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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
終焉迷宮

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230 いきぬき

「それでレームさんはどうしますか?」

 金色のレームが首を傾げる。

「どう、とは?」

 とりあえず、これからどうするか、です。


 と、その時、金色のレームのお腹がぐぅと大きく鳴った。

「とりあえず、食事にしましょうか」

 金色のレームは少し恥ずかしそうに頬を掻いている。

「ああ、ソラ王、それは助かる。ただ、その、贅沢を言うわけでは無いが、その、キノコは、その、悪いわけでは無いが、いや、そうだな、好き嫌いというか……」

 この金色のレーム、自分が戻ってくるまでの間、食事は全てキノコだったのかもしれない。


 そういえば、最近は、狩りで取れる肉の量も増え、畑では植物を育て始めたので、随分とキノコの消費が減った気がする。

 もしかすると、リュウシュの皆さんは、その余ったキノコを……。


「分かりました。キノコ以外にしましょう」

「キノコ以外があったのか……」

 何やら金色のレームは衝撃を受けている。


 えーっと、食堂は何処だったかな。


 城の中は自分がいない間にも拡張されていたみたいで、何処に何があるのか分からない。


 途中で出会ったリュウシュさんに食堂への道を聞く。

「食堂への道を教えてください」

 お昼が近いのでリュウシュの皆さんも起き始めてきたようだ。良かった。

「ああ、戦士の王、それなら、この奥を進んで次を右なのです」

 本当に広くて大変だ。


 って、ん?


 さっきほど、食堂の場所を聞いたリュウシュの人に見覚えが無い。


 もしかして、新しくリュウシュの里からやって来た人だろうか。自分がヒトシュの地に行っている間にやって来たのかもしれない。


 どんどん人が増えて、この拠点も賑やかになっていく。


 食堂に向かうと、そこにはカノンさんとセツさんの姿があった。

「うん? ソラなのだ」

 カノンさんがこちらに気付き、顔だけ振り返る。どうやら何かの料理をしている最中のようだ。


「な、魔獣!?」

 そして、その二人を見て衝撃を受けている金色のレーム。確かに知らない人から見ればカノンさんやセツさんの姿は恐ろしいものなのかもしれない。でも、魔獣と間違えるのは感心しない。


「魔獣ではありません。こちらはメロウという種族のカノンさん、それとヨクシュという種族のセツさんです」

「そ、そうなのか?」

「そうです。魔獣だなんて言って、怒らせたら、後が怖いですよ」

「そ、そうか」

 金色のレームが頬を引きつらせ乾いた笑い声を上げている。


「なんだか、ソラが失礼なことを言った気がするのだ」

「気のせいですよ」

 カノンさんは鋭い。言葉は分からなくても雰囲気で察したのかもしれない。でも、失礼なことは言っていないから大丈夫だ。


「自分たちも食事に来ました。カノンさんは何を作っているんですか?」

「うん。そうか、ソラも食事なのだな。それならば、ソラの分も私が作るのだ」

 カノンさんが自分たちの分も食事を作ってくれるようだ。


「え? うちの分は? なんで王様には作るのに、うちの分は作ってくれないんだよ」

 セツさんが羽をパタパタと動かして抗議している。

「うん。当然なのだ。ソラは王様で偉いから作ってあげるのだ。セツのためにつくる義理は無いのだ」


 食堂には沢山の机と椅子が並んでいる。そして、その食堂の奥には煉瓦を積み上げ、その中に火が燃えている台と調理のための鍋が置かれていた。


 鍋の中には炊き上がった天舞が山盛りに詰まっている。


 カノンさんは取っ手のついた鉄の皿に、その炊き上げた天舞を入れる。そして、そのまま鉄の皿を火にかける。


 炊き上げた天舞をさらに調理する?


 カノンさんが赤い色の塩を振りかけ、さらにその上に乾燥させた葉っぱを砕いて振りかけていた。

 何の葉っぱだろうか? とても良い香りがする。


 魔獣の肉も入れ、天舞と一緒に熱を加えていく。


 とても良い香りが漂ってくる。これは美味しそうだ。


「出来たのだ」

 カノンさんが完成した料理を皿に分けてくれる。


 自分の分、金色のレームの分、カノンさんの分、そしてセツさんの分。カノンさんは、ちゃんとセツさんの分も作っていたようだ。


 セツさんは大喜びだ。


 椅子に座り、用意された木のスプーンで炒めた天舞を掬う。そして、ゆっくりと口に入れ、噛みしめる。


 ……。


 美味しい!


 炒めてパラパラになった天舞とほんのりの塩味、それに香草の香りと肉の風味、全てが混ざり合い、ともに高め合っている。


 これは美味しい!


 となりを見れば金色のレームが夢中になってガツガツと食べていた。


「凄いじゃん。メロウの調理に対するこだわりはすげぇーなー」

 セツさんも楽しんで食べている。

「うん。どうだ、凄いだろう」

 カノンさんは腕を組みとても得意気だ。


「はい。凄いです。天舞が何倍も美味しくなったと思います」

「うん。素材も良いが、こうやって調理して料理になれば、さらに美味しくなるのだ」

 カノンさんも食事を始める。その体格のため、椅子に座ることが出来ないので蜘蛛足を折り曲げ、机と高さを合わせて食事を行っている。と言っても料理を食べているのは蜘蛛の体の方だが……。


「これは美味しい! こんなにも美味しいものを食べたのは生まれて初めてだ! 彼女は素晴らしい料理人だ!」

 一気に食べ終えた金色のレームがカノンさんに称賛を贈っている。

「その外見に驚かされたが、彼女は料理人だったのだな! 雇って帰りたいくらいだ!」


「うん。ソラ、そこのヒトシュは何を言っているのだ?」

「カノンさんの料理を褒めていますよ」

 褒めているのは間違いない。


「ソラ王、彼女を雇うことは出来ないだろうか? 是非、国でも料理を作って貰いたい」

 どうやら、金色のレームは、とてもこの料理を気に入ったようだ。だが、一つ勘違いをしている。


「レームさん、彼女は料理人ではありません。戦士です。それも他に並ぶものが無いくらいの、恐ろしく手練れの戦士です」

「な、なんと……」

 金色のレームは驚いている。


 うん、カノンさんは見た目通りに強力な戦士だよ。


 朝のカノンさんとセツさんの戦いを見ていたら、驚いて倒れるんじゃないだろうか。


 まぁ、ここで暮らすなら、追々、分かることかな。

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