初めまして
大和と未来は、受付の所に待機させられていた。もはや雑務係と化しているが、言うだけ無駄なことを知っている。
「なんで男子高校生を待ってんのかね~?」
「俺に聞くなよ、代表がなに考えてるのかなんてわかんねっての」
男子高校生とは、もちろん竜胆のことである。竜胆の父親が竜胆を迎え入れようとしてるのだ。
噂をしてるとなんとやらで、男子高校生二人組が玄関から入ってくるのが見える。
「あれじゃないか?」
「多分な…。おーい、君たち!」
楓と竜胆は声のする方へと向かう。
「あ! 君は電脳世界にいた子じゃないか?」
大和は楓を指さすと、軽く会釈をする。
「大和さんってここで働いてたんですね。」
「まぁね! 凄いだろ?」
未来は大和のことを軽く叩くと、無理矢理本題に戻す。
「君たち、名前はなんて言うの?」
「白井竜胆」
竜胆はそれだけ言うと向こうも事情を察したのか、すぐに代表に連絡する。
「今から案内するからこっちおいで」
「分かりました」
未来は長い廊下を歩いている間考え事をしていた。これから何が始まるのだろうかと、どうして高校生が代表と会えるのか…と。
「着いたよ、ここに代表が居るから」
「ありがとうございます。」
楓はお礼を言ってお辞儀をする。竜胆の方は二人になにも言わないまま、ドアを乱暴に開ける。
未来と大和は、竜胆がドアを開けるのを確認すると、すぐに持ち場に戻っていった。
「無礼だな…竜胆」
代表は嫌そうに言うわけでもなく、淡々と事実を述べただけだ。
「親父にどうして礼儀が必要なんだよ」
「随分と生意気だな…ここでは、初めましてだろ? 楓くんもいるしな。」
楓はなぜ俺の名前を? と疑問に思うが、向こうはお構い無しに話を続ける。
「君たちのお友達は連れてきてないのか? 調べれば分かることだが…まぁいい、話を本題に移そう。」
少し強めの口調に変わると、場の雰囲気がピリピリとしてくる。楓も竜胆も、今は代表の話を聞くことしかできなかった。
「まずは、エリスとイルミの撃破おめでとう。突発イベントとはいえ見事な攻略だった。そしてこれから次のフェーズへと移行するわけだ。」
「次のフェーズ?」
「電脳世界だけで遊ぶのは飽きただろう? だからこっちでも遊べるように…と」
「どういう事だよ! 親父…まさか」
「君たちも知ってるのだろう? 向こうでの死は、こちらでの死を意味することを」
こいつは…ゲームをプレイしていない一般市民も殺そうとしているのか。聞いているだけで目眩がする。
「もうじき遊べるようになる。と言っても君たちに同意してもらおうとは思わないが、拒否権を与える気もない。ここに居たらすぐに殺されるぞ? ルールは従業員には伝えているからな」
「親父はなにがしたいんだよ!」
今にも殴りかかりに行きそうな竜胆を、楓が力ずくで止める。すぐにここを離れたいが、竜胆の熱は下がりそうにない。
「早く出ていかないと、今ここで殺すことになるな」
そう言いながら見せるのはひとつのカプセル。それを見ただけで竜胆と楓は、代表がなにをしたいのか瞬間的に理解した。
仕方なくその場を離れ、二人は部屋をあとにする。
「代表…これから楽しみですね」
「私がこの国を支配するのだからな、これはその前段階に過ぎん」
代表は不敵な笑みを浮かべると、カプセルを持って自分の野望のために…プロジェクトを始動させた。