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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
終焉迷宮

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236 最高の品

 拠点が発展していく。


 最初の頃、苦しかったのが嘘のように、とても住みやすく、そして、とても居心地が良い。


 銀のイフリーダとの約束が無ければ迷宮に向かうこと無く、この場で、このまま暮らしたいくらいだ。

 だけど、迷宮が自分を呼んでいる。


 多分、銀のイフリーダとの約束が無かったとしても、自分はいつか、迷宮に向かったことだろう。それが今になったというだけのことだ。


 そして、そんな銀のイフリーダの姿を最近、見かけなくなった。


 ヒトシュの地では銀のイフリーダは隠れていた。ここでも同じなのだろうか? この拠点が発展すればするだけ、銀のイフリーダが姿を現さなくなったように思う。


 まだまだ教えて欲しいことがあるのに……。


 もっと強くなりたいのに。


 何かあるのだろうか?


 ……。


「ソラ王、こちらなのです」

 語る黒さんの案内で皆の元へと向かう。いつの間にか、リュウシュの皆さんも自分のことを戦士の王ではなく、ソラ王と呼ぶようになった。それだけ認められたということなのだろうか。


 そして、城の広間には皆が集まっていた。


 リュウシュの皆さん、亡霊、カノンさんを含むメロウの皆さん、セツさんとヨクシュの皆さん、最後に金色のレーム。この中で自分を除くと唯一のヒトシュである金色のレームだが、他種族ばかりの、この中でも腕を組み、堂々とした姿で立っている。こういう場になれているかのような雰囲気だ。


 皆が集まっている。


 まずはカノンさんたちメロウが動く。


「これをソラ王に渡すのだ」

 カノンさんたちから服を受け取る。


「これは?」

 カノンさんが笑い、頷く。

「メロウの糸から作られた着物なのだ。マナの歪みに強く、丈夫なのだ」

 それは右と左で重ね合わせ、腰に帯を巻き付ける形の服だった。それは輝くように純白の美しい布で作られている。そして、肌触りが良い、とてもすべすべだ。


「ありがとうございます」


 次にセツさんたちヨクシュが動く。


「うちらから、これだぜ」

 それはマントだった。


「うちらの、里の者、みんなの羽から作ったマントだぜ」

 青、緑、黒、白、様々な色の羽が混ざり合い虹色に輝くようなマントだ。


「うちらは丈夫だからさ。その羽なら、ちょっとやそっとの刃物なんて弾き返すぜ」

 セツさんが笑い、翼を曲げ拳を突き出し、

「うちらの王に相応しいマントだろう?」

 そう言って嘴を曲げで笑う。


 ヨクシュの皆の翼が、気持ちが詰まったマントだ。確かに、ヨクシュの皆さんの王に相応しいマントかもしれない。


「今度は王としてヒトシュの地に向かうと聞いたのだ。王には王として相応しい格好があるのだ」

「だよな! うちらからの気持ちだぜ」

 セツさんとカノンさんが微笑む。


 確かに、この格好ならヒトシュの地にあっても恥ずかしくないだろう。


 王の出で立ちだ。


「ああ。となると次は私だよな」

 亡霊がフードを取り、こちらへと歩いてくる。その手には鞘に入った細く、長い剣があった。


「これは?」

 亡霊が頷く。

「ああ、剣さ。抜いてみてくれよ」


 亡霊から細長い剣を受け取る。握った柄は、以前と同じ、馴染みのある物だった。


 折れた剣。


 最初から自分の手元にあった剣だ。


 ここは変わらないんだ、と思うと少しだけ嬉しくなってくる。


 鞘から剣を引き抜く。


 そこにあったのは透明な刃だった。その煌めきは以前の氷雪姫を思わせる。


 だが、以前の氷雪姫よりも細く、そして長い。


 細身なのに自分の背丈よりもかなり長い剣だ。斜めにしても引き摺ってしまいそうな長さだ。


「以前の氷雪姫に似ています。でも、細くて少し脆そうな感じがします」

 それを聞いた亡霊が笑う。


「ああ、メロウの技術が入っているのさ。確か、ザンコウ? そんな感じ、か?」

 その亡霊の言葉をカノンさんが引き継ぐ。

「うん。メロウの全てを斬る技術の集大成なのだ」

 全てを斬る、か。


「ああ。そうらしい。そして……」

 亡霊が説明しようとした横からセツさんが割り込んでくる。

「使っているのはうちらの里で採れる貴重な素材だぜ」

 そのセツさんを押しのけるように亡霊が前に出る。

「ヨクシュの里にある大樹の樹液を固めたものなんだよ!」


 樹液から刃を作った?


「そうなんだぜ。金属よりも強く硬い、そしてマナの宿る蝋の結晶だぜ」

 セツさんが得意気に翼を振り回している。


「ああ、そうだな。余程のことでは折れないから、その細身でも大丈夫なんだよ」

 亡霊が獣耳をピクピクと動かし笑う。


 折れない剣。


 もう折れることはない。


「リュウシュの技術と私の魔法鍛冶の技術、それにメロウの斬ることにこだわった繊細な技術、ヨクシュの秘宝、全てが合わさった最高の剣さ!」

 亡霊が胸を張る。


 その亡霊の横で炎の手さんが首を横に振る。

「それだけではないのです。リュウシュの里に鍛冶の技術を伝えたヒトシュの技術があってこそなのです」


 ヒトシュがリュウシュに鍛冶の技術を伝え、それを昇華し、亡霊の魔法鍛冶によって魔法の金属が加工され、メロウの技術によって磨き上げられる。そして、その剣にはヨクシュの里の素材が使われている。


 全てが詰まった剣。


「名付けてマナの剣さ!」

 亡霊が叫ぶ。


 マナの剣。


 最高の剣だ。


「大切にします」

「いやいや、大切にせずにしっかり使ってくれよ」

 亡霊が笑う。


 確かにその通りだ。


 これで剣は手に入った。


「次はこれなのです」

 炎の手さんが用意してくれたのは槍だった。


 だが、その槍は金属では無く、木製だった。


 刃まで木で作られている。


「これは?」

 炎の手さんの横ではセツさんが得意そうに翼をはためかせている。


「その槍の素材もヨクシュの里から譲り受けたものなのです」


 これもヨクシュの里から?


「うちの棍と同じ素材なんだぜ。ヨクシュの力にも耐える世界樹の枝から作られているのさ!」

「ええ、名付けて世界樹の槍なのです。その槍は持ち主のマナを力として刃とするのです」


 持ち主のマナを使う?


 受け取った世界樹の槍を握る。


 そして、神技や神法を使う時の要領でマナの流れを、自分の中のマナを流し込むように握ってみる。


 すると、世界樹の槍が輝きだした。


 そして、その木で作られた刃の先から、それを覆うように光り輝く刃が生まれる。


 自分のマナで作られた刃。


 自分の中のマナを消費する分、使い続けるのは難しいかもしれない。だけど、これなら……。


 凄い力を感じる。


 これなら、どんな相手にだって勝てる気がする。


 あの、苦戦した鬼にだって勝てそうだ。


 そう、これなら自分の力で戦える。


「ありがとうございます」


 皆から力を貰った。


 これならヒトシュの地でもやっていけるはずだ。


 全ての準備は整った。

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