第6部~決闘が、始まりました。~
投稿が早くてすまない…………どうも、栗餡でしっ。
今回は、ちょっとした都合で台湾へ向かうので、時間ピッタリに投稿できません。多分、18時といったら飛行機の中ですね。
というわけで、ご理解の程よろしくお願いします。
それでは、僕の作品に最後までお付き合いください !
「《アルカディア》?」
ケダマと遊んでいた零が、顔を上げ、リリスの言葉を繰り返す。
「ん。なんかね、街の広場に毎週土曜日の正午に現れて、“ある物”を対戦者と賭けて決闘してるんだって。」
「ふーん。その、“ある物”って、何 ?」
零が聞くと、リリスの後ろからセレーネが現れて付け足す。
「“術の秘伝書”って言うらしいわ。カムルがそれ聞いてすっ飛んでいったけど、5分くらいで帰ってきたわ。全身ボロボロだった。それに対して、相手は全然無傷。女の人だったわよ。白と紫のハーフアーマーで、黒い髪を白のハチマキで縛ってた。」
「フム…………敵さんの属性は ?」
「片手剣使ってたから…………“力” ?」
そうすると、ダメージ半減の状態でカムルの体力を削っていった事になる。そうすると、よほど腕の立つプレイヤーのようだ。
「てか、カムル本人は ?」
「ふて寝しちゃった。」
「ふ、ふて寝…………」
苦笑いを浮かべる零の横に、セレーネがソファーに座ってケダマの頭を撫でてやる。ケダマは、嬉しそうに体をよじり、セレーネの手に体を擦り付ける。最近、ケダマは《黒羽の騎士団》の仲間全員に懐くようになった。最初は零しか心を許していなかったようで、昨日カムルにようやく心を許したようである。
「私達も挑んだけど、歯が立たなかったなぁ。」
「けど、セレーネは良いとこまでHPゲージ持っていったじゃん。私は手も足も出なかったけど。」
「みんなの他に挑んだ人数は ?」
「多分…………60人以上かなぁ。」
「それで、全員キレイに返り討ち。と…………」
「うん。」
なるほど、大体だが情報が集まった。
多分、彼らはその秘伝書を継承させるべき人物を探しているのだろう。[へーエルピス]では、一人のプレイヤーにつき1回限り、他のプレイヤーに秘伝書として、自身の技や魔法を伝授できる。
それ程の技、それに“術”という事は、考えられるのは、投影魔術か、錬金術。その二つは、普通にゲームをプレイしていても出会うことは不可能に等しい。手に入れるには、厳しい条件を幾つもクリアしなければならないからだ。
「で ?僕はどうすればいいの ?」
「「勝ってきて !!」」
「ですよね。」
しかし、一つの疑問が浮かび上がる。伝授された技や魔法は伝授されたプレイヤーしか使う事は不可能となってしまう。《アルカディア》は、なぜ伝授を行おうとしているのだろうか。
「まぁ、いっか。やれるだけやってみるよ。」
「OK !」
「ありがと、零。」
リリス達が夕食の準備の為に台所に向かったのを送り出すと、ケダマに、砂糖の入っていないケダマ専用特別クッキーを渡す。
「ほら、ご飯だよ。」
「キュ~。」
クッキーを受け取ったケダマは、両手いっぱいにクッキーを持ち、カリカリと食べ始めた。その様子もとても可愛らしい。
「さて、稽古でもするかなぁ。ケダマ、ここでいい子にしててね。」
「ムキュ。」
クッキーをモックモックと食べながら頷くケダマを背に、零はメニューを開いて外に出ていった。
日本時間、11月5日、土曜日の午前11:58。いつも《アルカディア》が決闘を開いている、闘技場跡にやって来た《黒羽の騎士団》一行。
闘技場跡に来てみると、既に沢山のプレイヤーがザワついている。
「ケダマ、リリスと一緒にいてね。」
「キュ。キュキュ~。」
「ありがと、頑張ってくるね。」
12:00の鐘の音が辺り一帯に鳴り響くと、闘技場の一つの入口から、7人の人影が現れる。一人はオレンジのローブやスラックスと、オレンジ一色に装備をまとめている少女。装備している杖からして、ヒーラーと思われる。二人目は青色の全身鎧の青年で、大型の大剣を背中に背負っている。三人目は黄緑色のコートで口元を隠し、頭にはコートと同じ布を巻いており、性別は判別不可能。装備しているのは、黒い鞘に収まった短剣。
その後、赤色の武士の鎧を纏い、日本刀を2本腰に指している少女に、緑のベストを着て、スナイパーライフルを持った少年など虹の色に関係した装備をしている《アルカディア》のメンバーが静かに出てくる。
そして、最後に出てきたのは、白と紫の軽鎧を纏い、白銀に輝く片手剣を装備した少女が出てくる。その目は少女とは言えないほど凛としており、挑戦者全ての体を視線が射抜く。
「さぁーて !!私達中最強の実力を持つ、ユラに挑む人は誰ですかー !?」
オレンジのローブの少女が大声で挑戦者達に呼びかける。その声に、我こそと大勢のプレイヤーが決闘のステージに進み出るが、全員白と紫の軽鎧の少女、ユラのHPゲージを半分も削りきれずに敗退していく。
「おいおい、アイツ最強かよ…………」「勝てっこないよ…………帰ろ…………」
(うっさいなぁ……)
少しイライラしながら零はユラの戦い方を見ていた。彼女は、主に素早さを売りとしたヒットアンドアウェイ戦法を得意としているようだ。しかし、攻撃力も中々高い。これは、期待しても良さそうだ。
「ま、参った !!」
「おい、99勝じゃねえかよ…………」「ヤベぇよ、次お前行けよ…………」「ムリだよ、勝てっこねぇ…………」
「次、挑みたい人はいませんかーー !!!」
「よし、行こうかな。」
「頑張ってね。」「キュ~ !」
零が進み出ると、オレンジのローブの少女がタタタと駆け寄ってくる。
「お兄さん、挑戦する ?」
「うん。お願いします。」
「じゃあ、名前とギルド入ってたらギルド名ここに書いてもらえるかな ?」
そう言って、少女はメニュー画面を開き、ペンを零に手渡す。メニュー画面には、それぞれ記入する欄があり、零はそれにさっさとサインする。
「はい。書けました。」
「ありがとうございます !えっと……《黒羽の騎士団》の、零さんだね !」
「間違いないです。」
「よーし !行ってみよー !我ら《アルカディア》から、ユラ !そして、《黒羽の騎士団》の、零 !お互い、武器を持って !!」
ユラが白銀の鞘から引き抜いたのは、刃が淡い水色に輝く片手剣。刃の幅はあまり広くなく、軽量化されているのだろう。メニューに表示された武器名は、{レイモンド}
対する零は、両手に片手剣を2本展開させる。展開された片手剣は、全体が闇のような黒で、刃の所に赤い筋が走っており、まるで刃から流れ落ちる血のようだ。武器名は{ダーインスレイヴ}
ルールは、どちらかのHPゲージが全損するか、どちらかが負けを認めるまで続く。決闘の途中の武器変更は2回まで。3回目の時点で即座にそのプレイヤーは敗北とする。即死魔法、即死攻撃の使用は禁止。ただし捕縛系魔法は使用可能。種族が妖精のプレイヤーのみ、空を飛ぶのは禁止。ジャンプはあり。
「あなたと剣を交えること、ここに感謝します。お互い、手加減なしでやりましょう。」
「フッ…………初めてだ、決闘前にそんな事を言われたのは…………あぁ、正々堂々やらせてもらおう。よろしく頼む。」
「お互い、構え !」
オレンジローブの少女の声で、ユラは左足を引き、 剣を体と垂直になるように構える。そして、零も構えをとるが、その時、ギャラリーから驚きの声が上がる。
「お、おい…………アイツの構え、なんだ ?」「独特だ…………」「てか、あんな持ち方で大丈夫なんか ?」
零の構えは、1本を順手に持ち、もう一本をダガーのように持って、柄をくっつける持ち方で、右足を引いて、思い切り重心を低くしている構えだったのだ。その構えでは、初手は突っ込んでくる事は初心者でも分かる。
「それでいいのか ?それだとお前の剣が泣こう。」
「これが、僕流のやり方なんでね。なんと言われようと、変える気はありません。」
「フッ…………その覚悟、ことごとく崩してやろう。」
「そっくりそのままお返しします。」
「初め !」
はじまりの合図と共に最初に動いたのは、ユラだった。地を蹴り、一息のあいだに攻撃必中距離まで詰め寄る。
「でやぁ !」
「剣筋が甘い !」
しかし、振り下ろされた剣を零は順手持ちの方の剣で弾く。そして、逆手持ちの剣でユラの首筋を狙う。
「フッ !」
「クッ…………ハァァッ !」
体制を整えた零に、ユラの剣技、〔燕返し〕が襲い掛かる。
「当たった」
と、誰もが思った。
しかし、零の目の前で〔燕返し〕のエフェクトが弾けたのだ。これには、ギャラリーのプレイヤー達だけでなく、ユラ自身も驚いた。
「何 !?」
(防御したのか……いや違う !奴は防御体制にすら入っていなかった !防御魔法も使っていない !ならばなんだ !?…………まさか………… !!!!!!)
「お前……“全て剣で受けたのか”………… ?」
驚きの表情を隠しきれないまま、2本のダーインスレイヴを順手で持ち変える零に問うた。まさか、ありえない。なぜなら、〔燕返し〕はほぼ同時に三箇所から刃が襲い掛かる技だからだ。それを同時に受け切るのは、実質不可能。普通なら、防御体制を整えるか、範囲外に避けるしかないはず。
零は、薄く笑って、答えた。
「お見事、正解です。〔燕返し〕は、攻撃モーション、当たり判定の範囲、威力、すべてを把握済みです。さぁ、他にどんな剣技を見せてくれますか ?〔レインストライク〕 ?〔スワッシュ・バックル〕 ?」
「……………… !!!!!!」
驚きで、ユラは目を見開いた。コイツ、私の技すべてを知っているのか。実質、〔レインストライク〕は次撃とうとしていた10連撃剣技だ。それを先読みするとは、やはり、只者ではない。
「じゃあ、ホントの〔燕返し〕、お見せします。今のうちから防御体制を整えた方がいいですよ ?」
「何を言ってい………… !!!!!!」
言葉を最後まで言い終わらないうちに、体中を衝撃と痛みが駆け巡る。自分は受けたのだ、“ホントの〔燕返し〕”とやらを。
「さて、まだやる ?」
氷のように冷たく、剣のように鋭い声が、辺りに広がった。




