252 形
蠢く。
這う。
ぐちゃりぐちゃりと嫌な音を立てながら体を動かす。
体を手に入れたからか、遠くに無数のマナの輝きが蠢いているのが見えるようになった。ここに生息している魔獣だろう。
空腹を覚える。
これも体を得たからだろう。
そうだ、お腹が空いた。
空腹だ。
食べる物が必要だ。
食べる。
そう、食べる、だ。
遠くに見えるマナの輝き。
這う。
ずるずるとマナの輝きを目指して這い続ける。
時間をかけ、ゆっくりと這い続ける。マナの輝きを目指して這う。
空腹だ。
蠢く輝きの中、一番近くの輝きを目指して這う。
這って進む。
ぐちゃりぐちゃりと這う。
近寄っても相手は動かない。こちらを動く必要がないと思うほど遙か格下に見ているのか、それとも体を動かすことが出来ないほど弱っているのか分からない。分からないが、これは好機だ。
体に取り付き、その体を這い上がり、そして喰らう。捕食する。マナを吸い上げ、喰らっていく。
巨大な、その何かは、一瞬体をぶるりと震わせ、そのまま崩れ落ちた。
少しだけお腹が膨れる。でも、足りない。
もっと、もっと、もっと必要だ。
空腹だ。
探す。
マナの輝きを探す。
這い、動き、マナの輝きを探す。
動きの少ない、その何かに取り付き、喰らう。マナを吸い上げる。
空腹を癒すために、何度も、何度も繰り返す。
やがて、近くにはマナの輝きが見えなくなった。
まだ足りない。
もっともっと食べないと、空腹で死んでしまいそうだ。
這う。
マナの輝きを目指し、他の魔獣を探して蠢く。
新しい輝きを見つけ、そちらを目指して這っていく。
そして、先ほどと同じように飛びかかる。しかし、マナの輝きはそれをするすると回避する。
素早い。
這って追いかけるが、とても追いつけない。
離れていく。
マナの輝きが離れていく。
このままでは駄目だ。
追いかけるための足が必要だ。
……足。
そうだ、足だ。
這うのではなく、足で歩く。走る。
そうだ、なんで忘れていたのだろう。
足が必要だ。
捕食し、ため込んだマナを使い、足を作る。
追いかける足。
作った足を使い、走って追いかけ、取り付き捕食する。
マナを吸い上げ、喰らう。
捕食する。
喰らう。
喰らう。
喰らう。
でも足りない。
まだまだ空腹だ。
しかし、いつの間にか近くにマナの輝きが見えなくなっていた。
このままでは飢えてしまう。
もっともっと食べないと……。
マナを求めて歩く。
新しいマナの輝きを見つけ、そちらへと走る。
捕食するために飛びかかる。
しかし、強い力によって吹き飛ばされる。
べちゃりと体が何かに叩きつけられる。
痛みはないが、驚きがある。
攻撃を受けた? このままでは捕食できない。それどころか、逆にこちらが捕食されてしまう。
何か、何か、攻撃を受け止めるような手が、そう手が必要だ。
手。
そうだ、何故、忘れていたのだろう。
手がなければ道具も扱えない。
手は必要だ。
捕食し、ため込んだマナを使い手を作る。
ぐちゃぐちゃと体が蠢き、手が作られていく。
ああ、手だ。
手を作り、先ほどの輝きを目指す。
輝きが何かを振り回す。それを手で受け止め、そのまま動けないように掴む。そして、取り付き、そのまま捕食する。マナを吸い上げる。
喰らう。
でも、足りない。
まだまだ空腹だ。
お腹が減ったままだ。
もっと食べないと飢えて死んでしまう。
マナの輝きを探す。
もっと、もっとだ。
すると高い位置にマナの輝きが漂っているのが見えた。でも、ここからは届かない。見えているのに、届かない。
手を伸ばす?
足を伸ばす?
違う。
飛べば良い。
空を飛ぶための翼が必要だ。
捕食し、ため込んだマナを使い翼を作る。
空を飛ぶための翼だ。飛ぶには大きな力が必要になる。でも、大きな翼は邪魔になる。だから、小さく収納できる翼を作る。
作った翼を広げ、飛び上がる。
翼を羽ばたかせて飛ぶ。
空中を漂っていたマナの輝きに取り付き、捕食する。マナを吸い上げ、喰らう。
喰らう。
喰らう。
でも、足りない。
まだまだ空腹だ。
食べて得られるマナよりも消費が大きい。もっと要領よく、効率的にマナを得ないと空腹で死んでしまう。
もっと狩りを効率よく……。
効率?
それには知識が、知恵が……。
そうだ、考える頭が必要だ。
考える力。
何で忘れていたのだろう。
考えよう。
人には考えるための頭が必要だ。
そうだ、人だ。
僕は……人だ。
頭を、目を、口を、耳を、人としての形が必要だ。
作ろう。
そして、考えよう。




