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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
希望の谷
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186 皆を集めよう

 目が覚める。


 ここは……。


 うん、いつものシェルターだ。


 また夢を見た。


 謎の夢だ。


 ただ、それはこれから向かう場所、最後の強大なマナに関係している気がした。


 予感。


 うん、予感だ。


 外に出て大きく体を伸ばす。


 建物の中に居るので、窓から入り込んできた太陽の光でしか判断できないが、まだお昼には早い時間じゃないだろうか。


 さて、と。


「すいません」

 目の前を歩いていたリュウシュさんに声をかける。多分、生産側の人かな?


「戦士の王、どうしたのです」

「皆を呼び集めて貰っても良いでしょうか?」

「分かったのです」

 リュウシュさんは自分の仕事もあるだろうに、気軽に了承してくれる。


「あー、えーっと、鍛冶場に引き籠もっている人も含めて、皆でお願いします」

 話しかけたリュウシュさんが上を見て、少し考え込む。そして、微笑み頷く。

「分かったのです」


 その場でしばらく待っていると、皆が集まってきた。


「ガルル」

 何故か得意気なスコルの姿。


「戦士の王、どうしたのです」

 鍛冶作業の途中だったのか、金槌を持ったままの炎の手さん。


「あ、ああ? 何、何さ」

 引き籠もりを邪魔されたからか、ちょっとふてくされたような様子の亡霊の姿も見える。


「来たのです」

 二人に付き添うような走る手さんの姿もある。


「やって来たのです」

「皆を集めるとは、何か大きな狩りの準備の予感がするのです」

「食事の準備が途中になるのです」

 戦士の二人と語る黒さんだ。


「もう、もう、何なの!?」

「姉さま、落ち着いて……話を聞きましょう?」

 ぼうっとした顔で首を傾げている青髪の少女と何故か怒ったような顔をしている赤髪の猫耳も集まってくれている。


「これは大きなことが起こりそうな予感なのです」

 何故かつるりとした頭を掻き上げ、こちらを指差す奇妙な姿勢で笑っている青く煌めく閃光さん。


 みんなが集まる。


 うーん、今回は単純に、自分が動くのは面倒という理由でシェルターの前に集まってもらったけれど……。


 集まった皆を見る。


 皆が皆、適当に集まり、適当に座っている。


 これは、職人の皆さんに頼んで、それ専用の部屋を作って貰うべきかもしれない。何か集合の合図も決めておくべきだろうか。


 今後の課題かな。


 さて、と。


「すいません、忙しい中、集まって貰ってありがとうございます」

 皆がこちらを見る。


「もう、突然、呼ぶなんてどういうこと!?」

 そして、一番最初に反応したのは真っ赤な猫耳だった。周囲のリュウシュの皆さんが驚いた顔で真っ赤な猫耳を見ている。


 ……。


「ね、姉さま、注目されてます?」

 青髪の少女がゆっくりだけれど、何処か慌てた様子で真っ赤な猫耳の肩を揺すっている。


 ……。


 この真っ赤な猫耳、相変わらず空気が読めていない。


「それで何の用件なの?」

 腰に手を当て、胸を張った真っ赤な猫耳がこちらを見る。


 無駄に偉そうで空気が読めていない――ようにしか見えない。


 ……いや、違うか。


 わざと、か。


 あえて、真っ先に反応したことで、周囲に自分たちの存在がここにあると訴えているのだろう。周囲からの反応が反感でも、無視されたり、蔑ろにされたりするよりはマシ、か。


 そして、自分が目立つことで妹を守っている。


 多分、そこまで考えている。


 この真っ赤な猫耳は物事を知らないが、愚かでも考えることを知らないわけでもない。


 その証拠に、この真っ赤な猫耳が先ほど使った言葉は、リュウシュの皆さんに意味が伝わる――彼女たちが言うところの古代語だったからだ。


 学んでいる。


 言葉を学び、それを使いこなしている。


 ……。


 いや、今は、それは重要ではないよね。


 話を続けよう。


「最後の強大なマナが見つかりました」

 皆さんは首を傾げている。


 あー、そういえば、自分の目的が強大なマナを集めていることだとは伝えていなかったかもしれない。


「戦士の王、それでどうするのです」

 炎の手さんが代表し聞いてくる。


「現地に住むメロウという種族の皆さんと協力して、その強大なマナの獲得に向かいたいと思います。皆さんにはその準備と協力をお願いしたいです」

 リュウシュの皆さんが驚き、顔を見合わせる。


 皆の驚きは止まらない。


 大きな騒ぎになっている。


 そんな中、亡霊、それに赤と青の二人はよく分からないという顔をしている。


 リュウシュの皆さんだけが驚いている?


「戦士の王、一つ、確認したいのです」

 そんな中、炎の手さんが、ゆっくりと口を開く。

「その……メロウというのは、ヒトシュのような姿と虫のような硬い殻を持った種族ではないと言って欲しいのです」

 あ、知っているんだ。

「多分、それであってます」


 リュウシュの皆さんが固まった。

「えーっと、何か問題があるのでしょうか?」

「戦士の王、その種族は私たちを餌としか見ていない危険な種族なのです」


 ……。


 あー、ヒトシュだけではなく、リュウシュの皆さんにも被害が出ているのか。うん、食べてそうだもんなぁ。


 これは問題が起こるかな。


 どうだろう。


「大丈夫です。協力の約束はとりました。皆さんを襲わないはずです」

 大丈夫。


 多分、大丈夫なはずだ。


 確かに力こそ正義みたいな恐ろしい種族だけれど、約束は破らないはずだ。そういうのは大事にしてそうだった。


 うん、多分、大丈夫だ。


「わ、分かったのです」

 リュウシュの皆さんがほっとしたように頷いている。


 リュウシュの皆さんは割と勇敢な人たちだと思っていたけれど、それがこれだけ怯えるなんて、カノンさんの種族、どれだけ無茶苦茶をやったのだろうか。


「そして、そこにいる赤と青の二人に関係することですが、その場所が、あなたたちの探している聖者に繋がる場所です」

 真っ赤な猫耳と青髪の少女がこちらを見る。


「それって!」


 二人に頷く。


 約束だから。


 だから、この二人にも集まって貰った。


 情報は教えた。


 これで約束は果たした。

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