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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
希望の谷
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166 槍こそ最強?

 畑仕事。


 木の伐採。


 魔獣狩り。


 建築。


 鉱脈から鉱石を採掘。


 受け取った武器が馴染むように鍛錬。


 やることが多すぎる毎日。


 そんな日々が続き、そして、ついに鞘が完成した。これで剣を――氷雪姫を持ち運ぶことが出来る。


 待っていた最後の要素だ。


 亡霊が完成した鞘を身につける手伝いをしてくれる。

「王様、なかなか似合ってるよ」


 鞘は背負う形のものにして貰った。自分の背丈だと腰に差す鞘は邪魔になるからだ。背中からなら、剣を抜くために鞘を大きく動かす必要が無い。そのままでも一気に引き抜ける。本来は大剣向けの持ち方だが、これは仕方ない。

 早く成長して背が高くなるのを祈るばかりだ。


 氷雪姫を背中にある金属製の鞘へと差し込む。カチリという金属と金属がぶつかる音とともに纏っていた氷が封じられる。


 これで安全に持ち運べる。


 次は槍だ。


「槍を持ち運べるように、スコル殿に頼み鞍を工夫したのです」

「ガルル」

 スコルが任せろという感じで頷く。


 スコルの鞍には、スコル用の石の両手剣と、自分用の緑鋼の槍が収まっている。これで、いつでもスコルにまたがった状態のまま緑鋼の槍を扱える。


 スコルの石の両手剣と自分の緑鋼の槍で突撃の破壊力は倍増だ。


 これで全ての準備が整った。


 今でも日課のように刃を整えている石の短剣を腰に差し、充分に水を入れた水筒を持つ。食料と火付け用の金属片などを入れた背負い袋を剣の上から背負い、スコルにまたがる。その際、背中の氷雪姫を少しずらし、スコルに当たらないよう気を付ける。


「それでは探索に行ってきます」

「分かったのです。この拠点を整えながら戦士の王の帰還をお待ちするのです」

「王様、お土産待ってるからな」

 炎の手さんと亡霊に見送られ、石の廃墟の探索へと出発する。


 今回は機動力を重視してスコルにソリは結びつけていない。


 今のままでもちょっとしたものなら持ち帰ることが出来るだろうし、もし、そのような持って帰るのが難しいような大きなものが見つかった時は、ソリがあったとしても持って帰ることが出来るか分からないからだ。

 ソリはあくまでも沢山のものを持ち運ぶためのものでしかない。近隣での採取用だ。


 スコルが森を駆ける。


 魔獣の姿は見えない。


 いや、もし、魔獣が現れたとしてもスコルの速度には追いつけないだろう。


 東の森を抜け、その奥へ踏み込む。


 あっという間だ。


 スコルが東の森の奥地を駆ける。


 複雑に絡まった木々や跳ねるように走っている木の根をものともせず駆ける。しなやかな動きだ。狼のような姿をしたスコルだからこそ、こんな悪路でも駆け抜けることが出来る。


『うむ。快適なのじゃ』

 ちゃっかりと自分の前でスコルにまたがっている銀のイフリーダも腕を組みご満悦だ。

『うん、さすがスコルだよ。これが馬とかの騎乗用の動物だったら、こんな風に森の中を走れないだろうからね』

『うむ。ところでソラよ』

 銀のイフリーダがこちらへと振り返る。


『どうしたの?』

『これからは槍を中心に鍛えるのじゃ』

 銀のイフリーダの突然の言葉の意味がよく分からず、首を傾げる。


『槍なの?』

『うむ。槍こそが最強なのじゃ』

 さらに意味が分からず、自分はさらに首を傾げる。


『イフリーダは剣の方が好きなのかと思っていたよ。今まで教えて貰った神技も剣を扱うものばかりだよね』

 そこで一瞬だけ銀のイフリーダの姿が揺れる。それは、まるで何処かから何かを受信しているかのようなブレ方だった。


『うむ。ふむ。今まではろくな槍がなかったから仕方ないのじゃ。やっと槍の扱いを本格的に教えるに足る水準になったのじゃ』

『そうなんだ』

『ソラよ、槍が何故、最強か教えるのじゃ』

 銀のイフリーダの言葉に頷きを返し、続く言葉を待つ。


『剣も悪くないのじゃ。汎用性が高く、種類によっては室内や洞窟内でも扱いやすいのじゃ』

『そうだよね』

『しかし、じゃ。槍にはその長さがあるのじゃ。相手の攻撃が届かない距離から攻撃できるのは大きな利点なのじゃ』

 と、そこまで聞いて少しだけ首を傾げてしまう。

『えーっと、それなら弓が一番なんじゃないかな?』

 銀のイフリーダは首を横に振る。


『弓は、攻撃の要となる矢を手元から放し、撃つ関係上、殆どマナが乗らないのじゃ』

 ん? マナが乗らない?

『弓を引き絞って放つ、そこから生み出される単純な力で打ち勝てるような小粒どもなら確かに弓は有用なのじゃ。しかし、物理的な力を全て防ぐ鱗を持つ、竜のような魔獣と相対する時、武器にマナの力をのせることが出来るかが重要になってくるのじゃ』


 銀のイフリーダがこちらへ手を伸ばし指を三本だけ立てる。


『まず一つは先ほども言ったようにリーチ、そして重さ、そこから生まれる破壊力なのじゃ。次に突き、斬り、叩き、防ぐ変幻自在の動きなのじゃ。そして最後はマナとの相性なのじゃ』

『マナとの相性?』

『うむ。剣は、その刃の部分だけに対し、槍なら全体にマナを流すことが出来るのじゃ』

 よく分からない。


『ごめん、イフリーダ、そもそも、その流すマナというのがよく分からない』

『うむ。魂、意志、力、言い換える言葉は色々あるのじゃ。そして、その力をソラはすでに感じている、知っているはずなのじゃ』


 神技や神法。


 マナの流れを見る力。


 マナの結晶。


 獣たちの女王を倒した時に、そのマナのみを貫いた。


 ……全てが関係している?


 そのマナを武器に?


『ふむ。ソラよ、どうやら森を抜けたようなのじゃ』


 スコルが駆け、東の森の奥地を抜ける。


 石の廃墟。


『ソラよ、よく考えてその力を身につけるのじゃ』

 銀のイフリーダの言葉に頷きを返す。

『でも、今は、まずここの探索だよね』

『うむ。伝えることは伝えたのじゃ』


 スコルが廃墟を駆け、やがて石の城が見えてくる。


 氷の廃墟の時のように崩れていたらどうしようかと思ったが、無事だったようだ。


 考えることは色々あるけれど、まずは探索だ。

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