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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
空の生命

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257 銀

 明りを持ち上げ、本を取る。


 ここ最近は体の中のマナが安定し始めたので、ここに残っていた本を読んでいる。


 色々な本が並んでいる。


 マナに対する考察であったり、魔獣の素材の活用法であったり、面白いものになると料理の本なんてものまで揃っている。

 色々と、そう――雑多に取り添えているように見えて、そのどの本にも共通することがあった。


 マナだ。


 この本の主はマナについて調べていたようだ。


 マナとは何なのか。


 分からない。


 昔から――遙か昔から存在していた物質。


 物質?


 とにかく昔から存在していた。


 そして人や魔獣、あらゆる生き物がマナによって作られている。その中でも強い力を持つ存在達は体内に結晶を作る。

 それは人であったり、魔獣であったりだ。植物なども強い力を持てばマナの結晶を体内に作っていくだろう。そうなると、それはもう植物ではなく魔獣の分類だろうか。


 マナは生き物の生命であり、本質。


 そのマナを喰らうものがいる。


 マナイーター。


 マナを喰らうことで不老に近い力を得て、長く生きていく存在。忌み嫌われるもの。


 だが、それと同じような特性を持っているのに、崇められている者達がいる。


 それが神、だ。


 神とマナイーターの違い。


 マナイーターはマナを喰らって、その力を得ることが出来る。だけど使うことは出来ない。糧としているだけだ。その余剰的な力は得ることが出来るだろう。でも、それだけだ。神はマナを変換し、世界に干渉する力として放出できる。


 一番分かり易いのは、神はマナを捧げれば力を貸してくれることだろうか。そうやって、もっとマナを集めやすく、マナを集める循環を作っている。


 そして人が神を崇めている理由――それは、その力の手助けがあるからじゃない。いや、今はそうなっているのかもしれないけれど、昔は違う。


 人を造ったのが神だから。


 マナを効率よく集めるために神が人を造った。


 ここにある本ではそうなっている。


 そして、それは間違っていないと思う。


 僕もそう思う。


 マナ。


 神。


 人。


 ……。


 この本を読んで分かったこと。


 今の僕。


 多分、僕は死んでいる。


 いや、生きているのだけれど、一度、死んでいる。


 骨の魔獣となって死んだ後も生きていた人がいるように、強い意識はマナに焼き付き、残り続ける。

 それはやがて焦げ付き、掠れ、消えていくのだけれど。


 僕も意識だけとなって、この暗闇の中を漂っていた。


 でも、僕の場合は、たまたま体を得ることが出来た。


 その僕が入った体は、あいつが新しい体として造っていたものだった。マナの意識を移し替え易く造られている。だから、良く馴染んだ。


 運が良かった。


 そして、死と面したことで死を知ることが出来た。


 マナの本質を知ることが出来た。


 そして気付いた。


 理解した。


 死を経験し、マナの本質を知ったことで今の自分は、その神と同じ存在になっている。


 マナイーターではない。


 マナを自由に扱える。


 矢にマナを纏わせることが出来たのも、その力があったからだ。確かに、この世界樹の弓はマナの伝導率が良い。でも、矢はその『世界樹』で造られていない。ここの本棚を壊して作ったものだ。なのに、マナの力を纏わせることが出来た。

 それは僕がマナを操れるようになったから。


 力は得た。


 知識も得た。


 そして、この周辺を探索して、道も見つけた。


 道は三つ。


 ここよりさらに中心部へと向かった場所にある床に面した門だ。だが、これは開かない。


 鍵がない。


 だが、鍵には心当たりがある。


 そして、もう一つ。


 それはこの近くにある円形に並んだ石柱だ。これには何か移動に関するようなマナの残滓が漂っている。でも起動しない。もしかすると、ここの主が移動に使っていたものなのかもしれない。


 最後の一つ。

 それが壁際にあった上への階段だ。


 上。


 地上への道だ。


 帰る場所。


 道は三つ。


 だけど行ける場所は上だけだ。


 だから、上に行こう。


 そこで待っている者が居る。目的の一つがあるはずだ。


 でも。


 でも、だ。


 その前に。


 この拠点を去る前にやるべき事がある。


 銀色の欠片。


 この拠点の周辺に散らばっていた銀色の欠片。


 集める。


 欠片を集める。


 自分の手では触らないように魔獣の骨で作った二本の棒で挟み込んで拾う。


 欠片を拾っていく。


 そして、その欠片をつなぎ合わせると小さな銀色の腕輪のように見えた。


 銀色の腕輪。


 思い出す。


 そうだ。


 これは過去との楔。


 超えるべき過去。


 周囲をマナの壁で覆う。


 そして手を伸ばす。

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