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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
希望の谷
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177 槍の修練

 スコルの背に跨がり雪原を駆ける。


 氷の女王を倒したことで降り積もった雪は随分と薄くなっているが、それでも完全に消えたわけではない。


 雪原を駆けていると、遠くに四つ足で駆け回る魔獣の姿が見えてきた。

「スコル」

 スコルの首筋を撫でる。

「ガルル」

 スコルが頷き、その速度を落としていく。


 魔獣の近くでスコルが足を止める。


 銀色の体毛を持った四つ足の魔獣の数は……二つ。普段よりは数が少ない。


 でも、練習にはちょうど良い。


 スコルの鞍に取り付けている緑鋼の槍を引き抜き、その背から飛び降りる。


「スコル、そこで見ててね」

「ガルル」

 スコルが頷く。


『うむ。存分に槍を振るうのじゃ』

 そのスコルの背には腕を組んで楽しそうにこちらを見ている銀のイフリーダの姿があった。


 扱うのは槍。


 そして、新しい神技の実戦。


 こちらに気付いた銀色の四つ足が動く。


 緑鋼の槍を両手で持ち構える。


 四つ足の銀色の一匹がこちらへと飛びかかってくる。


 ここ。


 ここ、だ。


 緑鋼の槍を斜めに、肩から足元へと伸ばすように構える。


 集中――


 そして、時の流れが圧縮される。


 ゆっくりと世界が流れていく中、迫り来る四つ足を待ち構える。その鋭く尖った爪を持つ前足を待ち構え、斜めに構えた緑鋼の槍を動かす。槍の柄をゆっくりと爪に沿うように合わせる。


 そして、回転させる。


 これでっ!


 しかし、間を見計らったはずの緑鋼の槍が弾かれ、そのまま銀色の四つ足に吹き飛ばされる。


 失敗したっ!


 自分の体が宙を舞う。


 痛みは……ない。


 でも、視界が回る。


 やばい!


 その時だ。

「ガルル」

 吹き飛んだ自分の体をスコルが咥え、そのままゆっくりと雪の上に着地する。そのまま雪の上に優しく下ろしてくれる。


「スコル、ありがとう」

「ガルルル」

 スコルが手助けしようか、という感じで吼える。首を横に振り、それを断る。


 スコルに頼っていたら、いつまで経っても神技を会得することが出来ないからね。


 こちらを見て唸り声を上げている銀色の四つ足の方へと歩いて行く。足の裏にくっつく雪が鬱陶しい。


「かかってこい」

 その場でもう一度、緑鋼の槍を斜めに構える。


 銀色の四つ足が飛びかかってくる。


 一匹目。


 そして、その攻撃に続くように二匹目も飛びかかってくる。


 二匹!?


 いや、だから、こそ!


 集中する。


 よく、見ろっ!


 ゆっくりと流れていく世界の中、銀色の四つ足の爪が迫る。


 今っ!


 ――神技ディフレクト!


 斜めに構えた緑鋼の槍で銀色の四つ足の爪を受け止める。


 いや――


 受け止めないっ!


 そのまま相手の攻撃を逸らすように緑鋼の槍を回す。


 槍の回転が体を動かす。


 飛びかかってきた銀色の四つ足の一匹目を抜ける。


 そのまま二匹目の銀色の四つ足の鋭い前足を回転した緑鋼の槍が受け流す。回る槍の動きに合わせて体が前に出る。


 逸らす、逸らす、逸らすっ!


 二匹の四つ足を抜ける。


 隙だらけの背後へと回り込む。


 ここでっ!


 緑鋼の槍の回転を止め、水平に構える。


 そのまま手首を捻るように突き出す。


 ――神技スパイラルランス!


 空気を切り裂くような唸りを上げ、渦巻く緑鋼の槍が銀色の四つ足を貫く。そのまま緑鋼の槍をすぐに引き抜く。

 緑鋼の槍に貫かれた銀色の四つ足の体には大きな風穴が空いていた。これだと毛皮が使えなさそうだ。毛皮を使うつもりならもっと綺麗に倒した方が良いかもしれない。


 まぁ、でも、食料にはなるかな。


 と、そこへ、攻撃を逸らした最初の一匹目が体勢を整え、再び飛びかかってきた。


『うむ。次なのじゃ!』

 いつの間にか自分の首に銀のイフリーダが手を回し、肩越しに笑いかけていた。


 そして、体が動く。


『これが神法フォース』

 空気の塊のような衝撃波が飛ぶ。視認できないはずの空気の流れが、マナの流れとして見える。


 見えない衝撃波が飛びかかってきた銀色の四つ足を吹き飛ばす。


『今のは!?』

『うむ。神技フォースなのじゃ。一瞬で発動する、空気を飛ばす、それだけの神法なのじゃ』


 吹き飛んだ銀色の四つ足を見る。銀色の四つ足は、まったくダメージを受けた様子がない。すぐに立ち上がり、こちらへと向き直る。


『えーっと、イフリーダ? イフリーダさん、無傷に見えるよ』

『うむ。先ほども言ったのじゃ。空気を飛ばす、それだけの神法なのじゃ』

 それだけ?


 いや、違う。


 この神法をわざわざ使って見せてくれたこと。


 考える。


 ……。


 この神法は奥の手になる。


 なるはずだ。


 うん、多分、きっと。


 ……。


 いや、まずは、考えるよりも先に、この最後の一匹を倒してしまうべきだ。


 体勢を整えた銀色の四つ足に緑鋼の槍の穂先を叩きつける。銀色の四つ足の動きが止まる。そのまま緑鋼の槍を水平に回し、突く。


 緑鋼の槍が銀色の四つ足の口から尻尾へと縦に貫く。これなら毛皮を傷めない。


 そのまま銀色の四つ足が絶命する。


『何とか勝てたよ』

 槍の神技を習得する練習としてはまずまずだったかもしれない。


 相手の攻撃を逸らすための神技ディフレクトと相手を貫くための神技スパイラルランス。この二つはこれからの戦いで役に立ってくれるはずだ。


 そして銀のイフリーダが見せてくれた神法フォース。ちゃんと使いこなせるようにならないと……。


 後は何度か繰り返して自分のものにするべきだ。


「ガルルル」

 待ってくれていたスコルが吼える。


 その足元には数匹の銀色の四つ足が転がっていた。


 あー、うん。


 自分がこの二匹とだけ戦えるように、集まってきていた他の四つ足を倒してくれていたようだ。


 ま、まぁ、何にせよ。


 何にせよ、これで沢山の食料とマナ結晶、毛皮が手に入った。

最近ではフォースという名前だとダー○ソウルを連想される方が多そうです。

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