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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
禁忌の森
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016 石窯

 次の日も西の森の小川へと向かい石を集める。


 石を集め続ける。


 そしてかなりの数の石が集まった。

『ふむ。して、ソラよ、この石をどうするのじゃ』

 腕を組み考える。

「どうしようか、な」

『なんじゃ、ソラも考えていなかったのじゃな』

 少し首を傾ける。

「ううん。一応、考えていたんだよ。家を作るか、窯を作るか」

『ふむ。両方作れば良いと思うのじゃ』

「うん。最終的にはそうするつもりだけどね。ただ、家を作るなら木を使った方が良いものが作れるし、窯も、そうだね、ここは粘土状の土があるから、粘土からレンガを作って、それを使った方が良かったかもって思い直して、うん、今はそれで悩んでいるんだ」

『ふむ。では、この石は無駄になるのじゃな』

「うーん、ただね、さっき言った方法は、どちらも時間が――日数がかかるからね。すぐには出来ないんだよ。だから、それらを作るまでのつなぎとして石を使った、家か窯を作りたいんだけど、うーん」

 目の前に積み上がった石を見る。


 家を作るとする。これだけの数なら、粘土状の土と組み合わせて外壁を作っていけば、今のシェルターの中で膝を抱えた状態ではなく、しっかりと足を伸ばして眠ることが出来る広さの家が作れるだろう。それだけの大きさがあれば物の保管にも使えるだろうし、暖炉を作ったり、雨の日に調理をしたり、色々と活動の幅が広がるはずだ。


 それに対して窯を作った場合だ。窯なら焚き火と違い、雨の日でも火を起こすことが出来るし、もっと強い火力を手に入れることが出来る。陶器やレンガなどの加工品を簡単に作ることも出来るようになるし、上手くすれば金属加工も出来るかもしれない。陶器とレンガは大きい。陶器があれば水を入れて保管したり、食材保管用にも使える。さらにレンガだ。これがあれば、もっとしっかりとした窯も作れるだろうし、数をそろえればしっかりとした家も作れるはずだ。


「うーん、悩ましいね」


 今は、まだ湖から魚が捕れる。でも、それもいつまで続けられるか分からない。いずれ、森の中に入っての狩猟に切り替える必要が出てくる。それも考えないと駄目だ。


 ……。


「よし。窯を作ろう。文明開化の第一歩だよ」

『ふむ。ソラは、ここに文明を開くのじゃな』

「うん。最終的には鉱脈を見つけて金属加工品も作るよ」

『うむ。頑張るのじゃ』


 まずは円になるように石を敷き詰める。土台作りだ。そして兜に水を貯め、土と混ぜ合わせて粘土を作る。先ほどの敷き詰めた石の上に粘土を塗り、隙間を埋め、平らになるように削って土台を作る。

「今日はここまでかな」

 その日は土台作りで終わった。


 次の日、作った土台の状態を確認する。

「うん、固くなってる」

 土台の状態を確認した後は、Uの字になるように、その上に石を並べていく。石の山を見て、隙間を埋めるように手頃な形の石を取り、さらに上に積む。

『ふむ。まるでパズルなのじゃ』

「うん。って、ここ、パズルがあるんだ」

『む? ソラの言っている言葉のイメージがよく伝わらなかったのじゃ。何を考えて、何を言ったのじゃ?』

「ああ、そう言えば、イフリーダってこちらの言葉が分からないんだったね。普通に会話が成り立っているから忘れそうになるね。イメージだけで会話していると――うーん、なんて言ったらいいんだろうか、困るね」

 石を三段くらいまで積んだところで全体を確認する。


 そして、兜に水を貯め、土と混ぜ合わせて粘土を作る。その粘土を積み上げた作成途中の窯の内側から練り込む。隙間をなくすように、石が崩れなくなるように、丁寧に作業を続ける。

「ふぅ、思ったよりも細かい作業になりそうだよ。時間がかかるね」

『頑張るのじゃ』

「うん。でも、今日はここまでかな。続きは明日だよ」

『一気には作らぬのじゃな』

「ううん。どちらかというと一気に作れない、かな。雨が降らないといいんだけど。神にでも祈りたい気分だね」

『ふむ。それならば、神ではなく我に祈るのじゃ』

「うん。そうだね。イフリーダ様、雨が降らないようにお願いします」

『うむ。天気は、世界の気分次第なのじゃ。しかし、日頃の行いの良いソラじゃ、当分、雨は降らないと思うのじゃ』

「うん。ふふふ、ありがとう」


 その次の日も窯作成の作業を続ける。


 昨日、粘土を塗り込んだ部分も固くなっており、その上に石を積んでも崩れそうにない。

「うん、これなら大丈夫そうだ」

 その上に石を積む。その際に、内側へと少しだけ出っ張るように並べていく。そこから、さらに三段ほど石を積み上げる。上から見ると、それは壺を横から見た形に近いだろう。

 そして、同じように内側から粘土を練り込み、隙間を潰していく。


「窯の方は、今日は、これくらいかな」

『ふむ。今日はもう終わりなのじゃな』

「窯はね」


 いつも焚き火に使っている枯れ枝を集める。枯れ枝と枯れ枝を組み合わせて四角い枠を作る。つなぎ合わせになる端っこの部分は、切れ目を入れて無理矢理はめ込んでいるだけの簡単な代物だ。

『それをどうするのじゃ』

「本当は昨日も作りたかったんだけどね。ちょっと時間が……」

 その四角い枠に粘土状の土を練り込む。練り込んだ後は、なるべく平らになるように削る。表を削った後は、裏返し、裏側も出来るだけ平らになるように削る。

「まずは一個、と」

 作った木枠にはめ込まれた粘土板を横にどかし、次を作る。


 同じような物を日が暮れるまで作り続ける。


 次の日も窯を作る。


 石を内側に寄せるように積んでいく。その際に、出来るだけ奥側が高くなるように積む。

『ふむ。今日は平らに積まないのじゃな』

「そうだね。一応、これは窯だからね。出来るだけ中で熱が対流するように、逃げないように、奥が深くなるように作るつもりなんだよ」

『ふむ。窯とは、そういうものなのじゃな』

「うーん。どうなんだろう。窯を作るのは初めてだからね。こうなんじゃないかな、くらいの感じで作ってるから」


 その日は、そこまでで窯作りを止めた。

『む。今日は粘土の板を作らないのじゃな』

「今日は、他の素材集め」

 籠を背負い、石斧と石の短剣を手に持つ。

「東の森に行くよ」

『うむ。了解なのじゃ』

 イフリーダとともに東の森へ向かう。


 手頃な木を探し、石斧を打ち付ける。そして以前と同じように石の短剣を差し込み、木の皮を剥ぐ。

「この背負い籠に使っている編み紐。実際に使ってみて、思ったよりも丈夫なことが分かったからね。もう少し作りたいんだ」

 あまり森の奥には入らないよう気をつけながら木の皮を剥ぎ続ける。作業を続けている間、小動物などが襲ってくるようなことは無かった。

「やっぱり、あの種子を取ろうとした時だけなのかな」

 小動物は小動物で狩りたい獲物だ。食用になる肉も、毛皮も貴重だ。


 拠点に戻り、紐を編む。

「あー、でも、結局、若木が必要なのか。うーん、あの大蛇がいる場所に行く必要があるんだよね」


 次の日も窯作りだ。


 今日は木枠にはめ込んだ粘土を使う。木枠を壊し、固くなった四角い粘土を取り出す。そして、作った四角い粘土の板を作成途中の窯の上にのせる。

『蓋をするのじゃな』

「うん、これが窯の天井だね」

 乗せた粘土板を補強するように内側から粘土を塗り込む。

『ソラよ、ここに隙間が空いているのじゃ』

「うん。そうだね。そこは空気の取り入れと排気のためにわざと開けてみたんだよ。でも、うん、それが原因で壊れないといいけどね」


 こうして一応の窯が完成した。


 後は木の枝を使って火を入れるだけだ。

「最初の火入れが上手くいけば問題無いはず……さあ、どうだろう」

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