あの透明な壁は何だろう?


 まるで侵入者を阻む結界のようだ。


 本当に何があったんだろう?


 僕が死んでからどれくらいの日数が経った? 地上ではどれだけの時間が過ぎた? 分からない。


 少しだけ、この先に進むのが怖い。


 でも、進むしかない。


 明りを手に崖の道を進む。あの結界に覆われた王宮跡を目指し歩く。


 そして、その道の先に無数の蠢く存在を見つけた。


 それは体中に細長い布を巻き付けた人のように見える。ボロボロの姿の人?


 人?


 その姿をよく見ようと手に持っていた明りを掲げる。すると、その光を浴びた包帯姿の人が燃え始めた。

 悲鳴を上げ、燃える。


 な、に?


『ふむ。あれは光に弱い魔獣のようじゃ』

『人ではないの?』

 頭の中に銀のイフリーダが首を傾げている映像が浮かんだ。銀のイフリーダは器用な真似をする。

『かつては人だったものなのじゃ。今のアレはただの魔獣なのじゃ。それくらいはおぬしもマナを見れば分かると思うのじゃ』

 声の調子は何処か呆れているようにも聞こえる。

『僕は人らしくあろうとしているからね。そういうのは苦手なんだ』

『ふむ。おぬしは変わり者なのじゃ』

 銀のイフリーダは何処か呆れてため息を吐いているような口調だ。


 しかし、かつては人だったもの、か。


 人がマナによって魔獣に変質するのは知っている。だが、それは急激に多くのマナを手にした場合であったり、強い恨みによってだったり、何か思いを持ちながら死んでしまった場合であったりするはずだ。


 そんな人たちが大量に生まれた?


 それとも、ここで沢山の人が死んで、それを魔獣として甦らせた人がいる?


 ……。


 そんなことをしそうな人物の心当たりは一人しかない。いや、しかし、あり得るのだろうか?

 あいつの目的は神の打倒のはずだ。神からの人の解放が目的のはず。それが人をこんな風に扱うだろうか? それは目的とずれてないだろうか?


 分からない。


 何があったのだろうか。


 とにかく進もう。


 何処かに答えはあるはずだ。

2018年12月30日誤字修正

惑わされ永遠と → 惑わされ延々と

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