戦争
「大丈夫?」
男は楓たちに話しかける。
高身長でイケメン、そして優しく微笑む姿は神様のようだった。
「助けてくれてありがとうございます。」
「今は時間がない、君たちも電脳世界に居たことがあるか?」
二人は頷くと、イケメンの男はすぐにカプセルを渡してくる。
「使い方はわかるね? 頼んだよ!」
男はそう言ってカプセルから拳銃を取り出し、迫る集団と銃撃戦が始まる。
カチ……カプセルを開くと、男が使っている拳銃と同じものが出てくる。よく見ると、向こうの集団が使っている拳銃と同じもののように見える。
楓は拳銃を眺めるように見る。しかし、いまいち使い方が分からない。竜胆に聞くと、丁寧に使い方を教えてくれた。
どうやらこれは連射できなくて、弾も5発しか入ってないらしい。男はどうしているのかと目線を向けると、次から次へとカプセルから拳銃を出して応戦していた。
「仕方ない…やるぞ!」
「分かってる」
楓は試しに一発、集団の中の一人を狙って撃ってみる。
しかし、その狙いは大きく上に外れて、空中に撃ってしまっている。
竜胆も知識だけのようで、さすがに本物は使ったことはないらしい。中々敵に当たらないことにふたりは苛立ちと焦りを感じはじめる。
その二人の前で、男は次々と集団を倒していく。
とうとう最後のひとりも倒し、そこには死体がゴロゴロ転がっているだけとなる。
「俺ら全然役にたてませんでした……」
「気にしないで、拳銃なんて普通使わないしね」
男はとても優しく言い、その仕草はまるで小さい子に話しかけているようだ。しかし、馬鹿にしてるようには全く感じなく、純粋に優しさが溢れているようだ。
「すみません……それより、そのカプセルはどこで手に入れたんですか?」
「ん? これはあの会社から奪ってきたんだよ。どうやって奪ったかは内緒だけどね」
少し謎めいた笑みを浮かべ、どこかへ行こうとする。
「これは君たちにあげる。僕にはまだ予備があるから、まぁ近々会うと思うけど……その時はよろしく。」
「最後にひとつだけいいですか! あなたは人を殺すことに躊躇いはないんですか!?」
「人を殺すこと…か。殺さなきゃいけない世界になったんだから仕方ない…よね。」
その目は、殺したくて殺したい感じではなかった。そして、この人は電脳世界に深く通じてる…と直感的に感じる。
男はそれを言い残すとどこかへ行ってしまう。それをただ呆然と二人は眺めていた。
どこか遠くで発砲音が聞こえ、この世界が狂っていくのを肌身で感じ、元通りにならないことを察した。