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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
終焉迷宮

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209 少し不穏?

 金属鎧の集団が完全に見えなくなってから立ち上がる。

『何の集団だったんだろう』

『ふむ。我にも分からぬのじゃ』

 珍しく銀のイフリーダから返事がある。しかし、その姿は見えない。


『とりあえず、もう大丈夫そうだね』

 道に戻り、北へと歩く。あの金属鎧が何処に向かっているか気になるが、それはこの地のことを何も知らない今の自分が行うべきことじゃない。


 優先順位は迷宮に向かうことだ。間違えてはいけない。


 しばらく歩き続けるが人には出会わない。


 人の姿が見えないのは、先ほどの集団が関わっている可能性が高そうだ。


 ある程度歩いたところで道から外れ、雑草の中に降りる。


 そろそろ食事にしよう。


 背負い袋から木片を取り出し、それを火口として火を起こす。周囲に燃やすことが出来るものは沢山ある。火種には困らない。


 雑草を引き抜き火種として追加する。少し嫌な煙が立ち上がるが、それは我慢する。火口として使える乾燥させた木片も貴重だ。使い切るわけにはいかない。


 鍋に天舞と水を入れ炊く。天舞が炊き上がるまで干し肉を囓りながら待つ。その間も人の姿は見かけなかった。


 簡単な食事を終え、火の後始末を行う。


 さらに北を目指して歩き続けると建物の姿がいくつか見え始めた。


 青髪の少女の話では迷宮のある場所まで北に三日ほどかかるということだったが、それは彼女の勘違いだったのだろうか。


 建物の近くまで歩く。


 並んでいる建物はあまり大きくない。平屋の建物ばかりだ。壁はブロックの形にした粘土を焼き上げ、それを積み上げて作っているようだ。煉瓦造りの建物だ。


 煉瓦……。


 学ぶ赤さんに頑張って作って貰ったことを思い出す。あれからまだそんなに日数が経っていないのに、随分と昔の出来事のように思える。ちょっと懐かしい。


 建物の裏には小さな畑の姿も見える。


 そして、この建物の中には人の気配がある。


 人がいる。


 しかし、その『人』たちが建物から出てくる様子はない。まるで何かに怯えているかのようだ。


 入り口と思える扉を叩いてみる。


 反応がない。


 いや、中の人は反応している。ただ、そこから動く気配がない。


 ……。


 これは駄目だ。


 出来れば、何か情報を得たかったのだけれど、これは仕方ない。建物の中に無理矢理入ろうとすれば争いになるかもしれない。


 今回は間が悪かったと思うことにしよう。


 ここで待つのも――時間を無駄にするのは得策じゃない。


 進もう。


 道を北上する。


 さらに歩き続ける。


 北上を続けると建物の姿はまばらになり、やがて見えなくなった。ここは迷宮に関する何かだと思ったが、どうも違っていたようだ。


 建物の数は……多くなかった。見えるだけだと十数個くらい?


 小さな規模?


 旅の途中の休憩場所? もしかすると、そんな感じの用途として使われる小さな村だったのかもしれない。


 先に進もう。


 歩く。


 歩き続ける。


 日が傾き始めたところで野営の準備を行う。道から外れ、周囲の安全確認、食事の準備、寝る場所の確保……。


 相変わらず周辺に魔獣の気配はない。


 食べられそうな魔獣でも生息していれば、貴重な食料を消費しなくても済むのだけれど……。


『全くいないということは無いと思うんだけどなぁ』

 独り言を呟く。銀のイフリーダからの返事はない。独り言だから仕方ない。独り言だからね。


 食事の後は火を消し膝を抱えて眠る。


 ……。


 ……。


 ……うん?


 肌寒さに目が覚める。


 まだ薄暗い――周囲の雑草の上には朝露が光っている。


 火、火……を起こそう。


 背負い袋から木片を取り出し、それを削って火口にする。周囲の雑草は朝露で濡れているから火口としては使えない。


 火が大きくなってから濡れた雑草を追加する。濡れているからか、昨日よりもさらに嫌な臭いの煙が立ち上る。


 ……我慢する。


 大きくなった火で暖をとりながら食事の準備を行う。昨日と同じように鍋に天舞と水を入れて炊く。炊き上がるまでの間、干しキノコを囓る。


 水の消費量に少し不安を覚える。一応、まだ後三日分ほどの水は残っているが、途中で補給できないと危険かもしれない。使えば使うだけ荷物が軽くなって、歩きやすくなってはいるのだけれど……。


 そういえば畑の姿は見えたのに『水』を見かけなかった。川でも井戸でも、畑があるのなら、何処かにあったはずだ。水なしでは畑が作れない。


 ……いや、それ以前に人の生活には水が必要だ。


 戻って水を貰ってくる?


 ……それもどうだろう。


 戻ったとして水が分けて貰えるとは限らない。それに建物から出てきて貰えないかもしれない。今は水に余裕がある。今貰っても……。


 迷宮までは三日の距離。


 それを信じて前に進もう。


 それに、だ。水を得るための手段が何かあるのかもしれない。


 歩こう。


 火を消し、道に戻る。


 北へ。


 北へ歩く。


 二日目も一日中歩き続け、日が落ちたところで野宿を行う。


 三日目。


 しばらく歩き続けると、道が変わった。


 舗装されている。


 これは石だろうか?


 何か硬いものが敷き詰められ平らになっている。歩きやすい。


 相変わらず人の姿は見えないが、道が変わったのは大きな変化だ。


 人が住んでいる場所が近いはずだ。


 歩く。


 さらに歩き続けると前方に建物が見えてきた。それに合わせて人々の話し声――喧噪が聞こえる。


 人だ。


 人が生活している。


 しかも、一人や二人じゃない。多くの人の声だ。


 やっと辿り着いたのかもしれない。


 壁や人々の出入りを制限するような門などはない。


 煉瓦造りの建物が、布張りの天幕が、そして色々な人々の姿が見えてくる。


 ここが迷宮のある場所、か。


 辿り着いた。

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