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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
希望の谷
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176 会話の終わり

「姉さまを追って禁域に入ったところで多くの危険な魔獣に出会い、そこで、その魔獣さんに?」

 青髪の少女はスコルの方を見て首を傾げている。


「スコル、そうなの?」

 スコルに確認する。

「ガルルル」

 スコルが、その通りだよ、その時に出会ったんだよ、その瞬間、その子、気絶しちゃったんだよという感じで何度も頷いている。


 そっかー、そっかー。


「分かりました。事情は分かりました。本当に分かりました」

 この真っ赤な猫耳も、青髪の少女も、勇気と無謀を勘違いした人たちだというのはよく分かった。この青髪の少女も何か手荷物というか、旅をするための準備を行っていた様子がない。それで初めての場所を、魔獣が跋扈する場所を探索? 無謀すぎる。


「それで聖者の遺産が!」

 真っ赤な猫耳がこちらに詰め寄る。


 聖者の遺産、か。


 彼女たちが探しているものには一つだけ心当たりがある。聖者の遺産がある場所ではなく、聖者と呼ばれる存在について、だけれど……。


「聖者の遺産についてですが、その前に、お二人の実力を知りたいです」

 それを聞いた真っ赤な猫耳が口を尖らせる。

「まだ私の実力を疑ってるの? この天才魔法使いローラの実力を! それに妹は神聖魔法が得意なの!」

「私は姉さまの足手まといにならないように、それでいっぱいいっぱい?」

 真っ赤な猫耳は胸を張り、青髪の少女は首を傾げている。


「お二人とも魔獣と戦うのは大丈夫なんですね」

「もちろん! そのために学院で魔法を習っているのだから!」

 真っ赤な猫耳は鼻息が荒い。

「私は、癒やすことなら?」

 青髪の少女はぽやんとしている。こんな様子で大丈夫なのかと思うが、二人とも魔獣と戦うことは出来るようだ。


「分かりました。ただ、もう少し待ってください。準備があります。その間、今までと同じように言葉を教えて貰っても良いですか?」

「また、それ!?」

 真っ赤な猫耳は不満そうだ。

「姉さま。ここは無理しない方が……良い?」

 青髪少女は何故か疑問形だ。自分の意見に自信がないのだろうか?

「もう! ラーラが言うなら仕方ないかな」

 真っ赤な猫耳はまだ不満そうだが、それでも納得してくれたようだ。


 どうにも、この姉妹は、真っ赤な猫耳が突っ走る役で、それを補佐するのが青髪の少女のようだ。二人でやっと一人前という感じなのだろうか。


 さて、と。


 今度は竜種の皆さんに説明だ。

「この二人は聖者の遺産を探しにここまでやって来たようです。しばらくここに住むことになると思うので手助けしてあげてください。それと、戦士の二人を呼んできて貰っても良いですか?」

「分かったのです」

 竜種の皆さんが動いてくれる。


「ふーん。そういう理由? まぁ、いいや」

 亡霊は興味が無いのか、それとも飽きたのか、頭の後ろで腕を組み、そのまま鍛冶部屋の方へと帰っていった。まぁ、亡霊は、さ、こういった面倒ごとよりも鍛冶を行っている方が好きだろうから、仕方ないよね。


 しばらく待っていると竜種の皆さんが戦士の二人を連れてきた。何故か語る黒さんの姿も見える。


「戦士の王、やって来たのです」

「戦士の王、一緒に狩りに行くのです。今ならもっと森の奥まで行っても大丈夫なのです」

 戦士の二人は元気いっぱいだ。


「戦士の王、どうしたのです? むむ。また、例のヒトシュなのです」

 語る黒さんが真っ赤な猫耳の方を見て大きなため息を吐き出している。どうやら、自分が知らない場所で苦労しているようだ。


 うーん。


 この真っ赤な猫耳、言葉を習うという目的がなければ放り出しても問題無かったかもしれない。自分としては見知らぬ人よりも、知り合いの方を大事にしたいからね。


「面倒かもしれませんが、この二人を鍛えてください」

 戦士の二人にお願いする。


 戦士の二人が、赤と青の二人を見る。そして、少しだけ難しそうな顔をする。

「分かったのです」

「任せるのです。難しくても何とかしてみせるのです」


 語る黒さんもため息を吐きながら頷いてくれる。

「分かったのです。でも、言葉はどうするのです? このヒトシュは満足に言葉を操ることも出来ないのです」


 確かにそれは問題だ。


「片言なら何とかなるようなので、それで何とか」

 言葉の問題は大きい。それでも何とかしてもらうしかない。

「分かったのです」

 語る黒さんがもう一度頷く。何やら色々と諦めているような表情だ。


 さて、と。


 今度は赤と青の方へと向き直る。


「当分の間、彼らと行動を共にしてください。こちらの準備が終わったら教えます。その間、出来れば、こちらの言葉も覚えてください」

「何で、私が!」

「姉さま……」

 すぐに何かを言おうとする真っ赤な猫耳を青髪の少女が止める。

「もう! 特別ね!」

 真っ赤な猫耳がちょっと偉そうに頷く。


 この真っ赤な猫耳、ホント、何なんだろうね。


『ふむ。ソラよ、無駄話は終わったのじゃな』

 銀のイフリーダはこちらを見てニヤニヤと笑っている。

『何とか終わったよ』

『それで、どうするのじゃ?』

 銀のイフリーダの言葉。


 どうする?


『とりあえずは聖者の遺産とやらを探すよ。それに合わせて、銀のイフリーダには槍の扱いを教えて貰っても良いかな?』

『うむ。任せるのじゃ』

 銀のイフリーダが笑いながら頷く。


 銀のイフリーダは何故かとても協力的だ。


 四つの強大なマナを集めることを目的としている銀のイフリーダが協力的な理由。それは、多分……いや、確実に、聖者の遺産が強大なマナの最後の一つと関わっているからだ。


 もう間違いないだろう。


 だから、自分も探す必要がある。


 だから、この二人にも協力を約束した。


 全ては繋がっているはずだ。

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