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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
氷雪凍土
121/365

119 仲間だから

「何処かでスコルの姿を見ていませんか?」

 頑張って氷の壁を作っていた蜥蜴人さんたちに聞いてみる。

『イフリーダも見ていない?』

 合わせて銀のイフリーダにも聞いてみる。


『ふむ。確かにあやつの姿が見えぬのじゃ』

 銀のイフリーダは首を横に振り、肩を竦める。


「そういえば見かけていないのです」

 こちらへと振り向いた蜥蜴人さんたちの中から、炎の手さんが反応してくれる。

「誰か見ていないのです?」


 蜥蜴人さんたちは作業の手を止め、話し合う。

「見ていないのです」

「のです」

「まだ怖くて近寄れないのです」

「寒くなる前の朝は見かけたのです」

「肉を一緒に食べたのです」

「抜け駆けなのです」

「肉……」


 色々な情報が出ているようだ。


 と、そこで青く煌めく閃光さんが、すっと手を上げた。

「そういえば、狼食い草をほぐしていた時に見かけたのです」

 そのまま伸ばした手を頭の方へと持っていき、その指だけをこちらに向ける。相変わらずの謎の仕草だ。


「それはいつ頃ですか?」

 青く煌めく閃光さんが、持ち上げた手を下ろし、両手を交差させながら頷く。本当に謎の仕草だ。

「戦士の王に出会った後なのです。夜に近いのです」


 夜。


 多分、青く煌めく閃光さんがスコルを最後に見た人だ。


「何処に向かったか分かりますか?」

 青く煌めく閃光さんが指を動かす

「あちらなのです」

 それは東の森に沿って進んだ先――北側だった。そちらは崖があり、行き止まりになっているはずだ。スコルは崖を登っていったのだろうか。


『イフリーダ、どうしよう?』

 銀のイフリーダは、こちらの焦りなど感じないかのように首を傾げている。

『ふむ。何故、探すのじゃ?』

『だって、スコルがいなくなったんだよ』

『ふむ。あやつは魔獣なのじゃ。気が向けば好きに動くのじゃ』

 銀のイフリーダの態度は素っ気ない。言っていることは分かる。


 分かる。


 それでも、だ。


 確かに最初は敵対していたし、スコルは魔獣だ。


 それでも、だ。


 スコルとの間に信頼関係のようなものが生まれつつあったと思っていたんだ。


 スコルが黙ったまま何処かに行って、戻ってこない。


 心配するじゃないか!


 何事もなければ、ああ、何事もなかったねって笑い合えば終わる話だ。


 だから、スコルを心配して、確かめに行きたいんじゃないか!


『スコルは、もう仲間だから。だから、これは必要なことなんだよ』

 その言葉を聞いた銀のイフリーダはニヤリと笑う。

『うむ。分かったのじゃ! それならば探す必要があるのじゃ!』


 方針は決まった。


 スコルを探そう。


 でも、どうやって?


 スコルは崖を登って、何処かへと向かった――のだと思う。しかし、今の自分には崖を登る手段が無い。

 それに、この寒さだ。


 寒さに強い蜥蜴人さんたちならまだしも、自分は、何か対策を立てないと、寒さで凍え死んでしまう。


「戦士の王、どうしたのです?」

 考え込んでいる自分を心配したのか、炎の手さんが話しかけてきた。


「スコルは北にある崖の先に向かった可能性が高いと思います。自分も向かいたいんですが、その手段が……」


 何か方法が……。


「戦士の王、それはどれくらい急ぐのです?」

 炎の手さんは顎に手を置き、思案顔だ。

「出来れば、出来るだけ早く行動したいです」

 自分としては、早く、としか言えない。


「分かったのです。崖を登る手段だけなら簡単なのです。問題は戦士の王の寒さ対策なのです」

「どういうことですか?」

 炎の手さんには良い考えがあるようだ。

「今で、ちょうど良かったのです。この雪を使えば良いのです」

 炎の手さんが雪を持ち上げ、手で握って固める。


 今、建物を作っているのと同じだ。


 そうだ。

「階段を作れば!」

「そうなのです。これで登るための道を作れば良いのです」

 炎の手さんが頷く。


「皆で頑張れば、一日もあれば、完成すると思うのです」

「はい! お願いします」


 となれば、問題は……。


「戦士の王がどれだけ寒さに耐えられるか分からないのです。今でも厳しいように見えるのです」

 確かに今の状況でも厳しい。


 焚き火の側を離れてしまえば、耐えられるのは数時間というところだろう。そんな状態では、遠出することなんて、とてもではないが出来ない。


「確かに今の状況でも厳しいです。この焚き火がなかったら、すぐに凍死してしまうと思います」

「分かったのです」

 炎の手さんが、こちらを見る。それは何かを確かめるような視線だった。


「えーっと、炎の手さん?」

「分かったのです。何とかしてみるのです。しかし、どうしても時間はかかるのです」

「分かりました」


 自分はすぐにでもスコルを追いかけたい。


 なんだか、嫌な予感がする。


 しかし、ここは炎の手さんに任せて待つしか出来ないようだ。

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