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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
終焉迷宮

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213 話にならない

 舗装された道を歩いて行く。時々、すれ違う人々がこちらへといぶかしむような視線を向けてくるが気にしないことにする。


 市民証を手に入れない限り、こういった反応が消えることはないだろう。


 だが、


 だが、だ。


 自分の目的はあくまでも迷宮の攻略だ。見知らぬ人からの視線なんてどうだって良い。気にするだけ無駄だ。


 優先順位を間違えてはいけない。


 この都市に入った時にも見えていた大きな四角い建物を右手に、さらに北へと歩いて行く。


 神官の青年に教えて貰った通りに分かれ道を左へと進む。そして、そのまましばらく歩き続けると前方に大きな壁が見えてきた。何かを隠すように連なった壁が作られている。


 何処までも壁が続く。


 壁と併走するように北へと歩いて行く。


 徐々に道を歩く人の姿が減ってくる。


 そして、普通の――ここで生活をしていると思われる人たちや、商売を行っているような人たちの姿が消え、ガラの悪い連中が増えてくる。


 剣や槍、弓などで武装した人たちばかりだ。それは戦うことを仕事としているような人々――この先にあるのが迷宮で間違いなさそうだ。


「ちっ、巡礼者かよ」

 武装した集団の中には自分を見て舌打ちをしている輩もいる。ここでも好意的には見られていないようだ。荒くれ連中でも反応は同じ、か。


 武装した集団を無視して歩く。


 しばらく歩き続けると大きな門が見えてきた。石を積み上げて作られたと思われる門に巨大な金属製の扉が取り付けられている。


 扉は閉じられているようだ。


 そして、その門の横には、槍を持った一組の男女が門を守るように立っていた。迷宮の出入りを管理している人たちだろうか?


 門の横にも道は続いているが、そちらは北側ではなく東側へと延びている。そちらは街へと戻る道だろう。


 ここが終点だ。


 門へと近づく。


 門を守っている二人が手に持っている槍を構えた。警戒されている。


「ここは迷宮ですか?」

 門を守っているその二人に話しかけてみた。


 ……。


 反応がない。


 もう一度、話しかけてみよう。


「この先が迷宮でしょうか?」

 門番の一人、女性の方がギロリとこちらを睨む。

「えーっと迷宮が……」

「そうだ」

 女性がこちらを睨み付けながら答えてくれる。


 迷宮で間違っていなかったようだ。


「迷宮に入りたいのですが……」

「許可証を」

 女性の反応は冷たい。


「えーっと、許可証ですか?」

「許可証を」

 これ以上会話をするつもりなんて無いという反応だ。


「その許可証は何処で手に入りますか?」

 女性からの返事はない。


「その、迷宮に入りた……」

 と、そこでもう一人の門番、男性の方が大きなため息を吐き出した。

「あのな、どこで剣を手に入れたか知らないが、それだけで戦えるとか思わない方がいいぞ。魔獣を狩ってお金を稼ぎたいって気持ちは分かるがな、死ぬだけだ」

「いや、ちが……」

「遊ぶなら余所でやってくれ。こっちは仕事中なんだ」

 男性の方は普通に喋ってくれる。女性の方よりも人間味のある喋り方だ。


 だけど、この反応は……。


「いや、遊びではなく迷宮に……」

「だから、な! 分かれよ。こっちは流民の子どもの遊びには付き合ってられないんだよ。子どもだからって許されると思うなよ。これ以上、仕事の邪魔をするなら子どもでも容赦せんぞ」


 ……。


 駄目だ。


 話にならない。


 最初から話を聞く気なんてないという態度だ。


 無理矢理、押し通るか?


 ……。


 周囲を見回す。


 武装した連中は面白そうにニヤニヤと笑いながらこちらを見ている。数は十より少し多いくらいか。門番を含めても何とかなりそうな数だ。


 だが……。


 自分はここに争いに来たわけじゃない。強行突破は最後の手段だ。


 まだ早い。


 とりあえず、一度、あの神官の青年が言っていた神殿とやらに行ってみよう。彼から何か良い方法を教えて貰えるかもしれない。


「また来ます」

 いったん戻ろう。


「ここは遊び場じゃないんだ。もう来るな」

 門番の男性は何処か呆れているような様子だ。

「許可証……」

 女性の方はこちらを見て同じことを呟いている。この女性は生きている人なのだろうか。人形だと言われても信じてしまいそうだ。いや、それはどうでも良いか。


 ……はぁ。


 ホント、ここは碌でもない場所だ。


 武装した集団はとぼとぼと帰っていく自分を見て笑っている。


 本当に碌でもない場所だ。


 来た道を戻り神殿街とやらを目指して歩く。


 疲れた……。


 少し空腹を覚えたので背負い袋から干し肉を取り出し、それを囓りながら歩く。日はまだまだ頭上にある。だが、いつまでもそこにあるわけじゃ無い。今日の眠る場所も探さなくてはならない。


 最悪、この都市から出て野宿することになるだろう。


 最悪の気分だ。


 神官の青年と別れた場所まで戻り、その先へと進む。


 長い坂を登っていく。坂の途中には民家と思われる建物と露天が並んでいる。並んでいる露天の一つにはみずみずしく美味しそうな果物が置かれていた。

 干し肉を囓って口の中がパサパサになっている今の自分にはとても美味しそうに見える。


 ……はぁ。


 多分、話しかけても譲って貰えないだろう。それどころか話しかけたことによって、また面倒ごとが起こるかもしれない。


 腰に結びつけた水筒の水を一口だけ含む。


 今は我慢だ。


 歩く。


 そして坂を登り切ると磨かれた石柱が並ぶ建物の姿が見えてきた。


 ここが神殿街のようだ。

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