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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
禁忌の森
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014 手作り

 気を取り直し、今日の作業を頑張ろう。

「それに、この種子が、まだ絶対に食べられないって決まった訳じゃないからね。何か酔っ払う成分を取り除くことが出来るかもしれないし、それくらいは無視できるような状況になるかもしれないからね」

『うむ。そうなのじゃ』

「そうだね」


 木の槍を持ち、魚を捕り、処理をして、火を起こして炙る。


 魚を焼いている途中、木の槍の長さを調整した時に出た端材を持ってくる。3、40センチほどの長さの木の棒だ。

『ふむ。ソラよ、それをどうするのじゃ』

 まずは石の短剣で外皮を削り握りやすくする。その後、小さな木の枝を1本取り、先っぽに火を点ける。その火が点いた小さな枝を木の棒の端っこ部分の真ん中にあて、そこを焦がしていく。

『ソラよ、その火力では燃えないと思うのじゃ』

「そうだね」

 焦げたところを石の短剣で削り取り、またその中を焦がす。何度も繰り返し、向こう側へと貫通した穴を作り出す。

『ふむ。綺麗な穴が開いたのじゃ』

「うん。そして、これだね。イフリーダは覚えている?」

 次に石の短剣を作った時、一緒に作っていた荒削りな石を持ってくる。

『ふむ。それは未完成だった石の刃物なのじゃな』

「ううん、これはこれで良かったんだよ」

 荒削りな石を先ほど木の棒に開けた穴へと差し込む。しかし、上手くはまらない。


「まぁ、最初から一発で上手くいくとは思ってないからね」


 もう一度、木の棒の穴に火の点いた小さな枝を押しあて、焦し、穴を大きくする。それを何度か繰り返し、木の棒に削った石をはめ込む。何度もはめ込んだ石を叩く。木の棒にがっちりとはめ込む。少し振り回してみて簡単には抜けないのを確認したら、あらかじめ作っておいた木の皮で作った紐を使いしっかりと縛る。


『ソラよ、それは新しい武器なのじゃな』

「武器というか、一応、石斧かな。木の枝を折ったり、細い若木を切ったりする時には、これを使うつもりだよ」

 完成した石斧を空に掲げる。素人が作ったものだ、見た目はあまりよろしくない。

「でも、これは大きな一歩だよね」


 その後、焼いた魚を食べ、一息つく。


『ふむ。して、今日はどうするのじゃ』

「とりあえず東の森かな。さっき、火を起こすための落ち葉を拾いに行った時、少しだけ確認したんだけど、もう少しじっくりと確認したいからね。それにせっかく作った、この石斧を使ってみたいしね」

『うむ。了解なのじゃ』


 石斧と石の短剣を持ち、ざるのような手製の籠を抱えて東の森に入る。


 踏み入った東の森は、昨日とはまた違う雰囲気に――そう、以前と同じ雰囲気に戻っていた。そこかしこで何かが蠢くような小さな物音が聞こえる。昨日見かけた小動物だろうか。

 足元の落ち葉や枯れ枝の上を見ながら歩く。しかし、その上には昨日たくさん落ちていたはずの棘付きの種子が見つからなかった。

「消えているね」

『ふむ。あの魔獣たちが回収したと思うのじゃ』

「こちらが取ろうとしたら攻撃してきたからね。彼らの食料だったのかな。とりあえずは安全に行動できそうだから、ここに来た目的を、と」


 石斧を持ち、手頃な木の枝を探す。細く伸びた、しなりの良い木の枝を見つけ、そこを石斧で叩きつける。

「うん、使える」

 力を入れて叩きつけた石斧は枝を折り、もう一度叩きつけると、枝はちぎれた。

「さあ、どんどん集めよう」

 細長い木の枝を探し、石斧で叩き折って集めていく。集めた木の枝をざるのような手製の籠に乗せていく。

「うん、落ちている枯れ枝と比べてしなりが良い」

『ふむ。前も同じものを集めていたと思うのじゃ』

「そうだね」

『また、今、ソラが持っているような、同じものを作るのじゃな!』

「うん、そうだね。今度は、もっとたくさん集めて、しっかりとした籠を作る予定だよ」


 ざるの上に山になるほどの木の枝を集め、湖へと戻る。空は紅く染まりはじめ、もうしばらくすれば夜の闇に包まれるだろう。


 東の森に入る前に消していた焚き火を作り直す。


 と、そこでシェルターの屋根の上にあったものに気付く。昨日、処理途中で置いたままにしていた小動物の毛皮だ。

「しまった」

 慌てて小動物の毛皮を取り状態を確認する。裏側に残っていた肉が変色し、嫌な臭いを発している。

 空を見る。紅い。まだ夕暮れ時だ。

「日が落ちるには、もう少しだけ時間があるよね」

 急ぎ焚き火の前で作業を行う。毛皮の裏側を炙り、石の短剣で削る。何度も繰り返し、肉を落としていく。綺麗に削り落としたところで、2本の堅めの枯れ枝を地面に刺し、それに毛皮を結びつけた。

「夜はシェルターの中に置くとして、後は天日で乾燥させるだけかな」

『ふむ。ソラよ、てっきり夜食かと思ったのじゃが、違うのじゃな』

「そうだね。これは違うよ。毛皮は貴重だからね。今はまだ分からないけれど、これから、ここの気候がどうなるか分からないから、たくさん作る必要があるね」


 その後は、シェルターから顔を覗かせ、焚き火の明かりの中、今日、拾ってきた木の枝を使って籠を作り続けた。

 そして、夜の闇が深くなる前に眠りへつくことにする。

『うむ。今日も我が見張っておくのじゃ』

「うん。いつもありがとう」


 膝を抱え、ゆっくりと闇に沈んでいく。


 シェルターの中へと入り込んできた朝日のまぶしさに目が覚める。

『ふむ。起きたのじゃな』

「うん。イフリーダ、おはよう」

 起きてすぐにシェルターの中に置いていた毛皮を外に出す。そのまま東の森へと入り、落ち葉と枯れ枝を拾って焚き火を作る。

 いつものように魚を捕り、処理をして火で炙る。


『ふむ。ソラよ、今日はどうするのじゃ』

 食事を終え、石の短剣と折れた剣を研ぎながら文字の勉強をしていると、いつものようにイフリーダが確認してきた。

「今日は、ここで籠を作るよ。まだ作りかけだからね」


 そう、今日は籠を作る。


 昨日、持って帰った木の枝を折り曲げ、籠になるように挟み込んでいく。

『ほうほう。今回はずいぶんと小さくなったのじゃな』

「まだ底の部分だからね。今は小さく見えても、もっと大きく、深さは段違いになるからね」


 その日は焚き火の明かりを頼りに深夜まで作業を続け籠を完成させた。

「完成だ」

 ところどころに大小様々な隙間の開いた不格好な籠だ。それでも、これを使えばたくさんのものを持ち運ぶことが出来る。

『ソラよ、ついに完成したのじゃな』

「うん、後はこうして、と」

 完成した籠に作っておいた木の皮の紐を等間隔に2本通す。そして、通した紐の具合を確かめ、腕を通し、籠を背負う。

「ほら、こうやって背負えばたくさん運べるでしょ」

『ふむ。ソラは凄いのじゃな』

「うん、ありがとう。これで安心して眠れるよ。悪いけど、今日も見張りを頼んでいい?」

『もちろんじゃ』

「いつも、ありがとう」

『うむ。ソラにはしっかりと返して貰うつもりじゃ。だから、安心して眠るのじゃ』

 完成した籠を置き、シェルターの中でゆっくりと眠りにつく。


 ああ、明日が楽しみだ。

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