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ソライフ  作者: 無為無策の雪ノ葉
氷雪凍土
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112 集める存在

「さっそくマナを奉納するのです」

 語る黒さんがおもちゃのような祠の前で跪き、片手を伸ばし何かを捧げるように祈る。目を凝らしてよく見てみると、語る黒さんの体内からマナが祠の方へと流れているのが見えた。


『マナが吸い取られている?』

『うむ。神はその場におらぬ故、結晶からマナを得ることは出来ぬのじゃ。それ故、このように中継地点を介して生物が集めたマナを回収するのじゃ』

 いつの間にか隣に来ていた銀のイフリーダが説明してくれる。

『それが奉納?』

『うむ』

 生物が持つマナという謎の物質? 物質かは分からないけれど、それを神が集めている。


「新しくアクアショットの力を授かったのです」

 語る黒さんはそんなことを言っている。授かった?


 マナを奉納した見返りが神技や神法の伝授?


 そう言えば、確か、そんなことを……。


「一日で凄いのです。マナを持った魔獣が多く、稼ぎになるのです」

 語る黒さんは大喜びだ。

「稼ぎになるんですか?」

「そうなのです。強い魔獣ほどマナを多く蓄えているのです。しかし、そういった強大な魔獣は大人数で倒すことになるので勝てたとしても得られるマナは少量になってしまうのです。逆に少人数で勝てる魔獣になると、今度は得られるマナが少なすぎるのです。里の周辺ではちょうど良い魔獣がいなかったのです」

 マナって戦う人の数で分散されるものなんだ。


 それにしても、魔獣を倒し、マナを手に入れて、それを奉納して力を授かって、その力を使って、さらに強い魔獣に挑んでって……。


 何だろう。


 凄く嫌なものを感じる。


「まだ祠が小さいので受け取れる力はすぐに打ち止めになってしまうのです。この調子ならすぐにでも大きな祠が必要になるのです」

 祠の大きさで授かれる力の上限が決まるようだ。蜥蜴人さんの里にある院の奥には大きな祭壇があるのかもしれない。


 ……。


 何かマナを集めるための循環を何者かが作ろうとしているというか、とにかく嫌な感じだ。


「水流と門の神ゲーディア、水門を開き飛ぶ水の飛沫を作って欲しいのです――アクアショット!」

 語る黒さんの前に小さな水の塊が生まれ、飛ぶ。飛んだ水弾は地面に当たり、小さな穴を穿った。速度もそれほどではなく、威力も凄いという訳ではなさそうだ。ただ、注意をこちらに向けたり、牽制のために使ったりは出来そうだ。


『これが奉納なんだね』

『うむ。先ほどのは水のアクリエイディアの領域の神法なのじゃ』

『あれ? 水流と門の神ゲーディアの力なんじゃないの?』

『ゲーディアはアクリエイディアの下位神なのじゃ。まずは水があり、その下に水流があり、その門があるのじゃ。アクアと名前がつく神法はアクリエイディアの、ウォーターと名前がつくものがゲーディアの力が強い神法なのじゃ』

『へー、神にも上下関係があるんだね』

『当然なのじゃ』

 銀のイフリーダが両手を腰に当て、静かな胸を張る。


『火、水、光、闇、無などの単一マテリアルを司る神が上位神なのじゃ』

『確か、火のフレイディア、無のインフィーディアとかだったよね』

 銀のイフリーダは頷く。そのほかにも沢山の神がいるということらしいけど……神が身近に存在して力を貸してくれる世界、か。なんだか不思議な感じだ。


「むむむ、なのです。少し消費が大きいのです。これでは、日に三度がやっとなのです」

 語る黒さんはまだ頑張っていたようだ。


 って、へ?


「三回ほどしか使えそうにないんですか?」

「そうなのです。もっと奉納を繰り返して、使いこなせば、また違うとは思うのです」

 一日に三回とは……あまり役に立たないのかもしれない。いや、使える回数は増えるかもということだし、うん。


 この分では、この後すぐに実戦で確かめる、ということは出来なさそうだ。


「木の加工に戻るのです」

 炎の手さんは木の板の加工に戻るようだ。木の板を作るのは時間がかかる。暇があれば、常に木の板を作る感じになるのだろう。


『さて、と。自分はどうしようかな』

 空を見れば、すでに紅く染まり始めている。自分が思っていたよりも時間が経ってしまっている。それだけ祠の作成に時間がかかったということだ。

「少し早いですけど、晩ご飯の準備にします」

「手伝うのです」

 新しい魔法の使い勝手に満足したらしい語る黒さんも手伝ってくれるようだ。


 湖から蛇肉を引き上げ、木の枝の串に刺す。それを火を起こした焚き火の周りに並べていく。そろそろ蛇肉はなくなりそうだ。


「食材なのです」

「少しでも狩ってきたのです」

 戦士の二人も戻ってきたようだ。手には四匹ほどの小動物が握られている。


「ついに祠が完成したのです。二人も後で奉納に行くと良いのです」

 語る黒さんは二人から小動物を受け取っている。

「おお、早いのです」

「これで位階が上がって身体能力が向上すれば、もっと狩りが捗るのです」

 戦士の二人も喜んでいる。


『位階が上がる?』

 また謎の言葉が出てきた。

『ふむ。マナを奉納することで、神が、そのものの身体能力の向上を行うことがあるのじゃ。多分、そのことだと思うのじゃ』

『ああ、そういえば、そんなことを言っていたね』

 それもイフリーダから聞いたことがある話だった。


 どちらも自分には必要のない話だ。


 戦士の二人が持ってきた小動物も捌き、串焼きにする。中のマナ結晶は戦士の二人に渡す。この小動物を倒したのは彼らだからだ。


 こうして、昨日よりも量は少ないが晩ご飯が完成した。晩ご飯というか、昼ご飯というか、蜥蜴人さんたちの生活サイクルに合わせて一日一食になってしまっている。食糧問題が解決するまでは、当分、一日一食は続くだろう。


 問題は――やらないと駄目なことは山積みだ。


 それでも少しずつ住みやすくなってきているはずだ。


 地道に頑張ろう。

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