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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
終焉迷宮

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231 謎の襲撃

「カノンさん、とても美味しかったです」

 お礼を聞いたカノンさんはとても嬉しそうにしている。

「うん。炒め物を美味しく作るコツは油なのだ」

 油を使った食べ物!


 手間を加えた料理!


 本当に素晴らしい。


 カノンさんの種族であるメロウは自分たちと比べるとかなり技術が進んでいるようだ。これからも、どんどん交流して技術を教えて欲しい。


 食事も終えて、元気いっぱいだ。さて、これからどうしようかな。


「レームさんはどうしますか?」

 金色のレームに確認をする。金色のレームは腕を組み、頭を下げ少し考え込む。


 そして、ゆっくりとその顔を上げた。

「ソラ王がどれだけの戦力を持っているか見たいと言ったらどうだろうか?」

 その顔は何処かこちらを――こちらの何かを確かめているかのようだった。


 戦力、か。


 ここで戦える人なんて自分と戦士の二人、語る黒さんにスコルくらいだ。後は新しく配下になったセツさんかなぁ。

 生産組から戦士になった二人は、木こり仕事や職人の補助などばかりなので、いきなり戦うのは難しいだろう。

 金色のレームは自分が兵隊でも持っていると思っているのだろうか?


 見られて困るような戦力なんてない。隠す必要は無い。

「ええ、構いませんよ」

「な、なんと」

 金色のレームは驚いている。多分、素直に見せてはくれないと思っていたのだろう。


「案内します。それでは、そのせ……」

 金色のレームを案内しようかと思った、その時だった。生産組と思われるリュウシュさんが食堂へと駆け込んできた。


「戦士の王、ヨクシュが戦士の王に会わせて欲しいとやって来たのです」

 へ?


 ヨクシュ?


 ちょっと前にセツさんの親であるカンさんが帰ったところだと思ったんだけど、何があったんだろうか。


「へー、何かあったのかな」

 ヨクシュという言葉に興味を持ったのかセツさんが隣にやって来る。


「とりあえず、行ってみましょう。案内を頼みます」

 やって来たリュウシュさんに案内を頼み、そのやって来たヨクシュさんのもとへと急ぐ。


「ソラ王、何があったのだ?」

 その自分の横に金色のレームがやって来た。

「分かりません。何かがあったようです」


 そして、城の外へ。そこで待っていたのは緑色の羽毛を持ったヨクシュ――先ほど里に帰ったはずのカンさんだった。


「なんだ、おやじじゃん」

 セツさんが棍を頭の後ろに回し呆れ顔を作っている。


「カンさん、先ほど帰ったと思ったのですが、何がありました?」

 カンさんが翼を折り曲げ頭を下げる。


「里へと帰る途中に、とあるものが見え、それを伝えるために戻ってきた次第です」

 とあるもの?


 何が見えたんだろう。

「何が見えたのでしょうか?」


 カンさんが頭を上げる。

「魔獣です。王よ、魔獣の群です」


 魔獣の群?


「それはどれくらいの規模ですか?」

「ここより東です。数は全部で三十ほどです。先頭は片目の大蛇、そして、その配下と思われる大蜥蜴が残りに、です」

 大蛇? 東の森?


 あの、かつて自分が戦った大蛇や蜥蜴の仲間だろうか。


「それは結構な数ですね。ちなみにカンさんはどれくらいの危険度だと思いますか?」

 そこでカンさんは翼を広げ、ニヤリと笑う。

「娘なら十を屠るのは容易いです。里のものを呼べば殲滅も容易いです」

 なるほど。


「おいおい、おやじ。うちなら一人で何とかしてやるぜ」

 セツさんは棍を頭の後ろに回したまま嘴を曲げ、ニヤリと笑う。

「うん。私もいるのだ。ならばセツが十、私が十、ソラが十で殲滅可能なのだ」

 カノンさんは腕を組み、不敵に笑っている。


 この二人は戦闘狂だ。


 量産品の剣しか無い今の自分を同じ戦力とされるのは、ちょっと厳しい気がする。ま、まぁ、でも、何とかなりそうな感じはする。


「ソラ王、この者たちはなんと言っているのだ?」

 何故か一緒に来ていた金色のレームが不安そうな様子で聞いてくる。

「ここに魔獣の大群が迫っているようです。数は三十ほどで、片目の大蛇が率いているそうです」

 それを聞いた金色のレームが驚き、そして申し訳なさそうな顔をつくり頭を下げる。


「ソラ王、申し訳ない。その魔獣には覚えがある。自分たちを襲った魔獣だろう。自分の後を追ってきたのだろう。自分が生き延びたことで、ソラ王に迷惑を……」

 金色のレームの握った手が震えている。

「かくなる上は、この命、捨てでもっ!」

 金色のレームが顔を上げ、決意を秘めた表情でこちらを見る。


「なぁ、王様。このヒトシュはなんて言っているんだぜ?」

 セツさんは今から始まる戦いが待ちきれないのか棍を振り回して楽しそうだ。

「えーっと、このレームさんが、その魔獣を呼び寄せてしまったらしいです」

「へぇ! 粋なことをするぜ! うちの力を見せつける場を作ってくれて感謝だな!」

 セツさんが翼のついた手で金色のレームの背中を叩いている。


 背中を叩かれた金色のレームはよく分からないと言う表情で、セツさんとこちらを見比べている。


「レームさん、任せてください。多分、何とかなると思います」

 そして、カンさんの方へと振り返る。

「セツさんもいますし、こちらの人員だけで何とかなりそうです」

「おお、さすがは王です」

 カンさんが翼を折り曲げ、こちらを見たまま頭を下げる。その表情は笑っていない。もしかすると、こちらの力を確かめようとしていたのかもしれない。


 もし、力を貸して欲しいと言っていれば……。


 考えすぎだろうか。


「カンさんは里の方へ」

「ええ、では、また」

 カンさんが少し離れ、その翼を大きく広げてしゃがみ込む。そして、竜巻のような渦巻く風とともに空へと舞い上がった。そして、西の森へと飛んでいく。


 空を飛べるだけで、今回のように上空からいち早く異常を見つけることが出来る。うらやましいほどに便利な力だ。


 そんなヨクシュの皆さんが協力してくれるようになったのは、この拠点の大きな力になるだろう。


 では。


 ささっとやって来た魔獣たちを倒してしまおうか。


 量産の剣だけでどれだけ戦えるか不安だけれど、カノンさんとセツさんにがっかりされないくらいは頑張ろう。

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