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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
氷雪凍土
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135 魔法金属

 しかし、どうやって武器を鍛えるのだろうか?


 部屋の中央にある巨大な青く光る球体――亡霊が魔法炉と呼んでいた代物だ。これを使うのだろうとは思うのだが、球体を使って武器を鍛える姿が想像出来ない。


 どういう仕組みなのだろうか?


「魔法炉には近づくなよ。熱さを感じないから油断しがちだが、人なんてあっさりと燃やしてしまうからな」


 魔法炉をよく見ようと近づこうとしていた足が止まる。


「そんなに危険なものなんですか?」

 亡霊が頷く。

「ああ。魔法炉の炎の強さは自然の炎の比じゃないからな。普通の炎では溶かすことが出来ない金属も溶かして鍛えることが出来る。だから、魔法炉でしか溶かせないような、そんな金属を魔法金属って呼んでいるのさ」


 魔法金属?


 そういえば職人蜥蜴人さんが、折れた剣に使われている金属を、知らない金属だと言っていた。


 炎の手さんも元からあった部分に付け足す形で加工することしか出来なかった。


 もしかして、折れた剣に使われている金属が、この亡霊が言っている魔法金属なのではないだろうか。


「しかし、随分とちぐはぐな剣だな。これは作ったやつの趣味か?」

 亡霊が壊れかけている鉄部分と元からあった刃の部分を手で叩いている。状態を確認しているのかもしれない。

「いえ、違います。元々は自分が拾った折れた剣だったんです。それを補強する形で加工して貰ったのが、その剣です」

「拾いものを、追加で加工したのか」


 と、そこで壊れかけの鉄の剣と睨めっこしていた亡霊がこちらへと振り返る。


「この元からあった部分に使われているのはマナ銀か。どうするんだ?」

 亡霊の言葉に首を傾げる。

「どうするとは?」

「追加の鉄の部分は全て捨てて、マナ銀だけで作り直すことも出来る」


 折れた剣の元々の状態に戻すということだろうか?


「それだと、どういった問題がありますか?」

「問題、問題な」

 と、そこで亡霊が一つ小さなため息を吐く。


「お前はあまり詳しくないようだな。言わなくても分かると思うが、マナ銀は魔法金属だ。加工は難しいが、その割に、それほど固いわけじゃない」

 確かに拾った石を使って刃を磨くことが出来たくらいだ。固くないという話は分かる。

「それだと、あまり武器に向いていない気がします」

「そうだな。だが、このマナ銀にはマナの力を宿す特色があるんだよ。お前も見たことがあるだろう? 一流の戦士たちが持つ、炎や雷、氷などの力を宿した魔法の剣を」


 炎や氷、雷を宿す剣? そんな不思議なものが存在している?


「いえ、見たことがありません」

「無いのかよ! あ、ああー、ああ! だから、そういう武器があるんだよ」

「その素材がマナ銀だっていうことですね」

「そこは分かるのかよ……」


 魔法を宿す武器。もしかすると、この折れた剣も、折れる前は、そういった魔法の武器だったのかもしれない。それが折れて力を失ったという感じなのだろうか。


「それで問題だがな。ここにはマナ銀がない。ある場所は分かっているから……」

「それはどれくらいかかりますか?」

「ん? ああ、数日もあれば調達出来るんじゃないか?」


 無理だ。


 今の状況から数日も待つことは出来ない。


 その魔法の武器を作ることで劇的に強くなれるとしても、待つことは出来ない。今もこの都市の外では、氷付けになっている語る黒さんがいる。時間が経てば経つだけ、助かる確率は減ってしまうだろう。


 そんなことは出来ない。


「申し訳ありません。急いでいるので無理です」

「わーった。今、手元にある金属で鍛えよう。緑鋼なら数もあるからな。それで良いか」


 亡霊がガラクタの山の中から金床と鈍く薄暗い緑色の金属の塊を引っ張り出してくる。


「それが緑鋼ですか?」

「あ、ああ。これも初めてか。緑鋼は魔法鍛冶の入門用に使われる金属だな。魔法金属としてのランクは低いが、その分、扱いやすい。だが、勘違いするなよ。入門用って聞くとものが悪いように思うヤツもいるけどな、逆だぞ。入門に使われるくらい良い金属ってことだからな」


 亡霊は酷く饒舌だ。喋りたくて、説明したくて仕方が無いのだろう。


「それで、どんな特色がありますか?」

「一番のメリットは硬いことだ。まず折れない。そして熱にも強い。溶岩の中でも溶けないだろうよ」

「悪いところは?」

「軽いことだ」


 軽くて硬い金属。それだけ聞くと利点しかないように聞こえる。


 しかし、その欠点が分かってしまった。


「お前が、子どもでも、武器を使って戦ったことがあるなら分かるだろう?」

 自分は頷く。

「軽いということは武器の重さを使うことが出来ないってことですよね」

「その通りだ。つまり、使い手の力量の比重が大きくなるってことだな。下手な使い手なら鉄や鋼を使った方がマシだな」


 軽い武器。


 武器の重さを使わない、神技を使って戦う自分には向いているはずだ。


「それでお願いします」

「ああ、任せな」


 緑鋼をやっとこで挟み、青く光る球体の中に入れる。


 緑鋼は青く光る球体の中で、徐々にドロドロと溶け始めた。


 これが魔法炉か。


「危ないから近寄るなよ。魔法炉は見た目よりも何倍も危ないからな」


 溶岩の中でも溶けない金属がドロドロになっている姿を見れば危ないのは分かる。


 出来る限り離れていよう。

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