巧みな企み
あらすじ…
ゲームの世界で不可解な死を遂げるゲームプレイヤー達、その鍵を握るゲーム会社の代表に会いに行くため、知り合いであり代表の息子でもある竜胆を、ゲームの世界に探しに行く。しかし、ゲームの世界で竜胆は殺人の容疑をかけられ、その竜胆と思わしきフードの男と戦うが…。
ジリジリと焼けていくフード、そこから現れた顔は見慣れたものだった。
「ふぅ…やっぱりフードは熱いね…そう思わないかい? 楓くん。」
「エリスさん…?」
イマイチ状況が飲み込めない三人。何かの間違えでは? と疑いを持ちたくなるが、目の前に突きつけられる現実はとても非情だった。
「まさか、顔バレするとは思わなかったよ…まぁ、今回は見逃してあげよう。これからもっと面白い事を起こすからさ、見に来たらどうだい?」
人当たりのよく聞こえてた話し方も、今となっては憎き雑音と変わる。
「どうして人殺しなんかするんですか…警備隊の隊長なんですよね!?」
「どうしてって…人がする事に理解なんてできるのかい?」
冷たく言い放つと、エリスは広場から消える。
呆然と立ち尽くす三人。殺人鬼は竜胆ではなく、エリス…。
それなら、竜胆は今どこでなにをしているんだ。竜胆が殺人鬼ならすぐその場で捕まえられたのかもしれなかったというのに…
楓はよく分からない苛立ちを募らせ、広場にあったベンチに座り込む。
「エリスさんが…どうしてあんな事するの。」
弥生も少しショックそうだったが、拓磨は立っているだけで特に驚いた様子も悲しんだ様子も見受けられなかった。
「警備隊全部があんな感じなのかな? イルミさんとかその他はどう思ってんだろ。。。」
ふと思いついた疑問を呟き、声に出す。その答えは返ってこない事は確信していた。静寂と共に時間だけが流れていく。
「はぁ…殺人鬼を探したところで勝てないのは分かってるし、竜胆を捜しだして、早く現実に戻ろう。ここは危険すぎる。」
「そうだな。エリスが何故あんなことをしてるのか分からんが、ゲームのイベントかなにかだろう…ここはゲームの世界だからな。」
ここはゲームの世界…その言葉に少しの希望も見いだせない。どうしてゲームの世界でここまで苦しめられなきゃいけないのだろうか? 現実とリンクした世界はゲームの世界と呼べるのか? 少なくとも、死の危険が潜んでいるクソゲーなんて前代未聞だろう。
反論する気にもなれない楓は俯き、また三人は静寂の時を過ごす。
「見つけました。エリス様がお呼びです。ご同行されますか?」
唐突に聞き覚えのある声が聞こえる。疑問形で聞いてくるのにはは、なにかしらの意味を含んでいるのだろう。
来なくてもいい案件なのか、暗に来る事を強制しているのか。
「あまり時間はありません、決断は早めに。」
イルミは、もしかして何もわかっていないのだろうか。
あまり良い事ではないのは察しがつくが、行かない訳にもいかなかった。
「連れてってください。お願いします。」
三人共、行かなきゃいけない空気を感じ取り、イルミについて行くことにする。イルミが先導しながら街中を進んでいき、大きい闘技場みたいな場所にたどり着く。
「ここでエリス様がお待ちしております。」
そう言って立っているのは闘技場への入口の扉の前で、ここへ入れという合図だろう。
すぅ…と深呼吸をして、思い切り扉を開ける。扉の中には、観客席が埋まるほどの人と、その闘技場の真ん中で手枷を付けられている人がいる。
手枷を付けられた人が、竜胆だと認識するのに時間はかからない。
「竜胆!」
走って近寄ろうとするが、すぐに後ろからの殺気で止まることになる。
「来ると思ってたよ。」
一言楓達に聞こえるように言い、闘技場の真ん中へと向かっていく。
「みなさん! ここに、この街の平和を脅かした反逆者がいます! 許せますか? 許せませんよね。だから今からここで処刑を行いたいと思います。」
これを見せつけるために呼んだのか? とてもじゃないが正気ではない、処刑を止めようとするが演説はまだ終わらなかった。
「他にも反逆者は居ました、あの三人組です! 我々は正義を執行すべく民の目前で、不安要素を取り除きたいと思います!」
よほどの人望があるのか、高らかに宣言したエリスは拍手喝采へと包まれた。
「お前っ!」
声にならない殺意が沸き上がる。
「お前が…お前が殺してきたんだろうが!」
「でも住民はそうは思っていないようだよ。得体の知れない旅人と警備隊隊長。どちらの方が信じてもらえると思う?」
「お前をここで倒せばいい事だろ?」
楓がそう言うと、エリスは笑いを堪えるように言い放った。
「そうしたら君達は完全な悪者だな。それもそれで面白い…。まぁネタ話はこれまでとして…やるぞ、イルミ。」
「仰せのままに。」
エリスに呼ばれると、イルミはすぐに現れる。
「お前らを倒して、邪魔する者も倒す。この世界に嫌われようが関係ない。」
「ふふ…その意気だよ。さぁ! 始めようか虐殺ショーを! 君達の絶望する顔を見せてくれ!」
見返して分かったこと、
確かにこれは早いわ笑