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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
終焉迷宮

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206 確認をしよう

 青髪の少女から話を聞く。


 聞くこと、聞かないと駄目なことはいくつかある。


「話を聞いても良いでしょうか?」

 青髪の少女は首を傾げている。

「答えられることなら?」

 もしかすると何を聞かれるのだろうか、と身構えている?


「簡単なことです。あなたを故郷に送り返すにあたって、どれくらいの距離があるのか教えて欲しいと思ったんです。それに合わせて食料の準備も必要になるので」

 青髪の少女が首を戻し、ぽんと手を叩く。


「それなら、この禁忌の地から抜けるところまで送っていただければ充分です?」

 青髪の少女は自分の中の何かを確認している様子で悩み首を傾げている。


「えーっと、この地を抜ける、ですか?」

 自分の言葉がよく分からなかったのか青髪の少女はますます首を傾げている。ねじ切れないか心配になるほどの傾げ方だ。


 そして、またぽんと手を叩く。

「はい? この地? この禁忌とされた禁域のことです?」

 禁忌であったり、禁域であったり……この地というのが、この近辺のことで間違っていないのなら、自分はその外に出たことがない。この地とやらと人が住んでいる場所に何があるのかも分からない。


 それに、その境目なんて分からない。


「その、ここ……禁忌の地と外の境界って分かるものなんですか?」

 今更な気もするし、自分で確認すればすぐに分かることだが、聞けることは聞いておこう。


「はい?」

 青髪の少女が腕を組み、少し悩み、そして手を叩く。

「はい。厚い氷の壁に覆われ入ることが出来なかった……この地は禁忌の地と呼ばれていたはず?」

 青髪の少女がこちらに同意を求めてくる。同意を求められても、その時の状況が分からないのでなんとも言えない。


「えーっと、そうなんですね」

「はい、そうです。その境界は氷の壁が消えた今なら見れば分かるくらい?」

 青髪の少女がこちらに同意を求めてくる。同意を求められても、見たことがないから分からない。なんと答えたら良いのかも分からない。


「えーっと、その境界まではどれくらいかかるのでしょうか?」

「数日?」

 数日という曖昧な言葉にため息が出そうになる。これでは行程を予想しての計画が立てられない。


「正確な日数は分かりませんか?」

 青髪の少女が首を傾げる。よく分からないという表情だ。


「あの、青い大型の魔獣……」

「えーっと、スコルのことですか?」

 青髪の少女が頷く。

「そのスコルさんです? スコルさんなら一日でたどり着ける?」

 スコル?


 と、そこで気付く。


 気付くというか思い出した。


 この青髪の少女はスコルが連れてきた。その時、気絶していたはずだ。気絶していた人間が道程なんて分かるはずがない。


 これは聞くべきことを間違えていたのかもしれない。


 食料は数日分用意しておけば大丈夫……かな。少し不安だが、仕方ない。


「えーっと、後一つ聞いても良いですか?」

「はい?」

 青髪の少女は首を傾げている。キョロキョロと首を動かしているのは、この青髪の少女の癖なのかもしれない。


 そんなことを今更思うなんて、改めて気付くなんて――この青髪の少女とどれだけ接点がなかったのか。

「迷宮って知ってますか?」


 ヒトシュの住む場所にある『迷宮』――そこが最後の目的地。


 銀のイフリーダが示した道の終着点。


「迷宮です?」

 青髪の少女がこちらを見る。今まで何処を見ているのか分からなかったぽやんとしていた視線がこちらに定まっている。その眼光の鋭さは、姿が似ていなくても、真っ赤な猫耳――間違いなくローラの妹だと思わせるものだった。


「はい。知っていますか?」

 青髪の少女はこちらを見ている。その表情は、こちらの思惑が何処にあるのか調べているようにも見える。


「はい。知っています」

 青髪の少女がこちらを見ている。


「教えて貰うことは出来ますか?」

 そこで青髪の少女が手を叩く。表情がいつものぽやんとしたものに戻っている。


「自分で向かわれた方が良いと思います?」

 青髪の少女がぽやんとした顔で首を傾げている。

「そういう場所なんですか?」

「うーん? 見た方が早い?」

 見た方が早い?


「迷宮? に向かうのが目的?」

「はい。あなたを送った後はそのつもりです」

 青髪の少女がもう一度手を叩く。


「迷宮に向かうならお金を持っていた方が良い?」

 お金? どういうことだ?

「えーっと、それは?」

「いくつかマナ結晶を売ると良い……かな?」

 青髪の少女がこちらに同意を求めてくる。同意を求められても困る内容だが、言いたいことは理解した。


 うん、リュウシュの里で行ったことと同じだ。この情報は有用だ。追加で、いくつかマナ結晶を持っていくことにしよう。


「それとスコルさん?」

 青髪の少女が疑問符でも浮かんでいるような顔でこちらを見る。

「スコルですか?」

 青髪の少女が頷く。

「この禁域から出さない方が良い?」

 青髪の少女が首を傾げている。

「スコルを連れていくのが不味いってことですか?」

 青髪の少女が、そうそうという感じで何度も頷いている。


「争いになりそう?」

 争い? ……なるほど。ヒトシュの地では魔獣を連れ歩く人はいないようだ。無用な争いは避けた方が良い。この忠告には従っておこう。


「分かりました。スコルと一緒に進むのは、その境界までにしておきます」

 青髪の少女がほっとした様子で頷いている。


「それと……北に三日ほど迷宮のある都市」

 青髪の少女が言葉を続け、新たな情報を教えてくれる。


 ふむふむ。


 迷宮までは三日ほどの距離のようだ。思っていたよりも近い。スコルなら一日でたどり着ける距離――いや、ここから外に出た後は歩きになるのだから、スコルをあてには出来ない。その分の食料の追加が必要か。


 思ったよりも沢山の荷物を自分で運ぶことになりそうだ。スコルに運んで貰えないのは本当に痛い。


「分かりました。情報、ありがとうございます」

 欲しかった情報はこれで殆ど手に入ったはずだ。


 食料の準備も何とかなりそうだ。


「明後日には出発します。そのつもりでいてください」


 青髪の少女がゆっくりと頷く。


 さて、これで、か。


 ついにこの地から外に出る、か。


 そこでは何が待っているのだろうか。

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