ライバル
もう少しで…第2部が完結するはず…です……(o_ _)oパタッ
「おい、竜胆」
闘技場から出た楓は、口調を強くして竜胆に話しかける。
「なんだよ…」
エリスとイルミに負けてふてくされてるのか、適当な返事をする。
楓はそんな事はお構いなしに話を続ける。
「俺達と一緒に現実世界に帰ってくれないか」
「なんのメリットがあって、お前らに…」
拓磨と弥生は見守るように話を聞いている。その二人の期待を背負うように、楓が話を続ける。竜胆は話すのすら億劫と言ったふうだ。
「お前に得は無いかもしれない…けど。白井さんに会って話をしなきゃいけない。」
白井…その名前を聞くと竜胆は、楓の首根っこを掴み顔を近づけてくる。
「お前、知ってたのか」
「当たり前だ」
「俺はアイツとは関わらねぇ、やるなら勝手にしろ」
手を離すと、三人に背を向けて逆の方向に歩き出す。交渉決裂かぁ…と、ガッカリする拓磨と弥生だったが、楓にはひとつの『奥の手』があった。
「竜胆…お前、負けて悔しくないのか?」
ニヤリと笑みを零しながら、煽り口調で話しかける。
「エリスに負けて、そのエリスを倒したのは俺だ。実質お前は、俺より弱い」
後ろ姿にして、悔しそうにしてるのがわかる。言葉責めを続けて5分。とうとう竜胆に火がついたようだ。
「やってやるよ…! お前に負けたらなんだってしてやる。」
「やっとやる気になったかよ。じゃあ、近くの広場に行くぞ。」
楓が案内すると、竜胆は黙ってそれに付いてくる。拓磨と弥生は二人でなにかを話しているようだ。
広場につくと、竜胆は早速準備運動を始める。楓もそれを見て同じようにする。
「拓磨、審判頼む」
「わかった。」
2人の間に立つと、拓磨は高らかに勝負開始の宣言をする。
「もらったぁ!」
宣言と同時に跳躍し、大剣で竜胆に切りかかる。それをスルリとかわし、右手に帯びた電気を槍状にして4本指から飛ばす。
その内1本が楓のお腹を掠め大剣を手から離し、楓は一瞬麻痺する。
「俺の方が強いかもな」
左手に握られたナイフ。そのナイフに最大出力とも言うべき電気を帯させ、力いっぱい射しこんでくる。
それは楓の腹部を貫通し、それと同時に電気が流れ悶絶する。
しかし、一瞬油断した竜胆のことを楓は見逃さなかった。楓は竜胆に発火させ、思い切り殴り飛ばす。
竜胆は即座に受け身を取ると、楓の顔面にストレートを入れる。それを難なく掴み、楓も腹パンを返す。
「終わりだ…!」
もう一度、殴りかかろうとした時。竜胆にも異変が現れる。
竜胆の全身から抑えきれない程の電気が流れ出し、その電気は黒く輝いている。
「お前の力に呼応したらしい…お前も本気で来いよ。」
「いいぜ、見せてやるよ。」
楓の背中から大きい炎の翼が生え、さっき受けた腹の傷はたちまち癒えていく。
「それじゃあ、そろそろ終わらせようぜ?」
※
未来は戸惑っていた。なんせ、代表の話が明らかに怪しすぎて、聞いていたことがバレれば処分…もしかしたら殺されるかも…
嫌な想像をして体を震わせる。早く持ち場に戻ろうと思い、足早に廊下を進んでいく。
つい昨日まではゲーム開発部門に居たのだが、死亡事件が発生してから緊急で作られたデータ解析部門に移動させられた。
データ解析部門とは生存プレイヤーの人数や死亡者数をまとめたり、その内訳を徹底すると言った内容だ。
パソコンとにらめっこしながら、10分毎のデータを更新していく。機械にやらせればいいのに…と思うが、それはダメだと代表が決めた。
「はぁ…」
隣の席の奴がため息をつく。
「どうした? 大和」
日向 大和。会社の同僚で、同じ部門にいたが、二人揃ってここに飛ばされてきた。
「な〜にをやってんだろね? 俺らって」
「よくわかんねーよな。しかも、さっきさ…」
未来は社長室で聞いたことを話そうと思ったが、変に広まってもヤバイと思い、とりあえず黙ってることにした。
「さっき…なんだよ?」
「いや、なんでもない。」
「ふーん。それにしても電脳世界ってヤバイのな…実地調査って言われて行ってきたんだけど…まじで死ぬかと思った。」
顔色を変えて大和は、電脳世界であった事を話し始める。
「それってホントかよ…俺もいずれ、そっちに連れていかれるのか…」
「そしたらドンマイだな。」
「人事みたいに話すなよ…嫌だなぁ…」
未来は肩を落としながら、パソコンのデータを確認していく。
プレイヤー累計数。1200万7000人
生存者数。1189万3000人
死亡者数。11万4000人
次々とくるデータを確認ボタンで流していく。10分経ったのか、新しくデータが更新されて数値が変わっていく。
プレイヤー累計数。1200万7000人
生存者数。1188万1000人
死亡者数。12万6000人
「うわ…なんだこの増え方…尋常じゃねぇ」
「これって、かなりやばくね? 上の人はなにを考えてんのかね?」
データの処理をしながら愚痴を零す。そんなことを延々と続けていると、ひとつの社内メールが、全従業員に送られてきた。
ふたつ同時進行で矛盾が生じないよう気をつけてますが、もし万が一見つけた場合は報告していただけるとありがたいです。